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第40回「涙腺が弱い」




*質問*

涙腺が弱いのは、気持ちが弱いからですか? 教えていだだけるとうれしいです。

*答え*

 涙腺が弱いっていうのは、感受性が敏感な人と、感受性が鈍感な人とでは、感受性の強い人の方が涙腺が緩みやすいってことが、まず言えるでしょうね。
 それから、涙腺が緩みやすい時期と、そうじゃないときがありますね。
 そういうことで言うと、気持ちが弱いから涙腺が緩いというより、弱い時期と強い時期があるということも言えるでしょう。例えば、気持ちが苦しいときは、涙腺が弱くなります。

 ものすごく苦しいときね、これはどうしたって涙腺が緩みやすくなります。
 そしてその苦しい気持ちが行き過ぎると、今度は涙腺が強くなるんです。
 『復讐するは我にあり』という小説がありますけど――ノンフィクションと言ったほうがいいかもしれない――現実にあった話で、世の中に復讐するために、いろいろ殺しを重ねていくんですけどね。
 普通の人が何かの事情で弱気に、過敏に、涙腺が弱くなっていく。生きられないといって自殺する人もいる。状況がいつまでも改善されなくて、苦しいまま死ぬこともできないというとき、それだったら世の中に復讐してやる、と居直ると涙腺が強くなる。
 大量殺人が、この前、山口でありました。同じ村の人5人。
 最初は困っていた人が追いつめられると、気持ちは鬼のように変わるでしょうね。

 それともうひとつ、泣くことを恥とする人、それから恥としない人っていうのがあると思いますね。
 例えば、僕らが子供のころは、「男の子は泣くな」ってよく言われました。
 女なら泣いてよくて、男は泣いちゃいけないのかよって話ですよね。
 男の子が泣いてると、「女の腐ったのみたいに泣くんじゃない」って言われて、ええっ、女の腐ったのって泣いてるのか!? なんてね。
 そんなことよく言われてましたから、男は泣いちゃいけない、みたいなこと言われると、泣きにくいよね。

 そういう文化というか、風潮があると、涙も流しにくい。
 ただ自分の体験でね、何かいい映画を観たり、あるいは感動的な小説を読む。すると、涙が流れるくらい感動することがあります。すると、涙を流せば流すほどに、なんか気持ちが洗われていく、心が洗われて、きれいになっていく、そんな感じがしていました。
 自分の汚れたものとか、雑念みたいなものが、涙によってきれいに洗い流されていくと思ったのです。感動すればするほど、きれいに自分の心の汚れが取れて、生まれ変わるような気持ちっていうのを何度も味わうことができるんですよね。
 そういう意味では、映画を観たり、小説を読んだり、あるいは音楽を聴いたりしたとき、涙腺が弱くて、涙を流す方が、よりよい人間になれるんじゃないかな、という感じが僕はしています。
 女だろうが男だろうが、そういう意味では、時には涙を流しても良いのかな、という感じがしますよね。

 ずいぶん前にも話しましたけど、こういうことがありました。
 自分の子供が、まだ小学生くらいのとき、本を買ってきた。
「どんな本買ってきた」って聞いたら、
「詩集を買ってきた」という。

「なんだ、詩なんか、そんなもの、読んだってしょうがないんだけどな」
 って言ったんだね。だいたい詩なんてろくなものが無い、というのが僕の考えだから。
 そしたら子供が挑戦的に僕に言うんです。
「そんなこと言ったってね、お父さんが読んだら絶対泣くよ」って。
「そんなわけあるか」
「じゃあねお父さん、読んでるふりして読んでなかったらいけないから、いますぐ声出して読んでみて」
「じゃあ読んでやるよ」
 ……って出してみたら、金子みすゞの詩集だったんだよね。
 僕はそのとき読むのが初めてだった。
 それでね、「大羽鰯の大漁だ」っていうのが載っている詩集でね、あのね、読んでいるうちに、涙腺が緩んできて、あ、まずいなと思ったけど、子供が取り囲んで僕をじっと見ててね。まずいなあと思ったけど、途中で投げ出すわけにもいかないし。
「浜は祭りのようだけど、海の中では幾万の、いわしのとむらいするだろう」
 って読んだら、ボロボロ泣いちゃってね。もう涙が止まらない。 
「ほらみろ泣いたじゃないか、お父さんなら泣くと思ったんだよ」
 子供達が、勝ち誇って、喜んでいる。
「ああこの本なら、良いよ」って言った覚えがありますけどね。
 ちょっと参りましたね、負けましたよ。
 ただね、子供も、「お父さん泣かないんじゃないか」じゃなくて、「お父さんなら絶対に泣くよ」って言いきった。そんなふうに思ってくれていたことが、うれしかったね。
 子供の前で泣くのは恥ずかしいけど、泣く姿を、逃げないで泣く姿を見せるのも、親の仕事かなと思って、思い切り泣いちゃいました。

 そういう意味で、涙腺が弱いとか、涙を流すとか、それは恥ずかしいとか気にしなくて良いんじゃないかな。
 泣きたいときは、うんと泣いていいんじゃないかな。

 さらにもう一つ言うとね。摂食障害の子は子供のとき、泣きたいときに泣けてないんですね。泣きたいときあるでしょう。
 普通の子供は、膝をすりむいて、血が出てくると泣くんですね。転んで、すりむいた傷のところをじっと見てて、血が出てなければ泣かないけど、出たら「うわーっ」て泣く。
 ただ、お父ちゃんお母ちゃんが喧嘩してる、こわい。こわいけど、ここで泣いたら、もっとひどいことになるんじゃないか、と思ったら泣くに泣けない。
 父親も母親も、両方とも怒ってるから、片方に泣いて助けを求めることもできない。
 そこで泣くのを堪えてしまう。泣き切れてない。
 それが、残っちゃうんですね。
 泣かせてもらえない。泣いてすがる相手がいない。
 これは心の傷になるんですよね。
 それが大きくなってからね、大人になってから、何かこう、今さらね、5歳の時に泣きたかったものを、22歳になって泣けないわけですよね。
 どこに向かって泣いたって、誰にも聞いてもらえないし、解ってもらいにくい。
 それが傷。そういう意味じゃ、泣かないことでね、辛さが消化できない。
 わんわんおっきな声で泣くことで消化できる気持ちってあるんですね。
 それは泣くべき時期に泣かなきゃいけない。
 あるいは、慰めてもらうべき時期に慰めてもらわないといけない。誰かにね。

 なのはなファミリーでは、ここで今、泣いてもらおう、泣きなおし、慰めなおしをして、傷じゃなくしてしまおうとしているんです。
 冷凍保存されてきた、4歳から6歳の頃に受けた心の傷を整理して、正しく泣きなおしをする。
 それが、ここでときどきやるミーティングの意味なんですね。
 だから、泣くことはここでは「善」なんですよね。
 泣いて、昔の解決できなかった傷を解消する。
 そういう意味じゃ、涙腺が強くて泣けないって人は困っちゃう。
 僕は、はっきり言って涙腺が弱いほうだと思います。
 なのはなのお母さんもよく泣いたりします。
 質問にあったように、涙腺が弱いから気持ちが弱い、とばかりは言えませんよ。
 ということですね。

泣いたって良いよね。

泣いたら良いんだよね。

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