特集-ウィンターコンサート2019

脚本で辿る ウィンターコンサート2019【2】

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照明5割ダウン。
舞台下手で、あかりが分厚い本を読む準備。
アカリの部分だけ照明。
この間、舞台上手でレオナルド少年期の準備。
アカリは虫眼鏡で読んでいて、
上手のほうに虫眼鏡を持っていくと上手の照明がつく。
下手の照明消して、上手の芝居が始まる。

レオナルドの家 
レオナルド、机に座って左手で書き物をしている

女中
あら、お坊ちゃま、珍しいこと。勉強なさっているんですか?
(レオナルドに近寄る)
違いますよ、おぼっちゃま、それは鏡文字です。反対ですよ。
ハンタイ。
それはね、こう書くんです。(ペンを取り上げて、書いてみせる)

レオナルド
(また、書き始める。)

女中
だから、それは違いますって! 
おぼっちゃま、何度いったらわかるんです?

継母
騒がしいわね、どうかしたの?

女中
これは、奥様。レオナルドぼっちゃまなんですけど、
いくら言っても、鏡文字ばかり書いてしまうんですよ。

継母
そうね、この子は、いくつになっても言葉が出てこないし……。
困った子……。

女中
でも、レオナルドぼっちゃまは、絵はうまいし、
子羊や子牛と話しはできるし、虫をバラバラにするのも得意ですよ。

父親が上手から出てくる。

父親
おう、ここにいたか。

継母
パパ、レオナルド、鏡文字ばかりで、ちゃんとした字は書けないそうよ。
だから、私の言った通りじゃない。
言いたくありませんけどね、私が結婚する前に、
あなたが遊び半分かどうかしらないけど、

父親
いや、本気で愛していた(ハッとして言いよどむ)

継母
遊び半分だと思うけど、16歳の農夫の小娘にこの子を生ませて、
そりゃお父さんに預けたり、
お兄さんに預けて育ててもらってるうちはよかったけど、
いくら私に子供ができないからって、引き取ることないじゃないの。

(レオナルド、キーボードの前に座って、譜面をじーっと見ている。)

継母
ご覧なさいよ。
パパは、あの子を学校にやって、
先祖代々の公証人という、弁護士と会計士と司法書士を一緒にしたような 
りーっぱな仕事を継がせようとして引き取ったのはいいけど、
さっぱり勉強のできない鏡文字の子じゃないですか。
そもそも、公証人が鏡文字を書いて書類を出したら、
なんじゃこりゃって、そうなるに決まってる。

父親
わかった、わかった、お前のいうことはわかってるさ。
だから、学校にも出すつもりはないし、
そろばん塾に行かせてるだけじゃないか。教育をするつもりはないさ。

演奏 子供の領分
――作曲 C.A.ドビュッシー

(レオナルド、いきなりハープシコードを弾き始める。
劇中曲 ドビュッシー 子供の領分 を弾いてから上手にはける。)

(父親、ふと、レオナルドの描いたものに目をつけて)

父親
みろよ、この絵を……。あの子、こんなに絵がうまいとは。
天才かもしれないぞ。
そうだ、取引先にヴェロッキオ工房がある。
あそこなら弟子もたくさんいるし、建築や彫刻、
絵画の仕事もたくさんありそうだ。あそこに弟子入りさせたらいいかな。

継母
ええ、どうぞどうぞ、ご自由に。
あの子、言葉が出ないのに、
急にハープシコードが弾けるようになったり、絵が上手だったり……
そうだ、発達障害なんじゃないかしら。ADHD。
自閉症スペクトラム、それも当てはまるわ。
アスペルガーよ、きっと、そうよ!

上手からレオナルドがすっと出てくる。
ブイブイブイと言いながら、0番で台詞

レオナルド
いかにも僕は、発達障害で自閉症スペクトラムでアスペルガーだ。
ただ、人間としての自尊心は、りっぱに持っているつもりだよ。

継母
あら、レオナルド、あなた話しができなかったんじゃなかったの?
言葉のでない子、なんじゃないの?

