第26回『ヤマハッカ』

遠い、遠い、ギリシャ神話の世界、
美しい精霊のミントは、あまりにも美しすぎたために、
女王ペルセポネーの嫉妬を買い、
呪いで姿を雑草に変えられてしまった。
悲しみの中でミントは、
愛する冥王ハーデースに向けて、願い続けた。
――どうか気付いて、私はここにいるわ!
願いは強い芳香となって、神殿に漂いつづけた……。

それが薄荷(ミント)の祖先となり、
やがて600種もの子孫が、
現代まで悲しい祖先の物語を紡ぎ続ける。
しかし、ヤマハッカは、香りが強くなかった。
エキゾチックな花はミントの美しさを彷彿とさせるが、
鑑賞するには小さすぎる。
「ヤマにでも捨てておけ」
人にこそ見捨てられたヤマハッカだが、
どんな土地だろうと
健気に繁茂し、風と遊び、
今日はウラナミシジミ蝶を魅了してやまない。

 

(2019年10月28日)