【山小屋便り6月号】「一発、入魂! ―― 接戦! なのはな吹き矢大会 ――」 さや

 なのはなオリンピック? 

『なのはな吹き矢連盟公式吹き矢大会』!

 吹き矢。お父さんもみんなも大好きな遊び。お父さんは、「スポーツ吹き矢」というちゃんとした「競技」もあるんだと教えてくれた。

 でも「スポーツ」としての吹き矢ってどんなかんじなんだろう……。

 キャンプ2日目。わたしたちは古吉野の体育館に入っていった。壁には「なのはな吹き矢連盟公式吹き矢大会」の文字。体育館の中心には、銀色の細長い筒がなんだか神聖な様子で設置され、その筒の先には、外側から黒、青、赤、黄で円が描かれた手作りの的が並んでいる。

 それぞれチームカラーのレイを首からさげてきちんと整列していると、なんだかわくわくしてきた。

 赤、ピンク、黄色、オレンジ、青……、おそろいの色を身につけていると、このチーム戦の同じ仲間なんだという気がしてくる。なんだか甲子園球児にでもなったような雰囲気だ。

 実行委員のまゆこちゃんが、アナウンサーになりきってこうアナウンスをかけた。

「さて、こちらは体育館の輝く茶色の床のうえに整列しております選手団。参加六グループ、総勢66人! 身につけておりますのは各チームのシンボルカラー。色とりどりのレイが鮮やかなコントラストを見せて体育館を彩っております!」

 やっぱりわたしたちは選手だったのだ。

 整列したわたしたちの前に、5人の実行委員さんが新体操リボンをもって並び出て、そのリボンをくるくると円を描くように回している。

「ご覧下さい! 五輪のマークが描かれています! この日のために練習をしました。綺麗に描かれております」

 そうか、五輪のマーク。本当だ、新体操リボンで描かれた5つの円が例の形に重なってオリンピックマークになっている。気付いた選手たちの間に笑いが賑やかに起こった。

 続いて、代表者あけみちゃんが、ぴっと手をのばして、選手宣誓をした。あけみちゃんのぱりっとした声を聞くと、ちょっと興奮するように、ぴりっと気持ちいい緊張を感じた。

■中心をめがけて

「それでは、2020年吹き矢オリンピック! いよいよ開幕です!」

 アナウンサーまゆこちゃんの声で、なのはなオリンピック、スポーツ吹き矢部門が開始されたのだった。

 試合は3つの形式で行われた。

 まずは個人戦。各チームから1人ずつ順番に進み出て、6チームのメンバーが一斉に吹き矢の的を狙う。

 黒にあたれば10点、青に当たれば30点、赤に当たれば50点、黄色ならば100点が各チームに加算される。

 的までの距離は7メートル、チャンスは1人につき3発。筒を口にくわえて、き、と的を見据えると、普段は意識しないことを感じざるを得なかった。

 右目と左目と、それぞれで見ると照準が変わってしまう! 何センチも離れていない右目と左目がこんなに遠く感じるなんて……。

 1番外側の黒(十点)に当てるのもじつはちょっと難しい。筒から息がもれてしまうと勢いが死んでしまい、矢が的までたどり着けずに墜落する。

 照準がずれたり、支える腕が揺れたりすれば、矢は的を大きく外れて、壁を保護するために的の周囲に張られた段ボールに、勢いも虚しく突き刺さった。

 歓声が高くなるのは、なんと言っても中心の黄色に矢が突き刺さったときだ。

 その円、なんと半径3センチ。見事命中すると、本人からも同じチームメンバーからも飛び上がる勢いで喜びの声があがった。

 すごい人では、中心に命中した1本目矢の中に、さらに次の2本目が刺さって200点を獲得した人もいた。

1対1の名人戦へ

 次に名人戦。各チームから2人、とくに吹き矢が上手だった人を選出して競う。

 今度は狙う的が赤い風船に変わり、的までの距離も、個人戦のときから3メートルのびて10メートルになった。

 10メートルはじつはかなり遠い。個人戦では素晴らしい命中率を誇っていた選手も、的が遠くなった途端、対象物となる風船は大きくとも照準を合わせることが難しくなり、なかなか的に当たらなくなった。

 2つのチームが合図で同時に吹き、どちらがはやく風船を割ることができるか競う。どちらかの風船が割れるまで何度も吹き続ける。

 お父さんが名人戦に出場したとき、最初お父さんは、「勝とうとしても勝てないかもしれない……」と言って笑っていた。

 名人戦ともなるとみんな筒を構えた姿勢がかっこいい。お父さんが片足を前に出し、猟銃で獲物を狙うように筒をくわえた。その姿と並んで、隣に対戦相手のれいこちゃんが両足を肩幅大に開いて大砲のように構える。

 1発目は、両者ともに外す。風船の惜しいところをかすめる鋭い矢先に、張り詰めた空気からなんとも言えない吐息がもれた。

 そして、2発目。お父さんの矢が見事命中して赤い風船を割った。れいこちゃんも笑顔だけれど、悔しそうに唸っていた。

■仲間の一矢を活かして

 最後は、野球ボールなどで行うのがおなじみの『ストラックアウト』。

 1から25の数字が特大のビンゴカードに記され、的として掲げられている。チームメンバーが1人ずつ交代で吹いて、ビンゴを狙った。

 1人1発しか吹くことができないため、まさに一球入魂だと思うと、筒に息を吹き込むのは本当に緊張の一瞬だった。

最後の試合はチーム対抗の『ストラックアウト』。見事ビンゴすれば500点、中心の『13』に当たると100点が獲得できます

 うまくビンゴにすることができたら、500点、中心の13にあたると100点が加算される。5人が13に当てることができれば、ビンゴをとったのと同じ得点になるため、チームによって作戦に特徴がでた。

 ちょっとずれればその大きな的全体にさえかすらなくなってしまう端の難しいところを、ものともせずに強気にビンゴを狙いにいくチームあり、全員が13を狙って確実に点を取っていくチームもあった。

 全員で真ん中を狙っていても、やはり真ん中からずれて他の数字に突き刺さってしまうこともあるため、仲間の一矢を活かすためにも途中で路線変更してビンゴを狙いに行くチームあり。

 得点自体はビンゴを狙いにいかなくても稼ぐことができるが、それでもせっかくならばビンゴ! を狙いたくなる。

 他のチームのことでも、リーチがかかるとみんなが息をのみ、難しいぎりぎりの端を貫いてビンゴが出ると、感嘆やら歓声やらで体育館が大きく反響した。

 試合がすべて終わって、興奮冷めやらぬまま、みんなが頬を上気させての閉幕となった。

 体育館の真ん中に設置された吹き矢の筒がなんだか名残惜しい。みんなまだ遊び足りなくて、その様子を見て、会場はそのまま残され、キャンプ中しばらく遊べることになった。

 閉会式が終わっても、何人かが、銀色の筒を囲んで交代で吹き矢の練習をして遊んでいる。

 吹き矢は確かにスポーツだと実感した、なのはな吹き矢連盟公式大会だった。