第183回「緻密に」

【質問】
稲の水やりについて

 稲の水やりをするときの心構えを改めて教えていただけると嬉しいです。
 どの程度きっちりするのか、ということと、まいた種を一斉に発芽させ、同じように生育させることの意味を、みんなで共通認識できたら良いなと思いました。
(今日のお昼に水やりをしたとき、人によって意識の高さが全く違うと思いました。
 まりのちゃんから、「今はなるべく直射日光に当てたくない」とその場で教えてもらっていたのに、風でミラシートが一部はぐれてしまっても、すぐにシートを元に戻そうとする人が少なかったです。
 また、水やりの仕方も、トレーの端まで均等にやろうとする人と、そうでない人の差が大きいと思いました。)

 自分の答え:どのトレーも同じように生育させたいため、水が均等に行き渡るように水をやる。今、生育がずれてしまうと、その後に大きく影響する。

 

 

【答え】
お父さん:
 そうですね、苗の大きさが同じになるように育てないと、やっぱり困るんです。
 というのは、田に植えたときに大きさに違いがあると、田植機の植え損ないが出てきてしまう。そればかりか、もし仮にうまく植わったとしても、大きいのと小さいのがあると、大きいのが勝ってしまうので、小さいものの育ちが悪くなる。大きいのがたくさん実をつければいいじゃないか、というとそんなこともないんですね、同じくらいに育ったほうが一番たくさん穫れる。1粒の籾からご飯茶碗一杯のお米が穫れる、といわれています。
 いずれにしてもたくさん良い米を取るには、同じように育てなきゃいけない。緻密に、隅に植わってる苗にも同じだけ水をやらなきゃならないですね。
 播種をしてトレーを並べていったとき、消毒液を撒きましたね。その消毒液の撒き方も本当に緻密に同じ密度で、同じ量だけやるかどうかで効果が違います。毎日の水やりもそうです。ずいぶん人によって手が違うとなると、育ち方が違ってきます。

 今、なのはなファミリーで育てている小松菜、法蓮草はすごく大きないいものができています。人数がいることもあって手間を掛けて虫をとったり、水をやったり、雑草をとったり、しています。とても手をかけていますから、すごくいいものができるんですよね。だけど一つ一つの手間は本当に小さいもので、それがものすごく大きな違いになってくるんですね。
 細やかな人が細やかに世話をするのと、大雑把な人が大雑把にやるのとでは全然育ち方が違ってくると思いますね。
 それはみんなもうすうす感じてるんじゃないかなと思います。大雑把な人がリーダーになって大雑把にやっていると、作物ができそこなって、結果的にその作物がほとんど食べられないことがありますね。それは、やっぱりどうしても手の掛け方に違いが大きく出てしまうからです。細やかな人、神経質なくらいの人が育てると、本当にいいものができます。
 これは性格もあると思います。
 でも、性格だけではありません。みんなは、摂食障害というつらい体験をしてきて、そのときにどこか繊細な気持ちを置いてきてしまうことがある。
 どこか投げやりな態度、投げやりな気持ちを半分くらい身につけちゃっている人の場合、畑の世話をしているときに投げやりな気持ちがつい、ふっと出てきちゃって、手が雑になると、やっぱり緻密な世話はできないですよね。で、普通の水準よりも、手がずさんになることはままあるんですよ。

 もし摂食障害の女性が症状を抑えながらウェイトレスをやると、茶碗、コップの壊れる率はすごく高くなります。お客さんからのクレームもすごく多くなるでしょうね。
 例えば喫茶店でお客さんにコーヒーカップを出すとします。ここまでコップがきて(テーブルから数センチ上)、もう次に気持ちが移ってしまう。コップはテーブルに落ちるように乱暴に置かれてしまう。
 何やってるんだ、人前にパンとコップを置くんじゃない、ってお客さんは怒ります。
 集中力がそこまでなんですね。最後まで行かない。集中力を持てば音もなく、すっとコップを置けるんですけどね。
 いくら普通の人でも、摂食障害になるとどうしてもそうなってしまうんです。そして、その症状を長いこと続けている人は、それがだんだん習性になってきてしまう。
 自分のコップならそれでいいんですけど、人に出すときはダメですよ。それが、ついうっかり地が出てしまう。お店のお客さんだったら、馬鹿にしてるのかって怒らせてしまいます。
 本当にそういうことは、心が痛んだ人には誰にもあることでね。だからこそ、今、ちゃんと気持ちも身体も整えるときに、ここで「緻密に、緻密に」というのを練習して、その緻密さを本当に身につけないと、社会に出てから困るようなことになります。

 苗の水やりはその練習とも言えるでしょうね。ここは動作の一つひとつを緻密にして、ミラシートが剥がれたら戻す、水もきっちりやる、そういうことができる人になっていってほしいなと思いますね。

 

 

(2019年5月21日掲載)









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第1回から第65回までの「お父さんにきいてみよう」は、
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