第244回「友達について その①」

【質問】
 私は、周りの人と仲良くするのが苦手です。
 4月に学校へ入学したら、新しい友達をつくらなきゃってなりますよね。つくったとしても、ゴールデンウィークが明ける頃には、もう無理なんです。1か月は我慢できるんですけど、1か月後になるとみんな本音などが出てきて、猫かぶりができなくなってきてからの勝負が難しい。
 私は小学校高学年でアメリカに渡っていて、帰国した時に幼馴染みに手のひら返しをされてよそ者扱いをされたとか、距離を置かれたとか、寂しい思いをしたのが原因かと思っています。
 人と深い関係を作っていくことや、上手な関係のとりかたがわからないです。

 

 

【お父さんの答え】
お父さん:
 僕は人と深い関係をとろうと思ったことはないです。普段から、誰とも関係をとろうと思っていないんですね。
 だから新しく友達を作りたいとか、深い関係をつくりたいって思ったことがない。昔は思ってたのかもしれないけど、覚えていない。少なくとも、今は、誰とも友達になりたくないです。
 なんで友達にならなきゃいけないのかな。友達ごっこやっている暇なんてないよね。

 どうなんだろう、僕は中学の時とか、高校の時とかも、友達はいたけど、仲良くなろうと思ってはいなかったね。
 中学、高校と男子高だったから、東京に出て予備校にいったら、クラスの半分近くが女性で驚いた。
 えっ、いいの? こんなにたくさん女の人がいて窒息しそうだなって、感じでね、僕は女の子は好きだから、まわりにいるだけでハッピーなんだけど、そうは言っても誰か女の人と友達になりたいとか、恋人になりたいとか、思わない。なんて言ったらいいんだろう、最初から無理、そういうふうにはならないだろうっていう諦めでね。
 その時、僕は多感で、10代後半のころなんて、もう人と口もきけない。赤面症だし、とても無理だし、友達になりたくもないしね。
 ところが、そのクラスの中に飛び抜けてすっごく可愛い子がいた。1人だけ。それで、もうその子と同じ教室で生きているだけで幸せっていうかね、もう天国だって思ったよ。この世は天国だ、とね。
 毎日、予備校に行けばその子に会える、というより姿を見ることができる。後ろ姿を見るだけで心臓がバクバクするくらい幸せになっちゃう。その子を見るために予備校に行っていたんだよね。
 ところが、僕はものぐさだからさ、寝坊してさ、その予備校はなにか知らないけど人数とりすぎていつも溢れるくらいなわけよ。教室に入れないくらい生徒がいた。そうしていつも遅刻しぎみで行って、だいたい僕はいつも最後列の席に座る。
 あっ、その可愛い子ね、いつも一番前の真ん中に座るんです。
 そうそう、誰から、どう見ても可愛い。いちばん前の真ん中に座っていると。そうしたらある男が、その子の隣の席に座って、明らかに近づいて行くわけ。
 あぁ、この世には勇気ある男がいるなと思ってね。恋人になっちまうんだろうなって思っているうちに、その女の子が左の席に動いたり右に行ったりするようになった。でね、こっち行ったりするうちにこの男は隣に座れなくなり、いなくなる。ふられたなあいつ、と誰から見てもわかった。
 で、その可愛い子はまた真ん中の席に戻ってきた。ところが、また別な男が近づいていく。まただよ~って思ってね。でもあの人、結構、男を嫌うなって思った。
 高嶺の花だからちょっとやそっとの男じゃ駄目なんだろうな、ざまあみろ、って思って高見の見物をしてたのね。
 そういう、近寄ってはフラれる男がずっとあって、それで誰も手が届かないんだろうなって思っていた。

 そんなある日、僕はまたいつものように遅刻した。もう、ギリギリで行ったら授業が始まっていて、ひとつだけ後ろの席が空いていてそこに座って、隣の人に今どこですかって聞いたらその人なんだよ! その女の子なんだよ! びっくりしちゃって、もう心臓バクバクで。授業も何も耳に入らなくてね。どうしよう、どうしよう、って思って。
「いま、ここですよ」
 とその可愛い子が僕に教えてくれた。無欲で近づいたのがよかった。
 せっかくのチャンスだ。駄目だけど、でも、なんとかならないかなってね、そのことばっかり考えててね、授業終わったあとに思わず、「ね、一緒にコーヒー飲みませんか」って言っちゃった。どうせ玉砕するんだろうっていったらその子は、「いいわよ」って言うもんで、うそーと思ってそれから喫茶店に行ってしゃべったの。
 そうしたらそれからその可愛い子と仲良くなってね。
 僕の友達にもその子を紹介した。
 そうしたら友達がその女の子に聞くわけ。
「こんな奴の、どこが良くて友達やってんだ?!」
 って言うわけよ、その友達が。僕の友達もストレートだからね。
「どんなとこって……」
「こいつさぁ、田舎者の茨城弁丸出しで、こんなののどこがいいわけ!?」
 って言ったんだよね。
 そうしたら彼女は、「私も埼玉の田舎者だし、こういう風に飾らない人、大好き」って言われて、「えー、うそーっ、本当かよっ」て言う感じでしたね。

