第157回

【質問】
 消灯を過ぎてでも楽器を練習したい、本を読みたい、と思うのは気持ちが行き過ぎていますか?

 

 
【答え】
お父さん:
 楽器練習したい、本を読みたい、勉強したいと、やりたいことがあるのはすごくいいことですよ。だけど消灯には寝なきゃいけないし、ある程度セーブするというのはすごく大事な気がしますね。

 考えてみると、人って、欲との戦いのような気がします、いつも。欲。欲。
 いろんな欲があります。いろんな欲がありますね。その欲に負けると、人生を踏み外すんですよ。これは本当の話ですよ。
 で、その欲ですが、幼い欲と、大人の欲との2つがあります。
 この、楽器を練習したいとか本を読みたい、勉強したいというのは、これは悪くない欲ですよ。
 見当違いの欲、見当違いの使命感、見当違いの危機感、見当違いの、っていうのは困りますが、そうでなければ持っていい欲だとは思いますよ。
 「楽器を練習したい」というのは、「自分の知らない境地、もっと上手な境地に行きたい」とか、「本を読みたい」というのは「自分の知らない世界を知りたい」という、そういう欲なんですよね。

 で、誰でもそういう欲というのはあると思うでしょうけど、それが適度な場合と、行き過ぎてる場合というのがあるんです。
 みんなに共通して、ある大きな課題というのがあるんですね。
 「摂食障害から回復して、自分の力を試してみたい」という、これも欲なんですよね。

 ……少し話しがそれますが、アメリカインディアンの話。
 アメリカインディアンの娘がある谷で生まれて。その谷で育って、その谷で嫁いで、その谷で子供を育てて、とうとう死ぬまで、年老いて死ぬまで、その谷を一度も出なかった、という話があるんですけどね。
 その人は、いい人生だった、と。「私はこの谷で生まれてこの谷で一生を終えて死んでいく、こんな幸せな人生はない」って言って死んでいく。
 これすごく綺麗だなあと思うんですよ。
 この谷しか知らないで死んでいく。でもそれはすごく綺麗だなという感じがします。

 みんなが落とし物をする、なくしものをする。
 例えば山小屋と古吉野を行ったり来たりしている頃、「あ、忘れ物した。なくしものをした」って探しますよね。なかなかないな、と。
 さあ、その探しものはここにあるでしょうか、山小屋にあるでしょうか。どっちにあると思いますか。
 古吉野で探してると、山小屋にありそうな気がするんですよ。ここにはない気がする。
 で、山小屋に行って探すんですね。ところが山小屋に行って探し始めた途端に、あ、ここにはないな、古吉野だ、っていう感じがするんです。
 で、こっちに来ると山小屋だなっていうふうに思うんですね。
 そういう経験ないですか。探し物してるとき、今、自分が探してるところにはないような気がする。
 人はそういうふうに感じてしまうものなんです。
 今、目の前にはない気がする。

 さっきの話しの続きなんですけどね。
 みんなに共通する話っていうのは、
「治ったら自分の力を試してみたい、独り立ちして生活してみたい、はやく自立してみたい」っていうのが、共通の思いと言えば思いなんですけど。
「自分は自立する力は、まだ無いんじゃないですか。自分はちょっと、とてもまだやれません」
 って言う人は、まあやれるかなと思うんです。自立させてもね。
「お父さん、私は時間がもったいないので早く自立させてください」
 と言う人ほど、未完成だったりするんです。
 未完成な人ほど、実力に見合わない願望、欲求が多い。不思議なことに。

 で、これ不思議といえば不思議なんですけど、不思議じゃないといえば不思議じゃないんですね。
 間違った願望、間違った夢を見るんですよね。
 間違った認識をしてるんです、自分の力の認識をね。間違った人生の捉え方をしてるんですよ。
 「目の前には自分の欲しいものはない」って決めつけてるんですよね。次のところが見たくて見たくてしょうがない。早く自分で自立して新しい世界に行ってみたい。
 行ってみたら、何もないんですよ、そこには。
 目新しい、最初の一瞬だけはありますよ。まあ1か月もたないでしょうね、新鮮な感じは、1か月ももたない。
 あとは、「なんで?」っていう気持ちばかりになる。自分は運が悪い――仕事に恵まれなかった、会社に恵まれなかった、同僚に恵まれなかった、上司に恵まれない、そういう不満が出る。

