第190回「堂々とした人に怯えてしまう その②」

第189回からの続きです。)

 
 

質問 ドライってどういう意味ですか?

 

お父さん:
 打算的な人、とか割り切りの早い人。あんまりどうでもいいことを悩まない人、どんな問題でもスパッと自分なりの答え出せる人。
 自分がドライだと思う人?
(5人が指を上げる)
 お母さん、僕を見てどう思いますか。僕はドライ? ウェット?

 

お母さん:
 ウェットだと思います。

 

お父さん:
 僕、自分で両方の側面があると思う。簡単にドライになれる部分と、かなりウェットな部分がある。

 

お母さん:
 演じわけてるんじゃないの。
 自分の気持ちじゃなくて、ここへ来たらなのはなのお父さんお母さん演じなくちゃいけないからその場面で使い分けてる。

 

お父さん: 
 人間ってものすごく変わりやすいな、と僕はわかっている。ものすごく変わりやすいし、偉い人っていうのもたまたまというか努力してキープしているだけであって、本当に人徳ある高い人っていうのは、ほんとにいないというと語弊あるけど、人として人徳ある人としてずっと存在し続けるのは、極めて難しい。
 そういう人があると思わない方が良い。
 人間は相対的に場面、場面で変わる。そこで変わらない立派な人というのは、事実上、あり得ない。究極の人格者とかは、いないと思ってる。
 かといってみんな悪い人かといえば、そうじゃない。
 ただ、人というのはものすごく変わりやすい、といったほうが正確でしょうね。
 いろんなことで、簡単に変わります。
 それはこれまでいろいろ経験したために、嫌というほど知ってる。
 私は変わりませんとか。変わらないと思います、と言ってる人を見ると、変だなと思っちゃう。良くも悪くも、ものすごく変わるのが人間だから。それも簡単に変わる。

 いま税理士として活躍しているなおだって、なのはなファミリーに入ったばかりの頃の日記には、「私は変わらない、きっと摂食障害は治らないし、治りたいと思わない」とまで書いていて、 実はそれを書いた直後に変わっているんです。人格がまるっきり変わった。それで健康になったばかりでなく、ごく短期間で税理士にまでなってしまった。

 自分の弱虫なところと、強気なところ、優しいところ、優しくないところ。いっぱい知って、そういうのいっぱいあっていいと思うことです。
 そしてほかの人に対しても、そういうのいっぱいあっていい、と認めあうことです。そして、いろいろあるけど、ダイナミックに楽しみながら生きたいな。そう願う、それがすごく大事なんじゃないか。
 僕は、ついこないだまで12歳でした。あっという間に64歳になっている。
 おそらく、えっと思ったら、もう僕はお墓に入ってますよ。
 今日、ちらっと思った。
 ほんとに、なんでこんなに畑に水をやる仕組みを考えて、ネット調べたり、ネット上の店を部品を探しながら放浪し、寝る時間もないほど考えなくちゃいけないんだ。何でこんなことやらなくちゃいけないんだ。と、怒りが込み上げてきて、一瞬、ムカっとなった。
 その直後に、「これって楽しいかも」と思った。
 何でこんなに、水道屋さんでもないのに、四苦八苦してホースのつなぎや、部品のつなぎを考えて、ポンプを使わなくてもいいように落差で水やりができるように考えて、延べ1000メートル以上ものホースを買っているんだ、と――。
 こういう人生って楽しいかも、と思った。
 そうでしょ。
 そういう水やりの仕組み知ってる人と知らない人。知ってるほうが楽しい。70枚以上の田畑に水をやる仕組みを考えて、実践した人生のほうが楽しい。
 嫌なこと経験したあとに、どうせもうすぐ死ぬんだな。どうせ死ぬなら、死ぬときに平坦じゃなくて、苦しくてもいろいろあった人生のほうがずっと楽しいなと思ったんです。
 苦しくても楽しくてもいろいろ経験しないと、すぐ死んじゃうな。

 

村田先生:
 もうすぐ僕の誕生日で、簿記部の子たちがお祝いしてくれたんですけど、47って書いてあって。これが一瞬、なんの数字か僕はわからなかった。
 ああ、僕の歳か。僕は27歳だと思ってたから。

 

お父さん:
 ですよね。気分は。

 

お母さん:
 先生、47歳になったの?

