【山小屋便り7月号】「美しく、上品な桃を作るために ――桃の収穫に向けて、袋掛け、支柱立て――」 あんな

 岡山の白桃は、色白で上品な外観をしています。白さに価値が置かれます。これは他県の産地にない特徴です。白く美しい桃に仕上げるのは難しいところがありますが、私はこの産地で、その美しく上品な桃を作れることを誇りに思っています。

 白く美しい桃を作るのに欠かせないのが、袋かけの作業です。

 5月22日から、桃の袋かけをはじめました。

 今年はこれまでより2週間ほど早く作業をはじめることにしました。3年生の木は今年から実をつけるため、袋かけする樹が増えたことと、カメムシが多く目についたからです。カメムシは3種類くらいはいて、5月頃になると桃の実を吸いに来るのですが、カメムシに吸われた実は、その箇所が凹んでしまって歪な桃になってしまうので、気をつけなければなりません。

 桃はちょうど硬核期に入りはじめる頃で、硬核期は桃が繊細になるため摘果などはできませんが、その間に集中して袋かけを進めました。(注:硬核期は、桃の種が硬くなり完成する時期のことを言います)。

 桃専用のかけ袋は、黄色、オレンジ色、遮光二重袋など数種類用意しました。桃の採れ時期や、大きさに合わせて、その品種に相応しい袋をかけます。

 袋かけは、常時6人ほどで行いました。

 はじめに作業メンバーに袋のかけ方や、どれくらいの密度で着果させるかなどを伝えさせてもらいました。着果数が多いと小玉で糖度が乗りませんが、大玉だと実割れしやすいため、適度な数をつけさせることが大事です。ただ、同じようにつけても、その年の天候によって、大玉傾向になったり、小玉傾向になったりというのがあるので、人の力でできることは精一杯するけど、半分はもっと大きな力に任せるというか、自然と共同で作っているという感じです。虫や病気のリスクを考え、摘果のときに実の数を少し余分めに残していたので、ある程度、良い実を選ぶことができました。

 袋は紙でできていて、口の1か所に5センチメートルほどの針金が入っています。桃の実を袋に入れて、針金で留めるのですが、このとき袋の口をきっちり閉じることが重要なポイントです。口の閉じが甘いと、雨水が浸入して病気になったり、虫が入ったりしてしまいます。

 また、針金の止め方が甘いと、雨風のあとに袋が木の下に落ちてしまったりしがちで、そのようなことがないように、手元が目で見える位置で作業することをメンバーに伝えました。   

袋掛けを終えた古畑の『紅清水』

 奥畑の、早生のはなよめ、日川白鳳などから取り掛かりました。1本かけ終えると、オレンジ色の袋がかかった桃の木は、とても鮮やかになり、畑全体が華やかに見えました。

「袋をかけると、綺麗だな」

 その日、お父さんが声をかけてくれました。

「クリスマスツリーみたい」

 ななほちゃんやりなちゃんが言っていました。

 いよいよ夏らしくなった、という感じがしました。

■支柱立て

  この時期の大切な作業の1つに、支柱立てがあります。

 成木になると、実をつける量も増え、枝に重みが加わります。時に、その重みに耐えきれずに枝が折れてしまうことがあります。実際、これまでにも、支柱を立てる時期が少し遅くなってしまったときや、大丈夫かなと思って立てなかった枝で、何度かそのようなことがありました。

 実は今年も、既に5月の終わり頃のことですが、雨のあとに桃畑に行くと、樹齢20年以上の加納岩白桃の枝が一部折れていました。桃も痛かろうと思いますが、私も心が痛みます。完全に折れたわけではなく、半分繋がっていたので、枝を起こして、支柱で支えました。実は30個ほどついていたでしょうか。桃はとても丈夫で、皮1枚でも繋がっていれば、実を養ってしまいます。案外、このような枝に養分がよく行って、甘い実が採れたりもするようです。

 また、折れないまでも、枝の先端が下がっていると、桃は弱ってしまう性質があり、桃を守るためにも、枝を持ち上げてやる必要があります。

 真ん中に4メートルの支柱を立てて、その中心から紐で枝吊りをしている木もあるのですが、石生の加納岩白桃や、浅間白桃など、枝吊を施していない木は、下から支柱で支えました。

 パイプや竹の先端に、U字のキャップをつけて、枝を少し持ち上げながら支柱を立てます。私が支柱を立てていき、あけみちゃんとりなちゃんが、キャップと支柱と枝をPPロープで括って固定してくれました。こうすることで、風で煽られても外れにくくて安心です。

■桃畑を巡って

 古畑、石生桃畑、夕の子桃畑、山の桃畑、開墾畑……桃畑を巡り、袋をかけていきました。

 品種や畑によっては、都合で実を多めに残している樹もあり、適切な数の袋をかけるのがなかなか難しく感じました。そこで、去年のかけた枚数を参考にして、はじめに、「この樹にはこれくらいかける」というふうに決めてから取り掛かることにすると、やりやすかったです。

 6月に入り、だいぶ慣れてきたのでもっと速くできるはずだと思って、何度か、もう少しペースを上げたいとメンバーに伝えましたが、なかなかペースが上がりませんでした。

(このペースだと、袋かけにかかる時間が多くなりすぎて、他の作業に手が回らない)

 私は時に、きつい空気を出してしまうこともありました。

 そんなこともあって、お父さんに見に来てもらいました。 

「目線より手を上に上げて作業すると疲労がたまるし、よく見えなくて、上手くできない。脚立の段を上って、やりやすい位置でかける」

 など、幾つかアドバイスをもらって、みんなもやりやすくなったと思うし、ペースも少し上がりました。しかし、少しすると、曖昧になりがちでした。

「作業前とか休憩のときに注意点を唱和したら」

 お父さんが提案してくれました。

「1つ、目線より低い位置で作業すること」

「1つ、背の高い人が高い枝をかけること」

「1つ、枝の高いところから先にかけていくこと」

「1つ、袋の口をきっちり閉じること」

「1つ、スピード感を持って作業すること」

 唱和することで、常に意識しながら作業できるようになったと思います。もともと桃畑での作業は緊張感がありましたが、一層、空気が引き締まったように感じました。

 また、例えば、「午前中で白鳳5本を終える目標でいきます」など、作業時間ごとに目標を細かく明確にしてみんなに伝えてから始めると、1回ごとに達成感があり、やりやすいと感じました。

 数を把握するために、1本ごとに、樹にかけた袋の数を出しています。

 6月9日には、清水白桃、白麗以外の品種の幼木と成木合わせて、69本の木の袋かけを終えることができました。

 かけた袋の数は1万7600枚で、これから清水白桃、白麗にかけたら、合計2万弱になると思います。

 清水白桃、白麗は、特に繊細で、生理落果が出やすい品種のため、生理落果が落ち着く満開75日(6月20日)以降に、袋かけをするつもりです。

 同時に、まだ実が残っている木の最終摘果をして、着果管理は終わります。

 そして、収穫まで、実の肥大と成熟が進みます。

 6月25日頃から、1番早い品種の、はなよめが採れだしそうです。

 緊張度はいよいよピークになりますが、雨除けのブルーシート敷きや、収穫の準備など、タイミングを逃さず、良い収穫に結び付けられるよう、全力を尽くします。

 

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『はなよめ』の収穫が始まりました!

 6月25日、奥桃畑の『はなよめ』の収穫をしました。

 これから収穫が本格化する前に、害虫や害獣対策のネットの取り付け、桃の選果ハウスの掃除やレイアウトなども進めています。