レオナルド
ああ、ついさっきまでは、言葉を話せなかった。
心の中でしか、言えなかっただけ。
でも、たった今から、僕はしゃべれるようになったのさ。
あんたも覚えておいたほうがいいよ、
アスペルガー、というのは、そういうものさ。
(ここで、ニコッと笑ってから、次の台詞をゆっくり発声)
いや、アスペルガーだからこそ、見える世界もあるんだ!

レオナルドは0番からブイブイと言いながら継母方向にはける。
継母は驚いてレオナルドを見送る。

照明5割下げで役者と小道具がはける。
同時にアンサンブル奏者が入り、スタンバイしたら照明つける

演奏 くるみ割り人形 小序曲
――作曲 P.I.チャイコフスキー

【編成】ソプラノサックス1名、アルトサックス1名、トランペット1名、トロンボーン2名、木琴1名

照明5割ダウン。演奏者ははける。
アカリはイスに座ってスタンバイ。
照明を戻して芝居が始まる。

明石
アカリ、熱心に調べてくれているね。
何かわかったか。

アカリ
まだ、なんにも。でも、ダ・ヴィンチって面白い人だわ。
今の時代に生まれていたら、きっと引きこもりになっていたわね。

明石
アカリも、何かつらいことがあって、お母さんと衝突してしまったのかい。

アカリ
お母さんと衝突、って……。

私はなぜか、生まれたときから、何かこの世界で果たす役割があるって、
そういう気持ちがずっとあるような気がしていたんだ。
そんなこともあったせいか、
私は、母のいうことを守って、懸命に母を喜ばせようと頑張り、
父の事も大好きだった。
学校の成績は、いいほうだったと思います。
ピアノ、水泳、書道、英語……、たくさんの習い事に通い、
全部、まじめにやって、それは忙しい毎日だった。

明石先生、そういう生活をしていて、私の中で積み上がったものは何だと思いますか?

明石
そうだな……。
普通に答えるなら「数々の好成績の実績、そして自信」ということだろうが、

たぶん、まわりの妬みからくる攻撃、無視、シカト、イジメ……、
その一方で、やたらすり寄ってくるおべんちゃらの太鼓持ち、
モンスター・ペアレンツを恐れるあまり、
正義のない教室で、繰り返される精神的なゲリラ戦、
それに巻き込まれまいとして、疲れ果てていった……。

いったい私は、何のために、どこを目指して生きているのか?……。

アカリ
明石先生、わかるんですか? 私の気持ちが。

明石
いや、私はただ……。

アカリ
ただ、……なんですか?

明石
いまを生きる子供達が感じている気持ちを、代弁しただけだ。

アカリ
私だけじゃないんですよね。
何か、私にはもっとやるべきことがある、そう感じてしょうがなかった。
……でも、どうして私だけが、我慢できなくなってしまったんだろう。

明石
私だって、とても心配しているよ。
想像以上のスピードで、人としてのモラルが、社会から失われている。
そのことを敏感に感じていたなら、
いてもたってもいられない気持ちになったとしても、不思議はないよ。

照明5割ダウンを合図に役者はける。
役者がはけたら、すぐにキーボードを始める。
キーボード先行で曲が始まり、徐々に照明を上げていく。

演奏 ウィ・ドント・トーク・エニーモア
――チャーリー・プース、セレーナ・ゴメス
【編成】ボーカル、サブボーカル2名、エレキギター、アコースティックギター、
キーボード、ウインドシンセサイザー、ベース、ドラムス
ダンス16名

曲の終わりと同時に、5割照明ダウン。テーブルも暗くなったら上手に出す。
すぐにBGMが入る。通行人の役者もすぐに出る。
街中を歩いている。クラクション、雑踏のBGM
ジャンが上手から歩き始めたら、徐々に照明をもどす。
キョウコが下手から。

