【山小屋便り7月号】「家族総出! 手植えの日! ―― 豊作を願って、みんなで手植えをしました ――」 りな

 石生のあぜ道を通ると、辺り一面田んぼの水が鏡になって、眩しいほどに太陽の光がキラキラ反射して輝いている季節になると、私達は家族全員で手植えをします。

  田植えの日は、少し涼しげな朝で、田んぼに足を入れるには少し寒いのではないか、と心配もしたけれど、お日様は私達の気持ちを察してくれたのか、手植え準備からどんどん日差しを強くして、皮膚がジリジリ音を立てて焼けそうなぐらい暑くなりました。空は晴れ渡って、最高の手植え日和になりました。

2020年、なのはなファミリーでは、新しい田んぼも加わり合計14枚の田んぼで稲作をします。今回は、そのうち2枚の田んぼで手植えを行い、12枚の田んぼを、お父さん、永禮さんが田植機で田植えをしてくれました

 播種からずっと田んぼチームの人や、みんなで見守った稲の苗は、朝までグラウンドにいました。でも、手植えの準備の時にはトレーがグラウンドからはがされ、田んぼに運ばれました。

 みんなでじょうろで毎日水をやった苗は、日に日にとても大きくなって、トレーをはがすとトレーの穴から根が伸びて、グラウンドの土ごとはがれるぐらいびっしり根が張っていました。草丈8センチほど、こんな小さな苗だけれど、こんなにも根が張っていたんだ! もう田んぼにデビューして、1人立ちするんだな、そう思うと、グラウンドから卒業する寂しさよりも感動の方が大きかったです。

 みんなで列になり、田んぼに足を運びました。

 1枚目は、池下田んぼ。この田んぼで、泥んこ相撲をしました。
 手植えだから、今回は泥まみれになれないのか、と思うと少し物足りなさもあったけれど、道中の光田んぼを通りすがるときに、係の人が稲の苗を最後の水やりをしていて、手植えは手植えで泥んこ相撲と違ったワクワクがあるなあと思いました。

 お父さんとお母さんは朝早くから来てくださっていて、お父さんが手植えの方法を教えてくれました。

「今回は5本で植えます!」というお父さんの声かけがありました。5本だったら、とても稲の分結が多そうだなあと思ってドキドキしました。

 苗を植える時、3本指で苗をもって、指の第2関節が泥に浸かるぐらいぐっと刺すのだと教えてもらいました。そして、最後に浮かないようにひゅっと空いた穴に指でつまむように泥をかぶせます。難しいけれど、出来るとプロの手植え職人になったみたいでとても楽しかったです。

 みんなで畦に一列になって、一斉に田んぼの中に入りました。水が引いてきたころだったけれど、田んぼに足を入れるとひやっとして、足が厚い泥の中に引き込まれました。普段の地面とは違うどこまで足が入るか分からない感覚も、とても楽しいなと思いました。

 永禮さんもいつものダンプで来てくださって、畦に立って植える列を揃える水糸を持ってくださいました。

 私達はこの水糸の真下に苗を植えます。水糸にはビーズが25センチ間隔に付けられていて、このビーズをめがけて植えます。

 お母さんが少し上のところで見てくれていて、合図やタイムキーパーをしてくれました。お母さんの、「よーい、スタート!」という声が響きます。

 お母さんの声と共に、ぐっと集中して自分の担当する条を植えます。一列の所要時間は、8〜10秒、その間は水の跳ねる音以外、シーンとしています。すぐにお母さんの、「5、4、3、2、1」という声がどんどん大きくなって聞こえてきます。

 余裕を持って終われたら、近くで植えられていない所はないか、余裕がなかったら、カウントダウンまでに終わらせたい!その一心で、ひたすら頑張りました。

「終わりです!」お母さんの声が響いたとともに、ほっと一息をつきます。水糸と一緒にみんなで一歩前進します。その間に、苗の補充状況を確認します。

 自分の手元にある苗があるかどうか、左右2、3人の苗が足りているかどうか、足りていなかったらおすそ分けをします。

お父さんも畦から稲の苗を投げ入れました

 苗の補充部隊の人が、あらかじめ進行方向に苗のかけらを投げてくれていました。苗が宙を回って、水しぶきを上げて落ちます。

 稲は大丈夫かなと思うと、決まって苗は上を向いて何事もなかったかのようにしていました。 それが何度もあって、絶対に苗が上を向いて落ちるのが不思議で面白いなあと思いました。水面に大きな丸い波紋がたくさんできて、綺麗でした。

 植えた苗がピンと立っているのを見ると、ほっとして嬉しくなりました。

 池下田んぼの手植えを終わらせて、次は光田んぼに向かいました。

 池下田んぼはうるち米、光田んぼはもち米でした。あまり苗の見た目の違いは分からなかったけれど、もち米のほうが緑が濃いような気がしました。

 もっともっと綺麗に植えたい! という気持ちが私も含め、みんなに共通していました。池下田んぼでは、水糸のビーズが列ごとにずれてしまい、縦のラインがそろわなかったのを、改善するために水糸と90度になるところで基準となる線を作り、縦のラインも揃うようにしました。

 それでも、やっぱり水糸の少しの誤差で大きくずれてしまうので、ビーズに頼らずに感覚を信じて植えてみました。

 真っ直ぐに歩くことを意識しました。前回植えたところとぴったりたてを揃えて植えようとするのではなく、1回1回中心としている条から25センチ感覚になるようにと、心の目で見て植えようとしました。

 隣の人とテレパシーを送るように、テンポを同じにしたり、苗の補充を近くの人と一緒に気にかけたりできることがとても嬉しかったです。

 集中して、汗をどっぷりかきながら、気が付けばお母さんの声が近くなっていて、顔を上げるとすぐそばにお父さん、お母さん、あゆちゃんの姿が見えました。

 後ろを振り返ると、私が植えた条、そして等間隔に並んだみんなの植えた苗が見えて、進んだ証として全員の足跡が模様のようについていました。

 苗が残り少なくなって、みんなの持った苗も残り数本。もう手植えが終わってしまうのか、と思うと寂しくてもっとしたいと思いました。

 最後にみんなで並んで、「手植え完了!」と叫んで、ばんざいをしました。横から見ると、本当に真っ直ぐな列が見えて、全員でこの一列を作ったんだなあ、と思うと目の奥が熱くなるぐらい感動しました。みんなが1つになったような気がしました。

 光田んぼの苗は2束や3束で植えたところもあるけれど、ちゃんと根付いて分結して大きくなっています。広い田んぼの中でみる1本の苗は、ヒョロヒョロでとても小さかったけれど、茂って広がって大きくなる稲の力強さにとても勇気をもらいます。自分たちの手で植えた稲だからよりそう思うのかもしれないなと思いました。