第4回『ヒオウギ(檜扇)』

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平たく開いた6枚の花弁。
その中心に先が3つに割れた1本の雌しべと、まわりに3本の雄しべ。
決して派手なところはなく、むしろ地味な、素朴な佇まい。
しかし、完成された侘び寂びの美しさがそこに――。

平安時代に京の都で疫病が大流行したことから、
八坂神社に怨霊払いを祈願した祇園御霊会(ぎおんごりょうえ)は、
いまの祇園祭となって延々と受け継がれ、
その祭の花として欠かせないのがこのヒオウギ。
祭の間、家々の軒先に魔除けの花として飾られる。

真夏の暑さにも負けず、乾燥にも負けず、
夏の盛りに咲く事から、魔除けの効力があると信じられた。
そして茎や根は、咳を鎮めるほか、消炎効果の漢方薬としても知られる。
花のあとにつける光沢のある黒い実は「ぬばたま」と呼ばれ、
古くから髪や夜にかかる枕詞として使われてきた……。

さて、もう一度、花に目を向けると、
古来、気が遠くなるほどの時の流れを超えて、
祭りを支え、漢方医を支え、実となって歌人に親しまれ、
多くの人の鑑賞に堪えてきた侘び寂びの心を、
しばしの沈黙と共に受け止めようか、と思わせられるのだった。