 欲っていうのは、時として、そういうふうに、目をくらませるものですから。自分の力を正しく見させない。
 で、間違った方向の選択をするんですね。これがほとんどです。
 逆に、「自分には力がないんじゃないか」と言って自分をちゃんと認識してる人は、下手な欲をかきませんから、仕事でも失敗しないんですね。たとえ仕事に就いても、地道にやり通すし、意外に「ああ自分ってやれるんじゃないか」と思う。周りからも、高い評価を得られる。

 全然関係ないんですけど似たようなことで、ある自動車雑誌が、20人くらいのフェラーリオーナーを訪ねたことがあるんです。
 フェラーリって知ってます? 2千万、3千万の高級車です。まあお金持ちですよね、持ってる人は。
 20人くらい。その人がどういうふうなカーライフを送っているか、試しに写真を撮りに行った。
 驚いたんです。僕はその記事を読んでびっくりしました。
 過半数の人が、フェラーリに乗ってないんです。
 それどころかそのうち4,5台はカビだらけでぼろぼろになっていました。
 普段使わない駐車場の奥まったところに置いて、置きっぱなしにしていて、ここ半年そう言えば見ていないなと思ったら、カビだらけだった、とか。
「ここ1年見てません」「乗ってないんです」

 フェラーリを乗るときは、“フェラーリを買ったら素晴らしいカーライフが待っている”、そう思って夢見て、もしかして独身だったら、“フェラーリに乗ったらモテモテだろう”くらい思うんですね。
 ところが現実世界で乗っていたら、日常的には乗りにくいわけですよね。目立つし、乗りにくいし、ドライブにもあまり適していないし。まあまあフェラーリを乗るのに適した場所は少ししか無いですね。
 でもフェラーリを買ったら自分の生活がバラ色になると思って買っちゃう。現実には全然乗らない。普段はスバルの何かに乗ってる。
 フェラーリを乗り出す機会がない。それが半分以上というんです。

お母さん:
 私の昔の知り合いにもいるんだけど、建築屋さんで「フェラーリ買ったんだ」って言って、「お母ちゃん見せてあげようか」と言って。で、ガレージに行って、蓋してあったの見せてくれて、それで乗ってる気配がない。来る人、来る人に見せているだけ。

お父さん:
 乗っていく場所がなかったり、乗る機会がなかったりする。
 自分の欲だとかっていうのはね、ともするとそういうことなんですよね。
 それが他のことに向くと、人生を踏み外すまであるんです。
 その間違った欲と、間違ったイメージを持って、自分の将来を描いたり、今の自分を決めたりすると人生を間違います。

 考えてみたら毎日、大きな欲と中くらいの欲と小さい欲とがあるわけですよ。
 言ってみたら、その欲をどう処理するかで、その人それぞれの人生が決まってくる、その人それぞれの、その日の行動が決まってくると言っても大げさではないんですね。
 恋愛だって、言ってみたら、欲ですよね。
 相手の異性に求める。何をどのくらいどう求めるかという欲の深さ、欲の大きさ、あるいは期待の大きさと言ったらいいんでしょうかね。
 それと、現実。自分の実力とすりあわせて合うかどうかというところがあるわけですよ。だから、社会的に評価の高い素晴らしい男性がいたとしても、自分にその人に見合う実力が伴っていなければ、バランスが取れなくて、幸せなことにはならない。
 そういうこともあるというふうに思うんですよね。
 恋愛の欲も、自分に応じたものがある。

