第169回「好きな気持ちと、誤解をされることへの不安について」

【質問】
 誤解をされることへの不安について
 
 私は人に誤解されることが不安です。
 人から、敵意がある、悪意があると思われたくありません。
 先日のお父さんへの質問に、「10好きなら10好きだと表現するものだと思っている」というものがありましたが、自分は10好きでも2~3くらいしか表現しないほうだと思います。
 気持ちの言葉が少ないと誤解されやすいのはわかっているのですが、自分の気持ちは表現するとなくなってしまうような(?)気もなぜかして、口にするのがためらわれたりします。
 また、人に対して誤解されたくない気持ちが強いと説明がくどくなったりするので、しつこく思われるかなあろ思い、また口をつぐんでしまうことになります。
 例えば「好き」という感情が10のうち10あったとしても、その感情の背景を説明するとき、きれいなこともきたないことも説明しなければいけないので、全体的な印象が7~6くらいになります。それにプラスの気持ちを口つぐんでしまうと、伝わるのは3くらいだったりすると思います。
 
①描いていて思ったんですが、私は自分のことを理解されたい=愛されたいと願ってこう在るんでしょうか?
②また、口に出すと気持ちがなくなってしまう気がするのはどうしてなんでしょうか。
 OMT(オープンマインドトレーニング)の原理はプラスの感情にも適応されるのでしょうか?
 

 

お父さん:
 その前に。その、10好きだったとしますね。10表現するっていうけれども、「好き」っていう言葉は、ストレートには案外、言いにくいですよね。「愛してるよ」とか、言えない。
 

 
まゆ:
 ふふっ。
 
お父さん:
 それ言っただけで笑うでしょ。聞いてるだけで恥ずかしいよね。
 多分、「愛してる」という言葉は生涯に――今まで何十年も生きていますけど――ほとんど言ったことがないですよ。ただ、同じ人に数多く言ってるという人がいます、この近くにいますけどね(お母さん)。言わされてる、数多くね。普通は、めったに言わないし、好きというのも言わないですよ。
 ただどうなのかな。僕は、好きという感情は、目で伝わっちゃうのかなという気がする。
 

お母さん:
 伝わる、伝わる。
 

お父さん:
 目だけでね。
 10か9か8か6か、伝わっちゃいますよ。だから言葉で出さなくても目で伝わっちゃうので……やばいですよね(笑)。目で浮気できちゃうんですよね。
 だから、これで、好きだからといって、好きな気持ちとか、背景とか、奇麗なこと、汚いこと、全部説明してその上で好きですって――例えば「好きです」って誰かに言うとき、「私の身長は何センチで体重何キロ、バスト何センチ、こういう私ですが好きですか? 血液型はB型。ちょっと問題ありだと思ってますね?」みたいな。そんなこと言わないですよね。
 何も言わなくても、伝わっちゃう気がしますね。
 だから説明しない。それで、誤解されないんじゃないかな。
 

お母さん:
 今日、ある子に言ったんだけど、今お父さんが「目で」って言ったけど、もうお母さんやお父さんの歳になると、説明してもらわなくても、わかるよね。
 

お父さん:
 うん、そうだよ。歳でもないかも知れない。若いときからそんな感じしたけどね。
 

お母さん:
 わかる人はもうわかるからね。
 

お父さん:
 理解度が同じくらいとか、感じてることが同じくらいだと、目で語る以前に空気で伝わっちゃうという感じがするんですよ。ほんとに、やまびこみたいに、好きって、ずっとこだましあってる感じがあるので、それは、なんかこの、目以前に心というかね。愛するというのは理解し、理解されることですから、お互いに同じ気持ちだなって理解しあっていれば自ずとわかります。
 相手のことを好きだっていう気持ちがあるということは、相手のことを、「こうだろうな、自分と近いな」という理解がヒュッと相手に及ぶ。相手からまた返ってくるとなると、すごく好きという感情になるんじゃないでしょうかね。

