山小屋便り

「とんど焼き ――お正月に区切りをつけて、新たに始まる日々へ――」 るりこ

今年1年の無病息災を祈って行われるとんど焼きは、なのはなの冬の行事の1つです。 なのはなでは、お正月三が日にみんなで書いた書き初めや、手作りのお飾りと門松、そしてみんなでついたお餅で作った鏡餅を火に燃やします。
なかでも興味深いものが、火にあぶられて、風に上手く乗り、宙に舞った書き初めを書いた人は、字が上手くなるという言い伝えがあることです。
なのはなで初めて経験したとんど焼きは、1年の節目を感じる、大切な行事です。

今年も1月15日に、とんど焼きが行われました。
この日は朝に雪が舞っていましたが、とんと焼きが始まるお昼時には、晴れ間が見えてきました。
中庭に、ドラム缶が2か所設置され、あゆちゃんがその中に火をつけてくれました。
火の傍に寄ると、少し肌寒かった身体が温まっていくのを感じました。 1人1つお飾りと、お正月に書いた、顔真卿の『春天』と、各自の抱負を書いた書き初め2枚を持ちました。

 

とんど焼きをすることで、新年のスタートに向けて、気持ちが一層高まります。

 

「さぁ、みんなどんどん入れて!」
あゆちゃんの一言に、とんど焼きの始まりです。
勢いよく2枚をまとめて火の中に入れる子、風の吹くタイミングを見計らって、慎重に入れる子、それぞれが思いを込めて、「えいっ」と火の中へ書き初めを入れていきました。円を描くように火の周りをみんなで囲い、火の中に入れられた書き初めを見守ります。自分のもの他の人のもの関係なしに、みんながただ純粋に、高く舞って欲しいという思いを込めて、「上がれ! 上がれ!」と応援をしました。
火の中に入れられた書き初めは、みるみる内に真っ黒く縮れていきます。そして、丁度風が吹いたと思ったら、ふわっと宙に舞っていきました。
「うわぁ!!!」「上がった! 上がった!」「誰の?」「おぉ! すごいすごい!」
誰かの書き初めが舞うたびに、火を囲むみんなからは歓声と拍手が湧き、盛り上がりました。

この日は平日だったために、お仕事組さんはいませんでした。そのためみんなが代わりとなって、お仕事組さんの書き初めを火に入れたり、台所作業で来られなかった子たちの分も代表して燃やしました。
そのなかで、台所作業だったもえちゃんとゆきなちゃんの書き初めが、2人とも空高く、宙に舞ったときが、とても印象的でした。
「もえちゃん! もえちゃんの上がったよ!」
「ゆきなちゃんのも上がったよ!」
「おーい! もえちゃん! ゆきなちゃん! 上がったよ!」
台所の方角に向かって、聞こえないと思うけれど、もえちゃんとゆきなちゃんに伝えました。2人はその場にはいなかったけれど、みんながもえちゃんとゆきなちゃんに「やったね」という思いを込めて、2人のように喜び合った瞬間がとても嬉しかったです。

自分の書き初めが上がったか、上がらなかったかは、実際のところどうでも良くて、誰か1人でも書き初めが上がればみんなで無邪気に喜んで、もし上がらなかったとしても楽しめたら良いんだという、穏やかで優しい空気がありました。
最後の締めとして、燃えて出た墨をおでこにつけて、無病息災を祈るというものがあります。人差し指に墨をつけたら、隣の人と向かい合って、相手のおでこの中心に向かってペタッと押し当てます。わたしはまことちゃんとくっつけ合いました。少し風邪気味だったまことちゃんに、(早く風邪が治って、今年はもうこれ以上風邪を引きませんように。無病息災)と心のなかで祈りながら、まことちゃんのおでこに墨を押し当てました。

■みんなでお揃い

あみちゃんとあけみちゃんが台所に行き、とんど焼きに来られなかったみんなのおでこにも墨をつけてくれました。
古吉野にいるみんなのおでこには、黒い点がつき、みんなお揃いです。その日1日は、みんながおでこに黒い点をつけて過ごすことになるので、廊下ですれ違ったときなど少し恥ずかしいような、でも嬉しい気持ちになります。
これで今年1年も、みんなで健康に過ごしたいなと思いました。

最後に、墨をおでこにつけて、今年1年の無病息災を祈ります。

そしてとんど焼きにはもう1つ、楽しみなことがあります。それは、お鏡餅の入ったぜんざいをいただけることです。この日は午前にとんど焼きを行い、午後からはみんなで畑作業に出ていました。
15時に戻ってくると、河上さんが熱々のおぜんざいを作って待っていてくださいました。
なのはなで採れた大粒の小豆がたっぷりとモチモチのお餅が入った、なのはなのぜんざいは格別です。
わたしはなのはなに来るまで小豆が好きではありませんでしたが、なのはなのおぜんざいを食べてからは、大好きになりました。みんなとでいただくとさらに美味しく感じて、熱々のお汁が身体に染み渡り、心も身体もとろけていくようでした。

最後にお父さんが、
「1月15日にとんど焼きを行うことで、本当にお正月は終わりですという意味を表しています。これを節目に、身体も気持ちも完全に通常モードに切り替えていきましょう」
と話してくれました。 気持ちの面では十分に、通常モードに切り替えていたつもりでしたが、この日を節目にもう一度気持ちを入れ直して、今年1年も充実した年となるよう、たくさんのことを学んで知って、自立に向かう力をつけていける1年にしていこうと思いました。

古くから伝わる習わしを、みんなと楽しみながら行えることがとても有り難いことだと感じます。