山小屋便り

【山小屋便り11月号】「未来に繋がる、桃づくり ―― 秋季の桃の手入れ ――」 あんな

桃の収穫を終え、9月上旬から下旬にかけて、秋季剪定をしました。

秋季剪定の目的は、樹勢を落ち着かせることや、日当たりの改善することなどです。また、木によって、あるいは枝によっては、冬剪定のときに切るより、夏に切るほうが、樹勢のバランスが乱れなかったり、骨格を作る上で都合がいいときがあります。

樹の様子を見たところ、すべての木に対して剪定する必要はないと感じ、今回は、樹勢が強い木の徒長枝を適度に間引いたり、冬に切ると樹勢が強くなりすぎてしまうと思う枝を切り縮めておいたり、主要な枝に影を作るような枝を、控えめに落しました。

樹齢の高い樹や、おかやま夢白桃などは、もともと樹勢が弱くなりやすいので、剪定はせずに、冬剪定のときに落としたい枝の元の部分に、紐を結び、目印をつけるだけにしました。

冬になって、葉が1枚もなくなった状態になると、1つひとつの枝の様子をそこまで細かく覚えていることができないため、この印がとても役に立つのです。

今、葉がついている時期だと、光を遮る枝や、病気の出ている枝、異常のある枝がよくわかります。また、収穫の記憶が新しいため、実の付きが悪かった枝や、作業の邪魔になる枝もわかります。

この半年で、開墾26アール、開墾十7アールの2〜3年生の幼木は、すくすくと成長して、見違えるようになりました。前年の九月には、台風で株が傾いでしまわないように、支柱で補強したりしたのですが、その支柱を大きく超えて、しっかり立っています。支柱を撤去して、冬剪定の目印をつけたり、場合によっては、樹形を作るために枝を落しました。

5年生や、8年生の桃の木は、収穫を終えて少し疲れているように見えましたが、葉には色つやがあり、枝も充実していて、元気そうでした。

剪定をして、翌年に実をつける枝や芽に光が当たるようになったり、風通しがよくなると、安心しました。もう、既に、桃は翌年の実をつけるために動いていて、その環境を整えてやることが大事です。

今の、枝が柔らかい時期に、誘引をしておきたいところも幾つかありましたが、それは、肥料入れと管理機かけが終わってからにしたいと思っています。

秋季剪定、冬剪定、収穫、摘果などの着果管理、肥料やり、すべてが影響しあって、桃の出来に繋がっているので、樹の状態をよく見ながら、1番よい手入れをしていきたいです。

■生命力

桃の苗を作るため、芽接ぎをしました。

現在、開墾17アールや、夕の子桃畑、奥畑などに、合計13か所の植え場所の空きがあり、来春、苗を植え付けたいと考えています。そのための苗作りです。

今年の3月に、払子という病気に強く根張りが優れている台木品種の種を蒔いて、古畑の端で、実生苗を育てていました。

それら払子の実生苗は、暑い夏の間、水をしっかりやらなかったせいか、全体的に少し細めでしたが、生命力を強く感じます。

接ぐ品種は、全体の品種構成や、採れ時期などを考慮して、お父さんと相談して、なつごころ、おかやま夢白桃にしました。

なつごころは、岡山で生まれた桃で、7月中下旬に収穫できる、糖度が高くてたいへん美味しい桃です。穂木は、夕の子桃畑の五年生から採りました。

おかやま夢白桃は、年によって採れ時期がずれることもありますが、お盆の時期に熟れる、大玉で糖度が高く、人気のある桃です。穂木は池上桃畑の5年生から採りました。

どちらの穂木も、今年の収穫のとき、良い実がついていた枝から選びました。

芽接ぎの仕方をごく簡単に書くと、小刀で台木に切れ込みを入れて、表皮をめくり、穂木から採った芽を挿し込むように入れて、表皮を被せるように戻し、テープで巻きます。表皮のすぐ下に、形成層という緑色の組織があり、台木と穂木の形成層同士をくっつけておくと、一体化するという仕組みです。人為的な手術と、植物の生命力と神秘を合わせたような感じがします。

少し細かく繊細な作業のため、また、芽接ぎができる時期も限られているため、緊張しました。

芽接ぎを行ったのは、9月24日〜29日の間です。その後、雨なども降り、どうかな? という気持ちもありましたが、最善は尽くしたので、あとは結果を待つだけだと思いました。

