特集-ウィンターコンサート2017

脚本で旅する なのはなファミリーウィンターコンサート Part4

幕が開く  後半開始

演奏  イエローストーン/トランスフォーマー
(ドラムアンサンブル)

   ―― キャシディ・バイヤー
     /ダニー・レイモンド 作曲

【編成】ドラム4名

演奏終了後、奏者ははける。
恵比寿、光太郎、えりこの3人が、上手から出る。
ステージ中央には、七福神がいる。

光太郎:
エビ天さんの案内で、
日本がニュージャポニカ州というアメリカの一部になったところを見てきました。

えりこ:
少子化って深刻なんですね。
子供が少なくなると、人口が減って、
やがて日本は滅びてしまう。

恵比寿:
そうなったら、我々も、解散だ。

エビ天:
スマップも、去年、解散した……。

えりこ:
エビ天さん!

光太郎:
恵比寿さん、この人生ゲーム、もう一度、よく教えてください。
そこが1回目の上がり、ですよね。

恵比寿:
そう、ここが1回目の上がり。

光太郎:
どうして、そこまでは順調に、日本は行けたんでしょう。

恵比寿:
そりゃ、簡単じゃ。七福神がついていたからじゃ。
私は海では大漁、畑では五穀豊穣、町では商売繁盛、が得意分野なんだ。

ほかに商売繁盛と、財産を作るのが得意な神様は?

ハイ、と大黒天、毘沙門天、弁財天が手を挙げる。

恵比寿:
それと、長寿、長生きが得意な神様

ハイ、と福禄寿と寿老人が手を挙げる。

恵比寿:
布袋尊は開運、良縁、子宝の神様だったね。

布袋尊:
そう、そう。私の活躍で、子供もたくさん産まれた。

恵比寿:
経済大国になり、長寿の国までは、順調だった。
1回目、上がり、だよ。

光太郎:
では、どうなったら、2回目の上がりができるんですか。

恵比寿:
2回目の上がりは、すべての人の心が満ち足りて、
しみじみとした幸せを感じられるようになる、ということなんじゃ。

えりこ:
確かに、豊かさと、しみじみとした幸せって、別のものだわ。

エビ天:
ここの七福神の皆さんは、商売繁盛は得意なんだが、
ほら、しみじみとした幸せって、(ぐるりと七福神を見渡して)
ちーっとも、得意じゃないんだよ。
僕から言わせりゃね、
1回目の上がりは、貧乏な国から、いろんな資材や食べ物を巻き上げて、
豊かになった国が勝ちってゲームさ。
それで日本も上がったけど、実際には日本の中で勝ち組、負け組ができて、
豊かなはずの日本にも、貧乏な人と、金持ちの人がいる。
誰だって競争に負けるのが恐いから、だーれも結婚しないし、
子供も作らなくなるのさ。

えりこ:
このエビ天さん、おかしいわよ。
どうしてこの人が七福神の中に、まぎれこんでいるんですか。
エビ天さん、あなたはいったい、どんな福をもらたそうとしているんですか。

エビ天:
あの……、それはまだ、決まってなくて……。
あ、いけね、用事を思い出した、そうだそうだ……。

エビ天、ポシェットを落として、ピューッと下手に逃げる。

(光太郎は、ポシェットを拾い上げる)

恵比寿:
どうしてだか、わからんのだが、
あの子は、君たちのことを、
「僕のお父さんお母さんなんだ」と言っていたんじゃよ。

えりこ:
私、子供産んだこと、ないですよ。私の子供じゃ、ありません。

光太郎:
僕の子供でもないですよ。……なんでそんなことを言ったんだろう。

(2人は恵比寿の拾ったポシェットのエビ天を見て、顔を見合わせて、「あっ、あの時の」という顔をする)

 

演奏 シーズ(オリジナル曲)
   ―― 小野瀬健人 作詞 / 遠藤里美 作曲

【編成】ボーカル、キーボード、エレキギター、ベース、ドラムス

(曲の間、トボトボと、エビ天がうなだれ、ゆっくりと舞台下手から出て、 上手に去る。
しばらくして、またトボトボと、出て、下手へと消える)

演奏終了後、光太郎たちのいる、七福神の神殿の場面。

恵比寿:
いや、本当に、まだまだ人間は未熟なんだ。
2回目の上がりまで行った国は、まだ1つもない。
みんな2回目の上がりを目指しているが、難しいのだ。

光太郎:
1回目の上がりまで行った国というのは、先進国というわけですね。

恵比寿:
そう、それと北欧の国々だな。
1回目の上がりはそんなに難しいことじゃないんだ。
だから昔むかしの大昔、今から2000年も前に、
1回目の上がりまで行った国もある。

光太郎:
2000年も前に? 本当ですか? それはどこですか。

恵比寿:
ローマ帝国。
そりゃもう、現代をしのぐほど快適で、贅沢を尽くした生活をしていたんだ。
そうだ、見に行くかい?