キョウコ
あら、あの、ほら、ちょっと……。

ジャンが気付く。立ち止まる

ジャン
ああ、この前の、ええと、キョウコさん。
私は、ジャン・ケイタです。

キョウコ
ああ、ジャンさん。すみません、急に呼び止めたりして。
あの、もしお急ぎじゃなかったら、この美術館で絵を見て行きませんか……。

ジャン
ああ、いいですね。ぜひ、ご一緒しましょう。

下手側から、美術館に入る。
上手から、絵が歩いてきて、中央で立ち止まる。

ジャン
これは、マネの「笛を吹く少年」ですね。
実に、発色が素晴らしい。

キョウコ
私もこの絵、大好きなんです。次の絵は何かしら。

ジャン
フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」ですね。
別名「青いターバンの少女」とも呼ばれます。
僕は、この絵が一番、好きなんです。

キョウコ
私もこの絵が好きです。
あ、これはミレーの「落ち穂拾い」ですね。

ジャン
これは、ドガの「舞台の踊り子」ですね。

ジャン
いやあ、素晴らしい絵ばかりですね。
いい絵を見ると、なぜか疲れるんですよね。ちょっと休憩しましょうか。

テーブルに座り、コーヒーの注文する。
ウェイトレスが運ぶというのは流れで。

BGM アンジェリーナ(アコースティックギターアンサンブル)
――トミー・エマニュエル
【編成】アコースティックギター6名

テーブルに座り、注文を取る。
ウェイトレスが運ぶというのは流れで。

ジャン
確か、あのセンチュリー・アートのお得意様でいらっしゃいましたよね。
特に集めていらっしゃる美術品のジャンルは、どんなものですか?

キョウコ
そうね、ピカソとルノワールとシャガールとフェルメール……。

ジャン
え? フェルメールの絵は、世界に37点しかないはずで……。

キョウコ
嘘、ちょっと試しただけよ。私は好きなものなんか、何もないわ。
この世の中に大きな怒りを感じていて、
きちんと生きるっていうことを、あきらめかけている。

ジャン
それはあなたらしくないのでは、ないですか。
あなたは、とても強くて、輝きながら生きていくように見えます。

キョウコ
え、そんな……。
(ジャンと、しばらく目を合わせ。恥ずかしくなり、2人とも目をそむける)
ジャンさん、あなたはなぜ美術館のキュレーターになったんですか?

ジャン
私の父は日本人で、料理の修業にフランスに渡り、
現地で結婚して私が生まれたわけですが、
私は厳密には日本人でもなく、フランス人でもない、
で、気が付けば、私はいつも故郷を探しをやっていた。
私が生きるべき場所は、本当はどこなんだろうって……。

キョウコ
あ、わかる、その気持ち。私も、どうしてか、同じように感じてる。

ジャン
そうですか。(といって、また、2人、目を合わせる)
(ハッと、気をとりなおしてジャンは続ける)
日本の美術品の中に、私は故郷を感じて、その流れでキュレーターに……。
あ、キョウコさん、それは(と、手首のマークに気が付く)

キョウコ
あら、やだ。(と隠す) 生まれたときからのアザで……。

ジャン
すみません、ちょっと見せていただけませんか?

キョウコ
え? どうして……。

ジャン
いや、気になることがあるんです。(と強引に手をみる)
……やっぱり、そうだ。

キョウコ
何か、わかるんですか?

ジャン
これは、レオナルド・ダ・ヴィンチが残した印、そっくり、だと思います。

キョウコ
レオナルド・ダ・ヴィンチ?! その印?

ジャン
ええ。明石先生に、鑑定してもらいませんか。

キョウコ
はい、そうします。

2人は席を立つ。

ブルー暗転
弟子たちが溶接する道具を出してスタンバイ。役者もスタンバイ。
照明がついてから、芝居が始まる。

ヴェロッキオ工房

レオナルド
ヴェロッキオ親方、大聖堂の頂上に、
親方の金色のブロンズが載るんですね。
あんな高いところに上げるなんてすごいですね

ヴェロッキオ親方
このフィレンツェという街は、いまや世界最先端の文化を誇る街だ。
このフィレンツェで、サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂は、 
世界最大のそして世界初の大型ドーム建築だ。
高さ60メートル以上もある、その頂きに
我々の制作する金色に光るボールが載る。
それももうすぐ完成だ。

(弟子たちが、下手からボールと凹面鏡を押してでてくる)
(ボールは大きい方がいいが、何で作るかは不明)
(縦に長い◆型に切ったボール紙を1つも用意しておく)

親方
太陽の光を集める凹面鏡は、今日はレオナルド、お前が操作しろ。

レオナルド
太陽の光で、溶接ができる、その操作をさせてもらえて光栄です。

(弟子たちとレオナルドは、サングラスをかける)

親方
そうとも、そうとも。これが世界最先端の技術だよ。
レオナルド、お前の手元が狂ったら、
指も腕も、身体も溶けちまうから、気をつけてくれ。

レオナルド
はい、充分、気をつけます。

親方
いくぞ。光を当てろ!!