 逆に言うと、恋愛をして人生終わる人と、恋愛しないまま終わる人では、恋愛しないまま人生終わる人が圧倒的に多いんじゃないですかね。
 上手な恋愛を上手にするのは極めて難しい。誰でもできると思ってると、「私、恋愛してないと恥ずかしいかな」と思って、どうなのかという男と付き合って「私恋愛してます」と、誰かに言いたがる。それはやけどしますよ。縁がなかったなら、恋愛なんてしなくていいですよ、ということですよね。

 話が横道にそれていますが、本を読みたいとか、楽器を練習したい、その欲求を持つことは非常にいいことだけど、それを正しく適度に持つというとき、時間を取りたくて、お風呂に4日も5日も1週間も10日も1か月も入らない、下手したら半年入っていなくてみんなが私を避けて通っていく、そんなことになったら問題なんじゃないか。
 1日おきくらいにはお風呂に入って欲しいし、毎日、入ってほしいのでね。それも合わせての人生ですよと。

 たまに、物凄い面白い本のピークで、「ああ、ここで……!」という――そうそう、僕は電車に乗ってよく本を読んでいたとき、ピーク、泣き所が来るというのがあるじゃない。泣き所が電車の中、これ最悪ですよね。電車のなかでぼろぼろ泣いていたらおかしいし。
 そういうときは、(まずいなこれ、くるぞ)と思ったら読むのやめちゃいますよね。
 それで、誰に見られても笑われない、自分の部屋に入ってからじっくり読むとかね。

 いい本になると最後まで読みたくて風呂をパスして読み切っちゃおうというのもあるかもしれないけど、逆に本当にいい本になると、残りページ数が少なくなるともったいなくて、(ああ……やっぱり読むのやめちゃおう)みたいな。
 これで最後まで行っちゃったらもう読み終わっちゃうんだ、みたいなね。
 僕は『赤と黒』がそうでしたね。バーっと読んでいて、最後の20分の1くらい読むのに1か月位かけてしまいました。終わりたくなくてね。
 それから『吉里吉里人』なんかも読み終わりたくない本の最高峰ですよね。24時間であれは読み切るんですけど。そういうのもあります。
 そういうときは風呂に行っちゃえばいいんでしょうね。ちょっと読んで、惜しいけど、お風呂行っちゃおう、と。
 いろんな楽しみ方がありますけど、少なくとも時間を確保するため、お風呂には入りましょう、欲望も適度に持ちましょうというね。
 願望も欲望もね。
 みんなもいろんな欲望あるでしょうけどね。

 だけど、どうでしょう、プランが作れない、意欲がわかないというより、読みたい本があるとか、練習したい曲があるだとか、こういうプランがあるというのは何よりかにより素晴らしいことだと思いますよ。意欲がないですっていうよりは遥かに素晴らしい状態なのでね、こういう素晴らしい状態は、少ししばらくキープしてほしいなと思います。

 で、若いときというのは、いろんな、こういうことに対して、本に対しても欲求のすごく強いときで、本を読んでもすごくみずみずしく吸収できる時期なんだろうと思うんですね。こういう時期にいかにたくさんいい本を読むかで、その人の心の深さ、幅が決まってくるんじゃないか、そう思いますので、頑張っていい本を読んでください。
 なんか回りくどい、長い話をしましたが、消灯後までは読むのやめましょうよって、ただそれを言いたいだけでした。わかってもらえたかな。

 

 

(2019年2月15日掲載)









