山小屋便り

「みんなと作る、手作りおせち」 るりこ

煮しめ、ダイコンなます、カブの甘酢漬け、たたきゴボウ、芋きんとん、伊達巻き、黒豆、ブリの照り焼き、エビの甘煮、田作り、数の子、かまぼこ……なのはなのおせちは全12品詰まった、ボリューム満点の手作りです。
毎年、お正月が近づくとと、お正月に向けて普段は台所作業のない人も一緒に、みんなでおせち作りをします。
おせち作りが始まると聞くと、(今年は何を担当するのかなぁ?)とわくわくした気持ちがしたり、今年初めてなのはなでおせち作りを体験するという人のなかには、「自分たちの手でおせちを作れるとは思わなかった」と言う人もたくさんいます。

 

■みんなで育てた野菜で

なのはなのおせちに入るダイコンやニンジンなどの根菜類、その他にも黒豆やサツマイモは、みんなで育てた野菜を使います。自分たちの手で1から作る感覚を味わえるおせち作りは、なのはなのお正月イベントの大行事の1つです。
今年は、大晦日の3日前から、おせち作りが始まりました。担当する品は、紅白歌合戦のチームで振りわけられ、2チーム合体で各2品を担当することになりました。わたしのいたあゆちゃんチームは、まえちゃんチームと合体して、ダイコンなますと伊達巻きを作ることになりました。実を言うと、12品のなかで、最も興味があったものが伊達巻きだったので、発表を聞いたときは(やったぁ!)と思いました。

初日の日は午前と午後の二手にわかれ、それぞれのチームごとに、河上さんからおせちの由来と調理をする上で気をつけるべきことを教えていただきました。
そのなかで、「料理は1回きり。失敗をしてしまったら、もうその味は変えられない」という言葉が胸に響きました。
お正月も近くて、少し浮かれ気味だった自分の気持ちがあって、この姿勢で調理に臨んだら、大きな失敗を犯してしまうように思いました。河上さんの言葉から、料理は刃物や火を使うため安全に気をつけて、かつチームのなかで声かけをし合って、みんなで確認しながら、正しい調理法で正しい味つけにしていきたいと思いました。

■正しい調理を

そのあとは、河上さんから各品の調理法を説明していただきました。
「自分が担当するものだけでなく、他のチームの調理法も共有し合って、知っておいたら、今度に役立つけん、みんなで聞いてな」
と河上さんが仰って、他のチームが担当する品の調理法もみんなで一緒に聞きました。
煮しめに入る、花形のニンジンの切り方だったり、エビの背わた取りのやり方を、河上さんがホワイトボード上で、図を書いて説明してくださることがわかりやすかったです。

最後に河上さんが、
「料理は準備が7~8割で、作るのは2、3割です。準備が正しく行えたかどうかで、これからの進行具合が変わってきます」
と話してくださいました。
その言葉が驚きでした。わたしはその真逆で、準備が2割程度で調理の方が8割だと思っていて、調理の方ばかりに重点を置いて考えてしまっていました。おせち作りが始まる前に河上さんから、たくさんの知らなかったことを教えていただき、その上で実際に調理に入っていけることがありがたいことだなと感じました。

おせち作りに向けて、家庭科室は多くの人で賑わいました。

■調理に入る前に

そして、いよいよ各チームに分かれて、おせち作りが始まりました。
わたしたちのチームでは、まずレシピの読み合わせをして、みんなで流れの意思統一をしました。それから、必要な調味液や道具の準備にかかりました。河上さんの言葉を思い出して、準備をしっかりやろうと思いました。

わたしはダイコンなますに使う、ダイコンとニンジンを用意し、必要な分量を量りました。朝収穫してきたばかりのダイコンは、まだ朝の寒さで冷たくて、新鮮さを感じました。それぞれが調味液を量ったり、道具を集めてきて、またみんなで家庭科室に集まりました。それを段ボールに収め、〝ダイコンなます用〟、〝伊達巻き用〟と札をつけました。初日は、まず材料集めをし、本格的な調理は次の日となりました。しっかり準備ができたので、次の日の調理も順調に進められそうだと感じて、安心しました。

次の日は、全チームが調理に入りました。紅白歌合戦やお正月遊びの準備もあるなか、時間を上手くつかって、手際よく進めることが必要となりました。

■思いを込めて

家庭科室はみんなの活気で賑わい、たくさんの人で行き交いました。野菜を切っているチーム、鍋を囲んで静かに見守っているチーム……それぞれのチームが協力して、そのなかでみんなが笑顔で楽しんでいる姿があり、わたしの心も和むのを感じました。
わたしは主に、ダイコンなます用のダイコンを作りました。70人分ものダイコンを作ると、大きなボウルでもすぐにいっぱいになりました。後ろでは、ゆいちゃんとあやこちゃんが伊達巻きを焼いていて、とても甘い良い香りがしました。フライパンのなかでふっくらと膨らみ、こんがり焼き目のついた生地はホットケーキのようなお菓子を連想させました。

