第253回「限界までやってみる」

【質問】
 自分が無理をしているのか、それが甘えなのかわからないっていうことがあって、たとえば、身体が凄くだるい時とか、疲れている時とかに、それをどこからが無理をしていることになるのか、それが甘えなのか、自分で判断ができなかったりして、そういうとき僕は、最近は、そんな時ほど、空元気を出すというか、逆に頑張ろうっていうふうにはしているんですけど。それはどう判断したらいいですか。

 
 

【お父さんの答え】
お父さん:
 いつだって、やるべきことは限界までやるべきなんでしょうね。
 僕は限界までずっとやってきた。今は、昔からすると限界までしなくなったけど。
 物書きの仕事をやっていたとき、7日間のなかで、30分ずつ4回、合計2時間しか寝なかったことがある、2日目からは椅子に座ってワープロを叩いていると寝ちゃうので、机の前に立ったままの姿勢で、中腰で書き続けた。
 これは結婚して子供ができてからのことだった。それで締め切りは全部クリアしたんだけどね。
 それで肝臓を悪くして身体全身に肝浮腫というぶつぶつができて、病院に行ったらこれは急性肝炎だっていわれて、「今日から入院してください。これだけ重症の人を帰したら、僕は医者をやめなくてはならない」と言われた。
 だけど、そのとき単行本の締切を1本抱えていた。だから、入院できない、原稿を書くために帰るといったら、医者が言った。
「生命と仕事と、どっちが大事なんだ」
 僕は答えた。
「申し訳ないけど、僕はサラリーマンではなくて、まだ物書きになりたてなので、あいつは締め切りの前に一冊、本が書けなくて病気に逃亡した、ってなったら一生、仕事がなくなるかもしれない。それで仕事がなくなるのは、生命が無いのも同じだから、帰って原稿を書く」
 医者は、じゃあ1週間で書き上げて必ず来週入院しろと言い、それで帰って仕事したんだけど、でも疲労感が大きすぎて、身体を起こしていられない。それで布団に仰向けで寝て、横目でワープロ画面見ながらお腹の上のキーボードを叩いて原稿を書いた。
 それで編集者が、もう締切なのにそんな状態で書けるわけがない、と怒ってきた。
 僕は締切に間に合うように書く、といったけど、編集者は、「そんなのね、どんなに原稿が早い人でも1日に400字詰めの原稿用紙で30枚がやっとなんだ。それが限度でペンを持つ指が耐えられないんだよ」という。こんな状態じゃ、本になるような原稿をかけるわけがない、というので、
「僕は1日50枚以上は書ける。ワープロだからペンで書くよりもずっと速い」
 と言った。すると編集者が、「じゃあ、毎日、原稿を取りにくるよ」と言って、本当に翌日から原稿を引き取りにきた。
 2日ほど、本当に取りに来たのかな。僕は1日に50枚以上を書き上げることが本当にできていた。そしたら2日目に100枚目以上を受け取った編集者が、「疑って悪かった。本当にこんなに書けるとは信じられなかったから。あとは出来上がったと連絡をもらったら取りにくるよ」って言ってくれた。
 僕はずっと、死ぬ気で原稿を書いてきた。だから慢性肝炎にもなった。それは褒められた話ではないけど、若い時は限界まで頑張る、という方針でいいんじゃないかな。無駄に疲れる必要はないけどね。
 今でもそうだけど、この間スタッフミーティングで僕が朝からトラクターかけるって言ったら、それまで午前2時半とか、午前4時すぎくらいまで続けて寝られない仕事があって、瞼が二重どころか三重になっていたら、お母さんに「何であまり寝てないって言わないの?」って怒られた。
 
 

お母さん:
 お父さんを止めるのが大変。お母さんが休まないと休まないし。

 

お父さん:
 僕は肝臓を悪くしたけど、限界までやるのが、それが習い性になっているから、そういう心意気がこの地元の年配の方達にも伝わるのか、みんなが応援してくれる。伝わるっていうか、年配の人たちは皆、限界まで頑張る人生を歩いてきている。そういう人たちには共通して通じるような心のありようがあって、なぜか伝わるんだよ。そしていざという時に、必ず応援してもらえる。だから、何も考えず、いつも限界までやってみたらどうかな。

 

(シルフィードハウスミーティングより)

 
 

(2020年5月8日掲載)