光太郎・えりこ:
ぜひ、見てみたい。

恵比寿:
エビ天くん(大きな声で) エビ天くん、来てくれ。

エビ天:
はい、なんでしょう。(と走ってくる)

恵比寿:
光太郎さんとえりこさんを、ローマ帝国に案内してやってくれ。

エビ天:
え、一緒に行っていいんですか。嬉しいなあ。こっち、こっち。

エビ天は2人を連れてドアへはける
七福神は上手へ

 

演奏 イングリッシュマン・イン・ニューヨーク
   ―― スティング

【編成】ボーカル、ソプラノサックス、キーボード、エレキギター、ベース、ドラムス

(曲の間、ローマ人たちが左右に、さっそうと歩く。
七福神、客席側をお上りさん風に上手から下手、
下手から上手と一往復する)

ローマ人風の、身体に布を巻き付けた人たちが行き交っている。
お風呂道具を持って歩いて行く人たち。
大きな銭湯らしいところの入り口。

演奏終了後、3人が上手から、登場。

光太郎:
おー、高層マンションが軒を連ねている。
(客席のほうに向かって、歩き回る。景色を見るしぐさ)
まるで、ニューヨークのようだ……。

エビ天:
ああ、ニューヨークかと思ってしまうでしょ。
これがローマ帝国だよ。

えりこ:
これ、ニューヨークじゃなくて、ローマ帝国なの?!
でも、2000年も前の、大昔でしょう。
見て、見て。この高い建物――。(ずらーっと並んでいるイメージ)
これ、マンションじゃない?! 1、2、3…… 7階建てよ。

光太郎:
本当にすごいことになっていたんだな。
この高層マンションが、確か6万棟以上あるって読んだことがあった。
僕たちが住んでいる時代の2000年以上も前なのに……。

帝王付き人:
(下手から出てきて、客席側に向かい直立してセリフ)
アウグストゥス様がお見えだ。皆の者、控えろ!

通行人たち、膝をつく。
光太郎、えりこ、エビ天も同様に、膝をつく。
アウグストゥスが下手から登場する。部下は2人。

アウグストゥス:
(中央で客席のほうを向いてセリフ)
どうだ、皆の者、暮らしに不自由はないか。
我がローマ帝国は、この世界の頂点に君臨しているのだ。
豊かな生活を、充分に楽しんでくれ。
食べ物、ワイン、そして娯楽競技、
この民族に相応しい生活を約束する。

エビ天:
あのー(と、立ち上がってしまう)

部下:
無礼者! (と槍を向ける)

光太郎:
あ、この子は、何も知らないんです!

えりこ:
すみません。

アウグストゥス:
まあ、よい。(部下は槍を下ろす)
何か聞きたいことでもあるのか。

エビ天:
あの、ちょっと伺いますが、
その大きな建物は、何ですか?

アウグストゥス:
ああ、公衆浴場だよ。冷水浴、温水浴、熱水浴。
サウナもあれば、大きな湯船もあるぞ。ジムもついている。
ははーん、君たちは最近、ローマ市民になったばかり、
どうだ、驚いたか。

えりこ:
驚きました。すごいです。

部下1:
ローマ市民になったら、楽ができるぞ。
パンは無料配給、無条件でもらえる。
仕事の休みは年間200日。公衆浴場も無料。
図書館、美術館、ショッピングモール、バーもある。
レストランでは、最低でも6品の料理が無料で提供される。

光太郎:
料理って、例えば肉料理なら、何の肉が使われているんですか。

部下1:
いのしし、ひつじ、しか、うさぎ
ヤマネ らくだに、ゾウ キリン

えりこ:
ゾウだのキリンの肉まで、手に入ったんですか?!

部下1:
鶏肉料理が好きなら……
にわとり、あひるに、やまうずら
キジバト だちょうに ホロホロチョウ
みみずく はくちょう  すずめ キジ
そしてオウムに  フラミンゴ……

光太郎:
いまの日本より、よっぽど贅沢な食べ物だ……。

部下2:
コロッシアムで見る格闘技も、ローマの誇りだよ。
3日に1回、闘牛、人の格闘競技、それと戦車競技。
ローマの市民権を持っているならみんな入場無料だ。

エビ天:
一番おもしろいのは、戦車競技って聞いたことがある。

えりこ:
戦車競技って、今でいうガールズパンツァーみたいなこと?

