第158回「疲れを認めたくない」

【質問】
 お父さん、お母さんは若いときに、疲れを認めたくない気持ちはありましたか。私はもちろん、言動には出しませんが、もしかしてこれは疲れなのかもしれないと思っても、そうと頭の中でも自分の中でも認めたくありません。
 お父さん、お母さんはどう思われますか?

 

 

【答え】
お父さん:
 僕も若いときに疲れを認めたくないっていうのは、ありましたし、実際、自分は疲れないんじゃないかっていう思い込みがありましたよね。人よりも自分は強いんじゃないかとかね。
 本当は若い人は本気を出せば、疲れないでどこまででも走っていけるんじゃないか。それが本当にあるんじゃないかなと今でも思いますね。

 あのね、……僕は大学の自動車部の時に、やかん練習というのがあったんですね。ヤカンに水を一杯入れて、それを持って走り回る練習じゃないんですね。夜にやるので夜間練習。合宿所でみんなして寝てると、上級性が夜12時過ぎくらいに、起きろって起こしに来る。
 「今から夜間練習だ」と言って車に乗せられて、山の中に連れていかれるんですよ。「走れ」と言われて、暗い山道をとっとことっとこ走っていくんですよ。なんの宛もないのに。まあ半分は肝試しのようなところもあります。それを後から上級生が車で追ってきて、行くとこまで行ったら拾い上げてくれる。そういう夜間のマラソン練習みたいなもの。精神力をつける意味合いも含まれている。真っ暗い山道を走っていくわけですから。

 それで僕はちょっといたずら心を出したんですよね。どういういたずら心かというと、逃げてやりました。思い切り走って逃げ切ってしまおう、と――。かなりスピードを出してダーッと走ったんですよ。ずっと山を下りる方向へ行ったら、逃げ切れてしまった。
 上級生が車で1人ずつ拾いながら来るんですが、その同級生よりもずっと前を僕が走っているので、まさかそんな遠くへ行かないだろうと思うので、どこへ行っちゃったんだろうと、上級生は、見失ったかなとまた元のところへ戻って探し回るわけですね。まあ心配してるだろうなと思いながら、僕は走っていた。
 ところがね、いつまでたっても、見つけてもらえないんですよ。
 車だからやがて飛ばして追いついてくるだろうと思っていたら、そこまで行ってるはずがない、と思い込んで、来てくれない。
 それでもどんどん走っていると、今度は違う先輩チームの車と会う。
「お前何やってるんだ?」
 いや、まだ見つけてくれないんです。
 どっから走ってきたんだ、みたいなこと言われて、先輩同士連絡をとりあおうにも、まだ携帯がなかったころですから、うまく連携がとれない。
 
 時間は夜中の2時になり、3時になり、4時になり、まだ走り続けているんですよ。さすがにこれは、もう見つけてもらえないかもしれないなと思いましたね。
 上級生たちが車で、「小野瀬があっちのほうで走ってるの見たぞ。いい加減、拾ったほうがいいんじゃないか」「いやいや、見失ってしまって、探してるんだよ」って。「お前一体、何キロ走ったんだ」というくらい、延々と走ってましたね。5時間くらい。
 でも、身体は何ともなかったですね。
 疲れ……なかったですよそのころはね。ほんとに疲れない。
 34、5歳までは、疲れというのはないんですね。
 だから、実際、疲れないんじゃない? どうなんだろう。お母さんはどうなの。

 

お母さん:
 その表現がやっぱりしっくりこなくて。疲れると思ってなかったし、お父さんと同じ。だからお父さんだけが特別じゃないよ。

 

お父さん:
 ね。若いときは、疲れという意味がわからない。疲れないんですよ。

 

お母さん:
 認めたくないっていうのは、……疲れてて……どういう表現なんだろうね、その表現というのが。

 

お父さん:
 ともかく、疲れてないでしょうということでね。
 疲れてません、大丈夫。

 

 

(2019年2月19日掲載)









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