特集-ウィンターコンサート2019

脚本で辿る ウィンターコンサート2019【5】

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5割ダウン。
下手手前にだけ照明をつけ、その中でジャンと明石が芝居。
その間にギタリストがはけて、ギターのケーブルも下げる。

モナリザのところまで、下手手前だけで芝居。

ジャン
先生、どうでしょう。
ダ・ヴィンチの機械をどう使うのか、わかりましたか?

明石
ああ、2つはおよそわかるが、難しいのはダ・ヴィンチのヘリコプターだ。
あのヘリコプターと、温暖化と、何の関係があるのか……。
あのヘリコプターで、不道徳な考えを吹き飛ばすというわけでもあるまいし。
もう少し、時間をくれ。
ところで、ダ・ヴィンチのいうクライシスは、
やっぱり、地球の温暖化で間違いないんだな。

ジャン
はい、間違いないです。
すでに全世界で、二酸化炭素濃度が400ppmを超えました。

明石
それはどう考えたらいいのかな。

ジャン
人間が石炭・石油を使う前の二酸化炭素は、280ppmでした。
それが最近は特に急増して400ppmになっているんです。
たぶん420ppmまでが許される限界で、
それ以上になると、人間は地球に住めなくなります。

明石
それじゃもう、余裕がないじゃないか。

ジャン
ちょっと、いいですか。
ダ・ヴィンチは、こういうメモを預言として残しているんです。
「まず恐ろしい風が襲ってきた。
続いて大いなる山脈の雪が流れとなって崩れ落ち、すべての谷を埋め、
街のほとんどを破壊した。それでもまだ足りないかのように、
街の低い部分は突然の大洪水に飲み込まれた。それに加えて突然の雨、
というより、天地をひっくり返したような大嵐となった。

吹き荒れる雨、砂、泥、石に、木々の根、茎、枝が混じる。
あらゆるものが空を飛んできて、我々の頭上に落ちてくる。とどめは大火事だ。
風が引き起こしたのではなく、三万匹の悪魔が運んできたのだ。
国土は完全に燃え尽き、破壊された。」

明石
この大火事のもととなった「3万匹の悪魔」というのは、何の事だ?

ジャン
おそらく、「メタンガス」のことでしょう。
メタンガスは二酸化炭素の20倍も温暖化効果が大きいです。
そしてメタンガスそのものがよく燃えます。
各地で噴出するメタンガスが高い気温で自然発火して、
北半球の針葉樹林一帯が、燃え尽きてしまうということでは……。

明石
ジャン、それはもう、始まっているんじゃないか?!
アラスカでは、今年、山火事で昨年の2倍の面積が燃え、
いまも燃え続けている。
シベリアでもこれまで永久凍土だった泥炭地(でいたんち)の氷が解け、
これまでなら有り得ない山火事がブスブスといつまでも消えることなく続き、 
あの氷で閉ざされていたはずのグリーンランドでさえ、山火事が起きた……。

ジャン
そしてオーストラリアでも、歴史上、最悪の山火事が同時多発で起きています。

明石
今からで、間に合うのかな。

ジャン
ダ・ヴィンチは、この世界に救いの妖精たちが降りて救済が可能なのは、
私の死後500年後まで、と書き残しています。

明石
ということは、今年が最終の期限じゃないか。
救いの妖精たちとは、何を意味しているのかな。

ジャン
わかりません。

明石
ほかにダ・ヴィンチは何か、絵で描き残してくれているんじゃないか。
ダ・ヴィンチの描いた「モナリザ」を見てみよう。

上手奥のモナリザ前に2人は移動する。上手手前で芝居。

(舞台上手に、「モナリザ」なおと)

明石
ジャン、よく見てみろよ。
ダ・ヴィンチは、モナリザの背景で、私たちに教えようとしていたんだ。

ジャン
殺伐とした岩山で、木が1本も見当たりませんね。
しかし、明石先生、川は流れていますよ。右側にも、左側にも。

明石
ああ、確かに川のような流れがある。
でも、それは本当に川なのかな。

ジャン
んー、もしこの川に釣り糸を垂れたとして、
マスとか、イワナとかが釣れそうには見えませんが……。

明石
モナリザ! きみの後ろを流れているものは何か、
答えてくれ!