光太郎:
1人乗りの戦闘用の馬車で、競技場内をグルグル回るスピードレースさ。
今のF1レースみたいなものだよね。楽しませてもらいます。

部下1:
ここで新しいショーが始まるぞ。

 

演奏 ワカワカ
   ―― シャキーラ

【編成】ボーカル、サブボーカル、キーボード、エレキギター、ベース、ドラムス、パーカッション2名、多人数コーラス / フラダンス24名

演奏終了後、ダンサーははける。

舞台下手側にアウグストゥスとその部下
部下はそれぞれ長い槍を持っている。
アウグストゥスは、やや中央より、舞台奥に座り、
部下が、下手の客席側にひざまずく

部下1:
アウグストゥス様、我がローマ帝国の税収が、落ち込む一方です。
若者が結婚しなくなり、結婚しても子供を産む者が激減しております。
これが、国内の現状です。(立ち上がって書類を渡す)

アウグストゥス:
(座ったまま資料を受け取り、パラパラとめくる)
(ざっと見終わってから、俯き、しばらく考えたあと、立ち上がる。資料は椅子に)
(ステージの前に進み出て、訴えるようにセリフ)
我がローマ帝国は、統一により平和が訪れた。
戦争をなくし、すべての国民が快適な生活が送れるように、
私は尽力し、それは成功した。

しかし、どうだ。せっかく平和が訪れたのに、
その途端に結婚しなくなり、子供も産まない、というわけか――。
このままではローマ帝国の存続が危ぶまれる……。

部下2:
御意。
なにか、手を打たなければ、なりません。

アウグストゥス:
そうだな。新しい法律を、公布しよう。すぐに市民を集めてくれ。

部下1 2:
かしこまりました。

 

演奏 フェアリーストーリーズ(ギャロップ)
   ―― 福田洋介 作曲

【編成】ソプラノサックス1名、アルトサックス1名、テナーサックス2名、バリトンサックス1名、ドラム1名

下手側(演奏者)の照明を消すと同時に、上手側の照明をつけ、市民が集まってくる。
市民はセンターから上手側に集まって、ボーカル周辺を見上げる。

アウグストゥスは部下とともにボーカルの位置に上がる。

部下1:
皆の者、鎮まれ! アウグストゥス様だ!

聴衆:
オー!(かなり大きな声援!!!)

すぐには、鎮まらない。
アウグストゥスが出てきて、手を鎮まれ、というふうにして静かになる。

アウグストゥス:
我がローマ帝国は、深刻な少子化が進んでいる。
少子化の行く末は、国の滅亡である。考えてみてほしい。
夫婦2人の親が、1人の子供しか育てなければ、人口は1世代ごとに半減していく。
病気や事故があることを考えれば、我が国の滅亡を防ぐためには夫婦ごとに3人、
子供が必要だ。
そこで、この国の未来永劫の繁栄のために、新しい法律を施行する。
「3人子持ち法」と「独身税」だ。
結婚し、子供をもうけた者は優遇することを約束する。
国のさらなる繁栄のため、子供を産み、育て、増やすことを期待する。

聴衆は拍手をする。アウグストゥスは捌ける。

えりこたちも聴衆の中にいる。
群衆は、口々に何か言っていて、なかなか捌けない。

演奏 フェアリーストーリーズ(ギャロップ – 後半)

えりこ:
(演奏が止まると、群衆の中にいた女性に話しかける)
ちょっとすみません。
「3人子持ち法」と「独身税」って、どんな法律なんですか?

ローマ人女性:
「3人子持ち法」は、3人子供を作ったら、優先的に公務員になれるの。
「独身税」は、50才まで独身でいたら、50才まで税金をかけられるの。
でもそれだけじゃないわ。
50歳まで独身でいたら、親の相続ができなくなるの。
みんな結婚しなくなったからよ。

光太郎:
厳しい法律ですね。

ローマ人女性:
そんな法律作っても、どんどん結婚するようになるとは思えないわ……。
このごろ新興宗教が大流行。誰も、幸せじゃないのよ!

(光太郎が首を縄でつながれている男性に話しかける)

光太郎:
あなた、なんで首に縄なんかつけているんですか?

奴隷:
ああ、俺か。奴隷だからさ。

光太郎:
なんか、立派な方で、とても奴隷に見えないんですが。

奴隷:
俺は、隣の国の軍隊の将校だったんだ。戦に負けて、奴隷にされたのさ。
俺のように奴隷にされてしまった人間が、このローマの人口の7割だ。
奴隷のほうがローマ市民よりずっと多いんだ。

そして、このマンション群を見ろ。全部、賃貸マンションなんだぜ。
一部の金持ちだけが、資産をどんどん増やしているだけだ。
このローマの繁栄は、多くの犠牲の上に成り立っている!

(兵隊が2人、走って来て3人に槍を向ける)

兵隊1:
こいつらを、引っ捕らえろ。

兵隊2人が、4人を捕まえる。(エアで、後ろ手に縛る)
群衆のなかにいた髪の長い男も一緒に捕らえられる。

光太郎:
僕たちが、いったい、何をしたというんですか。

兵隊1:
この国のことを、やたら調べようとしている。
お前達スパイを、処刑しろ、という命令が下っている。

3人:
そんな殺生な……。

後ろ手に縛られたまま、連れられて、一旦、下手に捌ける。

 

演奏 フェアリーストーリーズ(恐い話)