 だから、『書いていて思ったんですが、私は自分のことを理解されたい、愛されたいと願ってこうなるんでしょうか』
 この人は、ここまでのこういう質問を書くこと自体ね、なんか誤解されずに好きになってもらいたいという気持ちが強い人だなと思いますよね。
 今、こう書くというのは、今、好きになってもらいたい気持ちが高まってきた。私を理解してほしい、という気持ちが高まってきたということでしょうね。
 苦しい最中だと好きもなにもなくなっちゃうのでね。好きになってもらいたい、好きになりたいという気持ちが高まってきているのかなと思いますね。
 

 それと、ここ面白いですよね。『口に出すと気持ちがなくなってしまう気がするのはどうしてなんでしょうか』
 口に出すと気持ちがなくなってしまう気がするのは、どうしてなのか。
 何か他のことを言った途端に――言葉というのはほんとうに抽象化された記号みたいなものですからね、すぐに現物と違うものになっちゃうんですよ。
 僕が「コロッケ」と言ったらみんな、コロッケを思い浮かべますよね。でもアメリカ人に言ったら、「コロッケ?」英語でコロッケって知ってたとしてもアメリカ人が思い浮かべるコロッケと日本人が思い浮かべるコロッケって違うものになるでしょう、おそらく。そんなふうに言葉は記号であって、心そのままじゃない。考えた感情そのままを言わないので、喋れば喋るほど、どんどん内側の感情から離れていく感じがします。
 だからもし、好きということを言いたかったら、背景とか良いとこ悪いとこ全部言ってから、ではなくて、そんなことは一切言わないで、ただ、好き好き好き好き………って言ってると、泉のように湧いてきてね、まだ残ってる感じで消えてなくならない。ほんと、それ以上の言葉は要らないという、そういうことなんですよね。
 

 あと、『OMTの原理はプラスの感情にも適応されるのか』
 OMTでしゃべるということは、自分の曖昧になってる体験とか感情を、はっきりした感情に変えていく行為です。喜怒哀楽を言葉にして記憶を刻む。言葉にして感情を再確認するという意味です。
 ただ、好きという感情は言葉になってなくても、自分の中にあるからわかるし、例えば、黙って立って、好きな人をじっと見ただけでも好きな気持ちは伝わるし、見なくたって、好きな人のそばに立って足元をじっと見ただけでも、好きな気持ちが伝わってくるので、大丈夫ですよ。誤解なく伝わります。
 

 そういうことでね。ただ、人を好きになる気持ちをたくさん持つと、自分の中に豊かさが広がっていく感じがしますよね。好きな気持ち。たくさんの人を、たくさん深く好きになっていくと、それだけ心が豊かになっていくし、人生が豊かになっていく感じがしますね。
 でも「好き」という言葉は、あんまりう伝えないほうが良いような気がしますね。好きな人を好きなまま、うちに秘めて持っておく。伝えすぎちゃうと、「好き?」「私も好き」じゃあ今度どこ行こうか、何しようか。もっと好きになろうもっと好きになろうと思うとアップアップしてきちゃいますしね、つらくなってくる。他の人も同じような気持ちを同じくらい持ち続けるのが難しくなっていく。
 だからあんまり出さないで、たくさん、密かにいっぱい、内側でふくらましておく。好きな気持ちををたくさん持っておく、ということが大事なのかなと思いますよね。
 

 単純な好きを、年頃になって、結婚して、行動に移して、好きな者同士で家庭を持って子供ができてその家庭を好きなままずっと膨らまして枝葉を付けて大きな木にして、好きの最終形を目指していくみたいな、これは山あり谷ありで大変なことになります。そういうことを若いときから何回も繰り返していたら大変になっちゃうのでね。
 最終的に、ここぞというときにドンと出せばいいのであって、「好き」はなるべく内側に秘めておく、そういうことでいいような気がします。

 

(2019年3月29日掲載)









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第1回から第65回までの「お父さんにきいてみよう」は、
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