「モナリザ」 これは、川ではありません。
洪水です。
周囲の木々も畑も家も、
何もかも流しさって、
虚しく流れる、茶色に濁った洪水の流れ……。

明石
やっぱり、そうだ。

ジャン
絵が、しゃべった!!(小さく)

(舞台下手「サルバトール・ムンディ」の絵に照明 モナリザの照明は消す)

明石
サルバトール・ムンディの絵を見てみよう。

ジャン
これは美術史上、最高額の508億円で取引された絵ですね。
そういえば、サルバトール・ムンディというタイトルも変わっていますよね
イエス・キリストを描いたのは疑いのないことで、
キリスト像とすればいいものを、サルバトール・ムンディ。
「世界を救う者」とか、「救世主」と訳されています。

明石
そうなんだよ。この世界を救うヒントを描いているから、
ダ・ヴィンチは敢えてイエス像とせず、「救世主」というタイトルにした。
右手を挙げて、親指、人差し指、中指の3本の指を上げている。
一般的に、この指は庶民に祝福を与えるポーズと言われているが、
実際には違うんだ。

ジャン
え、違うんですか?

明石
サルバトール・ムンディ、その3本指が何の意味か答えてみろ!

「サルバトール・ムンディ」 はい、私が人類を救うために、
3つの機械を考えたという意味です。
そのうちの1つが、この左手に持った水晶です。

ジャン
また、絵がしゃべった(小さく)
なるほど。ルーブル美術館から消えたのが、水晶だった!

明石
ダ・ヴィンチはこれだけ多くのヒントを残してくれている。
だんだん、見当がついてきた。

照明5割ダウンしてから、役者がはけて、コーラスは出る。
コーラスが出てから照明。照明で演奏スタート。

演奏 チープ・スリルズ
――シーア
【編成】ボーカル、サブボーカル2名、多人数コーラス、エレキギター、アコースティックギター、キーボード、ベース、ボンゴ、ドラムス
ダンス7名

最後のダンサーが3番を過ぎたら照明5割下げる。
照明が下がったら、小道具の台を出す。役者スタンバイ。
台を出した人が捌けるころ上手のキョウコにピンスポット。

「センチュリー・アート」店先
上手から、キョウコが来る。
お付きの人に凹面鏡を持たせている。

キョウコ
すみません、明石先生。
今日は、私がサザビーズのオークションで落札したものを
鑑定してほしくて持ってきました。
(レオナルドの凹面鏡をお付きの人が台にのせる)
あ、そこでいいわ。あなたはもういいわ。ありがと。
(お付きの人は、礼をして帰る)

明石
ほう、これは珍しい。
一応、伺いますが、どういう来歴のものですか。

キョウコ
アメリカのコレクターが出品したもの、としかわからないの。
何に使うものかもわからなくて、知ってたら教えてください。

明石
ジャン、来たようだぞ。

ジャン
はい。(複雑な心境)

明石
どれ、鑑定してみよう。
(鑑定団のBGM)

明石
うん。間違いない。
レオナルドが作った凹面鏡だ。
レオナルドは生涯の間に、
200点もの凹面鏡のスケッチと図面を残している。
これはその中の1つだ。

ジャン
でも、不思議な縁ですね。
イギリスで消えたレオナルド凹面鏡が、
キョウコさんの手でここにやってくるとは。

(上手から、妖精の衣裳のアカリが、
荒々しくやってくる。)

アカリ
もう、やめて、やめて、ヤーメーテー!!

ねえ、もうやめようよ!! こんな茶番劇!!
どうせ、ムリなのよ、最初から!
明石先生も、ジャンも、もう知ってるんでしょ!

お察しの通り、私たちはダ・ヴィンチの精霊、
正しくは、人間の姿を借りた精霊よ!!

この世界を救う?
救えるわけないじゃない、こんな、こんなモラルの堕ちた世界を。

だいたいね、地球が二酸化炭素の温暖化効果で、
異常気象になってるって、みーんな知ってることなの。
ううん、それだけじゃない。
今年は、大型の台風15号、19号が続けてやってきて、
日本はとても大きな被害を受けてしまった。
その二つも歴史に残るような大きさだったけど、
その後、北太平洋に行って被害はなかったけど
そのあとの台風23号は、史上最強だと言われた。

これからも、きっと異常気象が続く。そんなこと、誰でも予想できるのに、
「二酸化炭素を減らそう」と誰が言ってる? 
そんな話しは、聞いた事がない。見たこともない。
ただの「オハナシ」でしか、ないのよ。

そうそう、私、いいところに連れて行ってあげる。

さあ、みんな手をつないで!!