 なんだっけ。何の話ししてたっけかな。
 あぁ、僕ね、人嫌いだし、付き合うのできないって思っているし、でも何でか知らんけど、仲良くなるべき人と仲良くなっちゃうわけよ。だけど、なれるの無理と思いながら、いつの間にかそうなっちゃうわけ。
 不思議なんだよね。
 だから仲良くなろうと思っていないよ。
 盛男さんとも、今日会って、色々話していたんだけど。山小屋を貸してくれた人ね。

 最初、盛男さんの山小屋を貸してほしいっていうことで、当時の町会議員が盛男さんを説得しにいってくれたけど、貸さないって言っているよって僕に言うわけ。だけど小野瀬くんが直接、貸してって言ったらどうかな、1人でもう1回、行きなと言う。
 どうせ断られるなら、自分で断られてきなっていうので、こんばんはって、1人で初めて夜に会いに行った。
 すると、盛男さんが山小屋と違う話を始めた。有機野菜の購入する会を作ってね、大阪の人たちに送っているんだ、定期的にね。1月1回やってるという。
 で、こっちで有機栽培をやっている人と協力して、毎月1回のその時の旬の野菜を送っている、と言うから、それは結構なことだけど、野菜ってそもそも1袋100円から150円のものでね、それを1か月に1回、箱につめて1000円だかの送料をかけてね、僕はね、それはおかしいと思いますよって言っちゃったんだよ。
 田舎のほうは畑があるけど、都会はない、みたいなことはよく言われるけど、田舎のみんなが野菜を食べられるって言ったって、本当にみんなが野菜を庭で作って食べているんだったら、スーパーで野菜を売っているわけがないしね。
 地元でもいい野菜が欲しい人がいるんだから、そういうのは送料をかけないで、有機栽培が欲しいっていう地元の人にこそ野菜を売るべきだと思いますよって言っちゃった。
 あぁ、墓穴を掘ったな、と思ったけど、もう遅い。
 そしたら、また別な話を盛男さんが始めた。
 俺はこう考えるって言うから、それは違うと思いますね、僕だったらこう考えますねって否定しちゃった。5つぐらい話したけど、5つとも反対意見を言ってしまった。
 小一時間話して、あぁこれはもう嫌われちゃったな、全部、反対意見を言っちゃったからもうダメだな。でも、僕は嘘も言えないしね、しょうがないなって、帰ろうって思ったら、「君、山小屋を使いたいんじゃないのかい」っていう。「あぁ、まあそうなんですけど」っていったら、「使ったらいいよ」って。はぁ? 何で……ってなったくらい。

 で、また日を改めて山小屋で使い方とかを聞いて、家賃の話しになった。どうしましょうかっていうと、いくらでも良いんだけどって盛男さんがいう。前は別な人に貸していたことがあるから、それと同じで良いかなって言うので、助かりますってお願いした。
 ただ、まだちょっと手を入れるのにいくらかかるのか解らないし、なのはなファミリーを開いたとして本当に人が来るかどうかは、やってみないとわからないところもあるので、「もしかしたら家賃払えなくなるかもしれないんですけど、良いですか」って聞いたら、「あぁ、そんなもん、どうでもよろしい」って言ってくれた。太っ腹だなって思ったよ。でも実際には、払わないことはなかったけどね。

 そうしたら、それからねずーっとの付き合いでもう17年目に入った。別に、友達とか知り合いとか、なんでもなかった人で、盛男さんは僕の親と丁度同じ年なんだよ。
 盛男さんは僕を息子みたいに思ってくれているし、本当に家族みたいな付き合いをしている。
 僕はそういう付き合いを誰ともしたいと思っていないけど、たまたまそうなっていく人がでてくるということ。だから、友達のための友達っていらないと思っているということなんだ。

 

N:
 友達ごっこでも何でも、友達がいるっていうので安心する部分があると思うんですけど、寂しくなったりしないんですか?

 

お父さん:
 だって、もともと僕の友達は本の中にたくさんいるからね。小説の中に、僕の親しい人はたくさんいるし、小説じゃなくても何かの本を書いた著者を親しい人だと思うし、考えが一致すれば共感すれば寂しくない。
 小説を読んで深い共感をすると、こんなにも僕を感動させてくれる人がいると思っただけで、僕は寂しくないし、満足する。何人かの著者本人に会いに行って、会ったこともあるし、やっぱり思った通りだけど、その人たちとも仲良しごっこをする気はないね。そんな暇はない、友達ごっこをしている暇は、いつもないんだよ。
 それにさ、なのはなファミリーのお母さんに奉仕をしないといけない、尽くさないといけないでしょう。お母さん1人で友達は充分、忙しくて、定員いっぱい。

 

(その② へ続きます。)

 

(2020年4月1日掲載)









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第133回「楽観主義者と悲観主義者の境界線」
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第135回「続『上品に、笑顔で、美しく』」
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