2週間後、芽と一緒に残している葉柄が綺麗に取れたら成功なのですが、ほとんどすべての芽接ぎが成功していることがわかりました。

既に畑に台木だけ植わっている2年生の台木2本にも、芽接ぎをしていたのですが、そちらもしっかり成功していました。

芽接ぎが成功した苗は、苗床で冬越しさせて、次の春に畑に植え付ける予定です。

春、接いだ芽がしっかり伸びていくことを期待しています。

■土作りから

10月に入り、桃(八86本)とスモモ(12本)に、向こう1年分の元肥をやりました。

収穫を終えてから、桃の木の勢いや、枝や葉の様子を見ながら、施肥設計をして、施肥の時期を決めました。

この1年の生育の様子や、収穫した実の品質などを踏まえて、何の肥料をどれくらいやるかを考えました。前年の肥料の内容と、ほとんどやるものは同じですが、各資材の比率を変えたり、新たな資材を取り入れたり、使うのをやめた資材もありました。

資材は10種類で、微生物が活躍できたり、甘い桃になるような土づくりを目指しています。

肥料やりの作業は、1本ずつ、フネの中で手作り配合肥料を作り、てみで樹の下に均一に撒いていきました。

2人で1本を終えていくというふうにして、4人で効率よくできたと思います。

配合肥料とは別に、牛肥は、多人数で桃畑を回り、バケツリレーをして撒きました。

久しぶりに、多人数で桃作業ができたのが嬉しかったです。

肥料を撒いたあと、管理機をかけて、土に肥料を馴染ませました。

肥料をやる前に、木の下の草を短く刈って、草を丹念に除けておいたので、肥料も土に接しやすかったし、管理機もかけやすくてよかったです。

10月上中旬は、天気が変わりやすかったり、音楽合宿や、イベント出演などスケジュールが少し混んできていましたが、みんなの協力を得て、無事に終えられました。

1年に1度のことで、桃にとって大事な作業のため、緊張度も高かったのですが、桃にとって良い時期に、よい作業ができたと思います。

どんな結果になるか、今後の桃を見ていくのが楽しみです。

管理機や耕耘機をかけたあとに、土が抉れてしまった部分や、手入れや収穫を経てくる中で地面が窪んでしまったところなどを補修するため、すべての桃の木に対して、土寄せをしました。

前年は、土寄せをそこまできちんとできていなかったのですが、桃はそれぞれの環境で、それなりに根を張り伸ばしていました。健気だと思いました。かなり固いと感じる土にも、鍬を入れると、根が張っていました。今年は、桃が少しでも根を張りやすいようにと思いながら、気を使って土寄せをしました。

■美しく、綺麗に

2〜3年生の幼木は、盛り土を少し拡大しました。

幼木は、2人で1本とか、3人で1本に取り付いて、土を寄せていきました。芸術的な要素を大いに感じました。形がしばらく残るため、また桃の生育にかかわるため、美しく綺麗な形になるように、肥料が偏らないようになど、いろいろ気を配りながら、整形していくのが面白かったです。一緒に作業した人の中にも、

「私、この作業が好き」

と話してくれる人が何人かいました。

成木で窪みが気になっていたとこも、埋めることができて、水が溜まらないようにできたのが嬉しかったです。桃は水はけがよいのが好きです。

夕の子桃畑の6本の桃の木に、深耕をしています。

なのはなファミリーのある地域は、粘土質の土壌が多いです。桃畑も、粘土質の場所が多いのですが、そのことは、甘い桃を作る上で有利なことです。しかし、あまりにも土質が粘土質で固いために、根が張ることができずに、生育が悪くなってしまっている場合があります。

夕の子桃畑の桃の木は、甘い桃が採れますが、木はあまり大きくならず、樹勢が弱めです。粘土質がきつく、常々、桃が何となく苦しそうで、可哀そうだなと感じていました。深耕をして土壌改良をすることで、根が張りやすくなり、生育がよくなり、良い桃に繋がると考えました。

前年までも、穴を掘って資材を埋める方法で深耕をしていましたが、今年は、樹の下の一部に、長さ3メートル、幅30センチメートル、深さ40〜50センチメートルほどの溝を掘り、そこに丸太や石や、数種類の資材を埋め込み、保水力のあるダムを作るイメージで、深耕をすることにしました。

溝を掘るときには、盛男おじいちゃんや永禮さんが手を貸してくださいました。

永禮さんがユンボで溝を掘ってくださいました

溝を掘ると、同じ畑でも、土質や、根の張りに違いがあり、興味深かったです。

特に生育の悪い木の下は、根の張りも悪く、地面より20センチメートル下にはなかなかユンボのシャベルが入っていかないほど土が固いところもありました。

生育が良い木の下は、幹から同じ距離のところでも、薄オレンジ色の太い根や細い根が多く張っていました。そのような元気な根を切ってしまうのは心が痛いところもありましたが、根を部分的に切ることで、かえって新しい根が多く張って活性するはずです。

溝を掘り終え、これから、資材を入れていく段階です。

桃がどんなふうに変わるか、今後の生育を見ていくのが楽しみです。