そうだ、お父さんにきいてみよう!

第218回「できる気がしない、と感じてしまう」

【質問】
 なにか曖昧なもやもやとした感覚について。
 自分で練習していて、楽器演奏でも何でも、何かちゃんとできる気がしないような感覚がよくあります。なぜそのように感じるのですか。

 
 

【お父さんの答え】
お父さん:
 あのね、今日、夕方の演劇の打ち合わせで出た話ですが、ダ・ヴィンチは、自分ができないことでも、できるかと訊かれたら、「できます」「やらせてください」と言うそうです。この質問の人は反対で、できる気がしない。できることさえもできる気がしない、と感じてしまうようですね。
 そもそも、みんな生まれたときから日本語を喋れてないですよ。でも今は喋っている。
 楽器も、できる気がしない、これは当然ですよね、やったことないんですから。
 だけど、やってみればできるようになる。みんな、ステージの歩き方でも、最初は歩ける気がしないはずですよ、だけどステージ歩きが歩けてきている。
 できる気がしないと言ったら何もかも、今できていること以外はできる気がしないですよ、誰も。何しろ、いま、できてないんですから。
 それをやってみようかな、できるかなって思うのは、やればできるんじゃないかと思うからやるんですよね。

 で、いいですか、ここが大事ですけどね。自分で思うっていうことが大事なんです。
 なんでここが大事かというと、摂食障害から治るときも、摂食障害を何年もやってきた人、治ったことがないんですよ。
「私は治れる気がしません。お父さん、私、治れるんですか」
 と聞かれることがあります。治れますよ。治れるのか、治れないのか、ではないんです。私は治ります、って自分が思えばいいだけです。もちろん、治れる環境にいるとき、という条件はありますが。
 でも、「思う」のが大変なんですよね。思えないんです。思うということが大事、なんでもそうです。
 できないことを「できると思う」ということは、難しい。こんな理屈です。
「それはホラ吹きじゃないですか、できないことをできるというのは、おかしいんじゃないですか、できないことをできると思ったらそれは思い上がりじゃないですか」
 だから、私はできると思えません、ということになる。本当にそうですかね。
 あと、さっき、音楽合宿のミーティングで、まえちゃんが大事なことを言いましたね。練習を始める前に、目標を持ってやったというのがすごくよかったと思います、と言いました。目標を持つ、というのと、できると思う、ということは共通しますね。で、これが、何にでも通じると思います。

 特に若い人にとって、大事なことの1つが「勉強」です。
 いまなのはなファミリーには、高校生もいれば簿記の8期生もいますね。税理士を目指しているボーイングチームもある。
 ところが、勉強をやって、試験に合格できるようになる人と、合格できない人がいます。日商簿記の3級は、皆さん合格しました。2級になると、もしかしたら落ちる人がいるかも知れないんですね。いても1人か2人ですけど。
 落ちる人と受かる人の違い、何だと思いますか。
 何点取る、って目標のない人は勉強の成果は上がらないです。
 高校生も一緒です。何点取るかという目標を持つんですね。なんとなく勉強というのは、勉強のための勉強になっちゃうんです。次のテストで90点取るための勉強をするという目標を持ってる人は、大体88点か、89点か、まあ90点を取ります。
 ところが、テストのための勉強をするけど、とにかく点数がたくさん取れるように勉強しようと言ってる人は、40点か50点か60点です。なんとなくしか勉強してない、なんとなくしか覚えない。目標がとても曖昧なんです。
 90点取ろうと思った人は90点を取れる覚え方をします。100点を取ろうと思った人は100点取れる覚え方をする。また、そういうペース配分で勉強します。
 何となくできるだけたくさん点を得ようと思ってる人は、半分くらいしか覚えません。9割覚えようと思ったら9割覚えます。全部覚えようと思ったら全部覚えます。その心の定め方がすごく大事なんですね。
 決めてない人は、点数はあまり取れません。
 この、楽器練習でも、どれくらいできるっていう目標を決めて、それくらいできるようになると強い気持ちを持って臨むと成果が出やすいです。
 「うまくなったらいいな」と思ってなんとなく練習をやってもうまくならない。
 例えば、誰々ちゃんくらいに吹けるようになろう、あの人くらいまで行こう。具体的に目標を持つ。それがすごく大事なんですね。できる気がしない、って思って練習していたら、できるようになりません。
 練習すれば絶対できますから、目標が達成できるまで練習する、しかも何日の何時までにできるようになる、という締切を作ることです。

 できない状態からできるようになる状態というのは本当に不思議ですよね。
 僕は、ギターのスリーフィンガーを練習したとき、やってもやってもできるようにならないんですね。少しできるようになったかと思ったら、コードが変わるところで連続して弾けないんですね。なかなか弾けるようにならない。……そのうち何日かして飽きてきて、自分はできるようにならないかもしれないなと思うようになった。翌朝、なんとなくギターを持ったら、弾けてる。なんで弾けてるの? っていう感じですね。
 みんな、大体の人は自転車に乗れてると思うけど、じゃあ今から自転車またいで、乗れない自分をやってと言われたら難しいよ。できるようになったらできない自分をやるのは難しい。
 だけど、できないときはできる自分をイメージするのが難しい。できないという壁の向こう側に、自分が行けないような気がする。だけど行けるんですよね。行けると信じるしかないでしょう、という話ですよ。
 摂食障害から治るときも一緒。壁があるんです。治った人と治っていない人の間には。治るって決めないと治らないです。それは誰が決めるのか。自分です。点数を何点取るって決めるのも自分です。目標がある。――大学入試の偏差値ってそんな上がるものじゃないですよね。だけど僕は、入試直前の3か月で偏差値を25上げました。元が低すぎたというのもありますが、目標があるからできたことです。上がった偏差値は目標の大学の偏差値とぴったり同じで、そこまでしか上がらなかったですけど、でも受かりました。3か月でね。自分の人生で勉強したと自信をもって言えるのはその3か月間だけです。
 目標を持つ、心に決める。できるかできないか決めるのは自分で、やってみる。本当にできた、となったら、すごい成功体験です。成功体験を何度も重ねる。
 そうするうちに今度はかんたんに、ダ・ヴィンチ並みに、「できます」って言えるようになる。その繰り返しでいきましょうよ。
 
 
 

(2019年9月27日掲載)