 

村田先生:
 なるんですね。
 新聞に載ってたんですけど50代っていうのが変わりつつある。あの福山雅治さんと、サザエさんの波平さんって一緒の年らしい。

 

お父さん:
 磯野家の波平さんが、福山雅治と同じ年ですか?

 

村田先生:
 はい。その当時の50歳というのは、ああいうイメージだったんですね。今は福山雅治さんが、50代のイメージ。

 

お父さん:
 年の取り方っていうのも、変わってくるのかな。
 いやーそれ。波平さんっていったら、頭が禿げた、おじいちゃんですよね。
 それが福山雅治と同級生とは――。この頃、見かけと年齢の差が大きくなってますよね。
 じゃあ50歳の人が、みんな福山雅治のような感じか、と言ったらそうではない。
 でも、びっくりだねそれ。
 サザエさんって昭和20年代ですかね。半世紀前の50歳はおじいさんですね。
 20代前半で結婚して、55歳で定年。隠居。
 今は初婚、子供産むのが30歳越えてる。ぐっとみんなが遅くなってて、その分、歳をとらなくなってきているということなんでしょうけど。

 あっという間ですね。時間過ぎるの。振り返るとほんとにあっという間。
 年をとる怖さってありますよ。
 で、怖さに立ち向かうには、どうしたらいいか。いつも言ってますが、改めて言います。
 子供の頃は野犬が恐かったんです。犬に咬まれる人が多いので、危険を避けるために、保健所の人が野良犬を捕獲して歩いた。
 その後モータリゼーションの波で自家用車が増え、犬は放し飼いをしなくなって、咬まれる人がいなくなった。
 僕の同世代でも、野良犬にかみつかれる子供がいました。
 犬は子供が逃げると追いかけてきて、咬みつきます。怖いです。
 その怖さに立ち向かうには、犬に向かって突進していくことなんです。
 犬はこちらから走って向かっていくと、急に回れ右して逃げていきます。
 だから、ありとあらゆる怖さに対しては、向かって行けということなんです。摂食障害から治る怖さはあると思いますが、これも同じです。
 向かって行くと、治る怖さが逃げていくんです。治るのが怖かったら、向かっていく。
 それと一緒と思うのが、いつの間にか年とって嫌だな。体力衰えて。嫌だなと思ったら今まで以上にもっとプラン立てて、あれもする、これもする。もっともっとやっていくんだ、とやりたいことをいっぱい実行していく。それが一番良いんだろうなと思います。盛男さんも、95歳ですが、一向に衰えない。
 盛男さんの言うことを聞いてると、必ず1日の間に来年のこと、再来年のことの話する。来年、この栗の木はこうしてやろうとか、再来年にはこんなふうにする、というプランをいつも言っている。この前、盛男さんがパスポートをとったんです。パスポートは5年と10年の2つの期限でタイプが分かれている。盛男さんは10年のパスポートを取りましたからね。105歳まで海外に行くつもりでいる。
 そういう、向かっていく姿勢が衰えさせないんだと思います。後ろ向きじゃない。
 みんなも若いんだけど、時間がいっぱいあると思っていたら、とんでもない。ぱっと気付いたら70歳になってます。
 だから、ほんとに、どうしよう、こうしようじゃなくて、やりたいことをやってしまう。それは目の前のことも、今日のことも、1週間のことも、1か月後のことも、やりたいことを楽しんでやっていく。苦しみも楽しみのうちと思って、積極的に向かって行く。それがよく歳を取るコツなんじゃないかな。
 質問からずいぶん離れちゃったけど、要はナイーブな心を持っていたら、怖く感じる人もいるけど、それは自分がナイーブだからと思う事、そしてナイーブな心をずっと持ち続けて、怖がらずに苦しい事も、楽しいことも、逃げないで楽しみながら人生をやっていきましょう、ということで、今日の質問はおしまい。

 
 

(2019年6月14日掲載)