(ジー、ジジジジ……、という効果音を入れる)

レオナルド
溶けてる、溶けてる……。太陽の光で、金属が溶けてる!

弟子たち
いいぞ、いいぞ。うまくいった!

(懐中電灯型のレーザー光を、接合部に当てて溶接を演出)
暗転
舞台上手にだけ、光を残す。
光の中で、レオナルドが独り言をつぶやく。

レオナルド
凹面鏡で太陽の光を集めたら、すごいパワーが出せるんだな。
ん、これで、何か、つくれそうだな。
そうだ、戦争でこれを使ったら敵を倒す武器になるし……、
そればかりじゃない、水に光を集めたら、
簡単に沸騰させ、蒸気を大量に作ることができる!
それだ、それだ、きっと何かに役立つに違いない!

それにしても……。太陽の熱って、
地球にとって、どれくらい大きな意味を持っているんだろうか。

照明5割ダウン 照明が落ちるのを合図に役者がはけ、
エターナルストーリー演奏者が出る。マイクの準備。
ピンスポットをあやこに当てる。そこであやこが演奏スタート。
それから徐々に演奏の照明を上げる。
原則、前の2人で1つのスポット。キーボードで1つのスポット。

演奏 エターナル・ストーリー
――ティーネ
【編成】トランペット1名、テナーサックス、キーボード1名

(ミラーボールを動かさずに光)
7割ダウン。それを合図にマイク、演奏者がはける。
役者、イスも同時にスタンバイ。照明が戻ってから演技スタート。

センチュリー・アートの室内
明石 ジャン キョウコ の3人.
明石がキョウコの腕を見ている。手を離す。

明石
実に不思議だ……。 
これは、レオナルド・ダ・ヴィンチが残した印、間違いない。

キョウコ
どんな意味があるんですか?

明石
この印の意味には、諸説ある。
宗教的な意味合いもあるのだが、私は以前から考えていることがある。

この☆印は2つの形から成り立っている。
つまり、上向きの三角と、下向きの三角を組み合わせたものだ。
上向きの三角は男性を表す、下向きの三角は女性を表す。
つまり、この世界は男性と女性の人間が、作っていく、という預言だ。

ジャン
先生、こういうことですか。
ダ・ヴィンチ・クライシスのあと、この地球を再生するのは神ではなく、
人の手で作っていく、ということでしょうか。

明石
私はそう思う。
ただ、謎は、なぜキョウコさんの腕にその預言があるのか?

キョウコ
(何かを思い出したように)あっっっっ!!(と立ち上がる)

立ち上がる明石とジャン、キョウコを見つめ、フリーズ
(ただいまー、の声と共に、
上手からアカリが入ってくる)

アカリ
ただいま。……みなさん、どうかしましたか?

フリーズが溶けて、2人が座る。ふー。
キョウコだけが、立ち上がったまま。

明石
いや、何でもない、なんでもない、よな、ジャン。

ジャン
ええ、何でもないですよ。
キョウコさんの腕のアザのことをちょっと、ね。

アカリ
腕のあざ?

(キョウコが、印を見せる)

アカリ
あら、それと同じものが、私にもあるわ。
(と、腕を見せる)

4人
「えーーーーーっっ!」

ブルー暗転。役者がはけて、ダンサーが出る。
照明をつけると同時に演奏スタート。

編成 センド・マイ・ラブ
――アデル
【編成】ボーカル、サブボーカル2名、多人数コーラス、
エレキギター2名、ドラムス、キーボード2名、ベース
ダンス4名

(パート3へ続く)

【脚本メニュー】
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