各チームが思いを込めて、楽しみながら調理をしていました。わたしもついつい、他のチームを覗きにいってしまったりと、家庭科室に溢れる空気がとても穏やかでした。
前日の準備があったために、味付けはとてもスムーズに進み、ダイコンなますは予定以上に早く完成しました。河上さんの仰っていたことは本当だったと思いました。

おせち作り3日目は、お父さんがブリをさばいてくれて、ブリの照り焼きチームがブリを焼いたのと、各チームが最終仕上げの段階に入りました。

照り焼き用のブリを、お父さんが捌いてくれました

 

仲屋食品さんが送ってくださった、 立派なブリが、お重に入ります

 

台所には、お父さんの、 あさがや・しんかい作の 出刃包丁と柳刃包丁があります

わたしたちのチームは、伊達巻きのカットをしました。伊達巻き特有のボコボコした表面をつくるために、巻いていた巻きすを開いてみると、きれいに型がついた伊達巻きが現れました。それだけでも嬉しかったのですが、半分に切り、断面を見ると、きれいな渦が巻いていて、思わず一緒にいたしほちゃんと歓声を上げてしまいました。

近くにいたのりよちゃんも来て、「すごい! ケーキみたい!」と喜んでくれました。包丁を入れる度に、柔らかくふんわりと返ってくる手応えや、ほのかな甘い香りに、お重に入るところを想像すると、詰めるのも食べるのも、とても楽しみだなぁと思いました。

大晦日の日の午前に、いよいよみんなで作ったおせちを、1人1つ、お重に詰めていきました。
食堂に入ると、各チームで作り上げた一品いっぴんが並んでいました。色とりどりのおかずの鮮やかさが目に飛び込んできて、ふわっと香る香ばしい醤油や、甘い香りも漂ってきました。

■たった1人のために

全12品のおかずを、一品ずつ、大切にお重に詰めていきました。その品のとなりに、「これくらい詰めます」という見本が置いてあり、それを真似ながら、量だったりを調節していきました。それぞれのおかずを詰めていると、作っていたみんなの穏やかな空気を思い出しました。
「きれいだね」「美味しそうだね」
食堂はみんなの歓声や笑顔で溢れていました。自分の詰めたお重は、誰の手に渡るのかはわかりません。それを思いながら、「たった1人のために」という思いを込めて、一品ひとしなを丁寧に詰めていきました。

初めは順調に詰めていけるのですが、終盤にさしかかってくると、大きなブリやエビが入らないということが起ってきました。12品を均等に詰めつつ、見た目の色鮮やかさも配慮しながら詰めることはとても難しく、みんなが苦戦していました。
12品のおかずが盛りだくさんに入ったかどうかをみんなでチェックし合い、オーケーだったら、最後に、お母さんが、飾ったら奇麗だと教えてくれた、銀杏と南天のお飾りを飾って完成です。黄色の銀杏と、赤い実の南天がのると、1つの宝石のように映え、お重全体の見栄えも一気に上がりました。

■宝石箱のよう

みんなで手作りして詰めたおせちは、宝箱のようで、見ているだけでも嬉しくなりました。
おせちは、1月1日元旦の朝食にいただきました。丁度その日、わたしは朝食当番で、朝のおせちの配膳をさせてもらいました。前日にリーダーのまことちゃんが段取りを立ててくれていて、いつも以上に緊張感を持って向かいました。
約80ものお重のなかから、席に1人1つのお重を配っていきました。大きなブリが飛び出しているもの、色合いがバランス良くきれいに詰められているもの……それぞれに個性があって、おせちを詰めているときのみんなの笑顔が思い浮かびました。

おせちとお雑煮の特別メニューの朝食を、お父さん、お母さん、みんなでいただきました。味はもちろんですが、それ以上に、みんなの思いが詰まったおせちはどれもとても美味しかったです。朝から贅沢な朝食で、新年を迎えることができました。
おせちができあがってから、ある失敗をしてしまっていたことがわかりました。それは、伊達巻きの裏表です。正しくは、焼き目のついた茶色い方を外側にして巻くところを、内側にして巻いてしまったため、見た目が黄色い伊達巻きになってしまったということです。
それぞれのチームが、作っていて間違えてしまったこと、やりにくかったことなどを反省でまとめ、次作る人に残せるよう、最後は資料としてまとめました。