ブルー暗転。同時に効果音。暗転したら役者ははけ、
ダンサーはスタンバイ。
曲と同時に一気に照明を上げる。

演奏 グロウン・ウーマン
――ビヨンセ
【編成】ボーカル、サブボーカル2名、多人数コーラス、エレキギター2名、キーボード、トランペット、トロンボーン、アルトサックス、テナーサックス、ボンゴ、ドラムス
ダンス7名

ブルー暗転。効果音。役者スタンバイ。
手をつないだら、徐々に照明を上げる。
キョウコは恐竜の衣裳を着て上手控え。

照明が徐々に明るくなる。

アカリ
もう目を開けてもいいわ。

(恐竜の効果音。ギターの効果音)

ジャン
ここは……?

明石
どこだ?

ジャン
あ、恐竜だ!! 隠れろ!!

(ギターの効果音、やや控えめにする)

アカリ
これは6500万年前の恐竜全盛の時代よ。
(1人、怖がらずに前に出て、台詞)
ほら、あれは体長30メートルの首長竜、
そして角が3本あるのがトリケラトプス、
あそこでステゴザウルスを食べているのがティラノサウルス……。
たいへん! ティラノサウルスの子供が走ってくる!!
(と、明石とジャンをかばおうとして、近寄る)

キョウコ
ヤッホー!! ヒャーッホホーイ!!
(キョウコが恐竜に乗って上手から登場し、
下手へ、また、上手へと走り回る)

ジャン
キョウコさんが恐竜に乗ってる……!!

(キョウコ、恐竜にまたがったまま、上手にはける、
 ここまで恐竜の効果音)

アカリ
こんなにたくさんの恐竜たちが、地球上、いたるところに繁殖していた。
でも、地球に隕石が落ちたことが原因で、
恐竜達の、全てが絶滅した。

(ドドーンッ という効果音)

明石、ジャン 地震だ!! (揺れて、倒れそうになっている アカリも揺れている)

アカリ
隕石が地球に衝突したのよ。

(照明が落ちていき、薄暗くなる。
ザーッ という雨の効果音)

明石
雨だ……。(上を見上げる)

ジャン
寒くなってきた。

ザー……。
3人は黙ったまま、上を見上げて、雨に打たれている。
(ステージ中央に立つアカリ)

アカリ
雨。あめ。あめ……。
この雨は、もう何年もやむことがないんだわ……。

恐竜たちは、なす術(すべ)もなく、食べ物を失い、
寒さにこごえ、みんな死んでいったのよ。

何億年も繁栄していたって、滅びるまで、ほんの数年。

人間も、この恐竜たちと、同じなんだわ。
温暖化するとわかっているのに、誰も、何もしない。
やがて息もできないほど、猛暑で苦しんで、
大嵐にすべてを流されて、
食べるものがなくなって初めて、
これじゃいけないって気付く。
でも、その時には、もう手遅れなんだわ。

(効果音 雨の音が、ひと際、大きくなる)
ザ―ッ!!!! という音のなかで、
アカリがステージの内側に向かって叫ぶ。

アカリ
人間なんて! 人間なんて!!! 人間なんてーーー!!!!!

しばらく雨の音が続く。雨の音を小さくするに従って、
照明も下げていき。
雨の音が消えたら、ブルー暗転。

暗転したら、一輪車を渡す。
アカリがスタンバイをしたら、ややゆっくり明るくして、
キーボードから演奏開始。

演奏 スカイスクレイパー
――デミ・ロヴァート
【編成】ボーカル、サブボーカル2名、エレキギター2名、キーボード、ベース、ドラムス
ダンス1名(一輪車のパフォーマンス)

ブルー暗転。と同時に、上手手前だけ照明。
暗転でアカリははけ、手前照明に入ってすぐ台詞
ジャンと明石が台詞を言っている間にジャーニーの準備。

ジャン
なんだか、力が抜けてしまいましたね。

明石
ああ、アカリの言う通りかもしれない。
いくらダ・ヴィンチが残した機械といっても、
もう500年前も昔のことだ。

ジャン
先生、元気を出してください。
では、問題です。(ジャ、ジャンという効果音)
桃と、りんごと、みかんを満載したトラックが急カーブにさしかかりました。
このトラックが落としたものはなーんだ?

明石
桃かな……。いや、スピードを落とした。

ジャン
正解!

明石
では、問題です。
甘い物が苦手なお父さんが喜ぶパイはなんでしょう?

ジャン
まさか、おっぱい?! ……おっぱいは赤ちゃんが飲むものだし……
わかった、乾杯!!でしょう。

明石
正解! ……はァ、虚しいなあ……。

ジャン
先生、そろそろ、あの3つの機械の謎を教えてくださいよ。

明石
よし、わかった。

(パート6へ続く)

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