第66回「自己否定について」
第67回「友達が欲しい人、そうでない人」
第68回「未来を信じる」
第69回「山を登ると」
第70回「リーダーをすると苦しくさせる」
第71回「自分から人を好きになる」
第72回「小さいころからの恐怖心」
第73回「お姉さんのような存在を」
第74回「作業に対して気持ちの落差が激しい」
第75回「大きな希望を持つとき①」
第76回「大きな希望を持つとき②」
第77回「夢について・集中力について」
第78回「やるべきことをできていなくて苦しい」
第79回「やるべきことをできていなくて苦しい②」
第80回「真面目さは何のために」
第81回「高いプライドをつくるには」
第82回「番外編:そうだ、お母さんにきいてみよう!」
第83回「相談、確認が多いことについて」
第84回「自信を持つ」
第85回「間の良さ、間の悪さ」
第86回「過去を美化してしまう」
第87回「統合力を高めるには」
第88回「見張られているような不安」
第89回「どうして人間だけに気持ちが必要なのか」
第90回「休日になるとやる気がなくなってしまう」
第91回「低気圧」
第92回「どうして動物を飼うの?」
第93回「自分を褒める話をするには」
第94回「眠れない」
第95回「ふいに恥ずかしくなる」
第96回「躾について」
第97回「壁をなくしてオープンになるには」
第98回「自分がオーラのある人になるには」
第99回「私のストレスは何?」
第100回「社会性を身につける」
第101回「依存を切り離す期間は? その後はどう変わる?」
第102回「依存を切り離すことについて②」
第103回「会話が理解できない・生きる意味」
第104回「何者にもなれないのでは、という不安」
第105回「一緒に長時間いられない」
第106回「人の気持ちを汲めない」
第107回「リーダーとしてちゃんと動くには」
第108回「仕事への情熱と、興味があること」
第109回「日々の習慣を持つ」
第110回「自分のアスペルガー的な要素について」
第111回「外見について」
第112回「芸術、情緒、愛情 心の深さ」
第113回「なぜ風俗業は禁止にされないのか」
第114回「生き難さを抱えていなかったら、どんな将来の夢を」
第115回「健全な家庭なら自我は育つのか」
第116回「自我を育てる」
第117回「説明が理解できない」
第118回「好きな花①」
第119回「好きな花②」
第120回「血を連想させる単語を聞くと」
第121回「社会性と、基本的な姿勢」
第122回「深い関係をとって生きる」
第123回「ノルマ感、義務感が強い」
第124回「野菜の収穫基準がわからなくなる」
第125回「自分を楽しませること、幸せに過ごさせることが難しい」
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第129回「個人プレイからチームプレイへ」
第130回「すべてのことを高いレベルでやりたい」
第131回「なぜ、痩せているほうが良いと思われるのですか?」
第132回「予定が変わると、気持ちがもやもやする」
第133回「楽観主義者と悲観主義者の境界線」
第134回「上品に、笑顔で、美しく」
第135回「続『上品に、笑顔で、美しく』」
第136回「嘘をつけない」
第137回「お父さんが怖い 前編」
第138回「お父さんが怖い 後編」
第139回「見事やで」
第140回「頼まれごとが不安・時間に遅れる①」
第141回「頼まれごとが不安・時間に遅れる②」
第142回「頼まれごとが不安・時間に遅れる③」
第143回「大きな声を出すこと」
第144回「時間の使い方」
第145回「お腹がすく」
第146回「本を読む時、第三者の視点になってしまう」
第147回「罰ゲームの答えとユーモア」
第148回「アイデアが出ないこと」
第149回「気持ちと身体の助走」
第150回「花や動物を可愛いと思えない」
第151回「美味しいセロリ」
第152回「尊敬している人といると、あがってしまう」
第153回「考え事がやめられない」
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第157回「楽器を練習したい、本を読みたい」
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第164回「自尊心」
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第181回「自分に疑心暗鬼になって、不安に陥ってしまうのはなぜ」
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第186回「気持ちの切り替えが、うまくできない」
第187回「米ぬかぼかし作り」
第188回「評価すること」
第189回「堂々とした人に怯えてしまう ①」
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第195回「次のミーティングは、いつですか?」
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第210回「期待について その①」
第211回「期待について その②」
第212回「アウトプットで生きる」
第213回「キャパシティを大きくしたい」
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第216回「我欲と、自分を大切にすることの違い」
第217回「声を前に出して歌うには」
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第220回「握力について」
第221回「喜び合うための全力」

第1回から第65回までの「お父さんにきいてみよう」は、
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