第152回「尊敬している人といると、あがってしまう」

【質問】
 尊敬している人といると、あがってしまうことについて。
 以前、質問箱に、
「尊敬している人の前に出ると、自分の浅さが恥ずかしくなってしまう」
 という内容の質問が入っていたことがありました。
 お父さんはその質問に対して、
「その気持ちは間違っていない。尊敬している人と同じ土俵に乗った、ということだから良いことだと思っていい」
 とおっしゃっていました。
 私にも、なのはなの中で尊敬している人がいます。
 そのことは良いのですが、その人と一緒に作業をする、という状況になると緊張してしまい、とても失敗が多くなります。あがってしまう、という感じです。
 
 いちばん、やりにくさを感じてしまうのが、自分が作業のリーダーで、尊敬している人がその作業のメンバー、というときです。
 指示を出しにくいと思ってしまいます。指示を出そうとしたとき、喉元で言葉が引っかかってしまい、ストレートに出てきません。
 

 こういうとき、どう考えて、どうしていくべきですか。
 あがったり、失敗しなくなる方法はありますか。
 

 

【答え】
お父さん:
 なるほど。自分が作業のリーダーになって、ひゅっとメンバーを見たら総理大臣がそこにいて鍬を持っている。そのとなりに町長がいる……。それはやりにくいね。
 こういうときどうしていくか。
 うん、どうだろうね……。
 あのね。僕も今まで、何ていうかな、難しいなあと思った場面とかって、あるんですよね。
 例えば、全然、関係がないかもしれませんけどね、“ちり紙交換”ってあるでしょう? ちり紙交換。知らない? 知らない。あら?! 知らない。ちり紙交換知ってる人、手を挙げて。ああ、今、来なくなったな。
 あのね、トラックで、
「ちり紙交換でございます。ご家庭内でご不用の新聞紙がございましたら、トイレットペーパーと交換致します。御用の方はお声をかけてください」
 ってマイクで声をかけながらトラックで走ります。「はい」って言う人がいると、車を停めて、新聞をもらいちり紙を渡して、新聞を集めるのね。

 最近、来なくなりましたが、昔はちり紙交換屋さんが新聞紙を集めてたんですよ。

 僕は学生のとき、ちり紙交換のバイトをやったことがあるんです。これは、新聞紙を何キロ集めてきたかでもらえるお金が決まるという出来高払い。
 一番、最初に乗ったときにね、恥ずかしいわけですよね。
 なんて言ったら良いかは、だいたいわかってる。マイクでスピーカーから大きな声を出して言うわけですけど、恥ずかしいな……と、躊躇する気持ちがあります。
 そういうとき、どう考えるかですよ。
 恥ずかしそうにね、
「今日、わたくし、初めてのちり紙交換となっております」
 って言えないでしょ。誰もわかってくれないから、いかにもありきたりの、そのへんのちり紙交換の1人ですよ、というふりを装ったほうが、向こうも気分がいいだろうし、こっちも気が楽かなということで、なりきるんですよね。ちり紙交換の人になりきって、もう、これもう5年やってるけどさ、とか10年やってるんだけどさっていう顔をして、慣れたような物言いでね。演技ですよ。実はちり紙交換じゃないので。初めてなのでね。学生だからずっとやってるつもりもなくて、たまたま日曜だから来たんであって。だけど、ずっとやってるふりをする。それで集めて歩くんですよね。
 

 あのね。「あんた初めてでしょ!」って2人目の人に言われた。エッ、ばれたか、と。
「あんた車のスピードが速すぎる。あんたこっちを見てない」
 ええって驚きました。鋭いなと思いました。
 だけど、昼過ぎに別のおばちゃんからバラバラの新聞を渡されて、「これ束ねてないから」「良いですよ」と僕が束ねて、キュキュキュキュキュ……ッと手早く縛る。僕、今でも新聞を束ねるの得意なんですよ。それやってたから。
 その人から、「さすがプロは違うわね。新聞紙まとめるのうまいわ」って言われてね。
 半日で、そうですよ。
 朝方は「あんた初めてでしょ」って言われちゃったけど、昼過ぎにはベテラン。
 思い込み、大切ですよ。
 

 それとか取材で、初めて取材でインタビューするとき。これもね、恥ずかしいなあ……みたいなね。
 僕ね、人生で1人目の取材ね、たまたま同じ仕事場にいた先輩ライターの前でアポイントメントをとったんです。取材予定の人が、仕事先が渋谷だと言う。僕は、わからないわけです。どんなとこで待ち合わせしていいか。渋谷と聞いて頭がハッと舞い上がって、
「じゃあ渋谷のハチ公前で」
 それを聞いていた先輩が、
「お前馬鹿か、ハチ公前みたいなところで待ち合わせする記者いないぞ。お上りさんのデートじゃないんだから。人がガヤガヤする中で、取材する人とインタビュー受ける人が待ち合わせなんて……、お前、なんてとこで待ち合わせのアポとったんだ?!」
 って言われて。ガーン。それもそうだ。
「待ち合わせ場所を、ある程度想定してから電話しろよ」
 って。それもそうだ。準備不足。
 初めてですごい緊張するんですよ。何が必要かと言ったら、「もう自分は取材慣れてます。ベテランです」という雰囲気ですね。
 僕は初めて自分の名刺作って、初めてなんだけども、初めてじゃないですっていう雰囲気を出す。
 その人は部長クラスだったと思うけど、これが上場企業の社長で、広報の課長が横にいるなんて言ったら、もうやりにくくてしょうがないです。全然、まだ慣れてないのにね。だけど心の中で脂汗をかきながら、前からやってるものですけど、講談社の記者ですけど、って。実は講談社の社員でもない、ただの月刊誌の記者ですからね。
 まあね、なりきるっていうことはすごく大事ですよ。
 

 そういうときとかね、あと……PTA会長をやったとき、普通のPTA会長と違って、そのときにはね、あの……東京大学付属の中等学校なんですよね。中高一貫校のPTA会長なんですよ。
 それで、100周年記念行事がありました。
 僕の隣りに座ってるのは、東大の学長ですよ。中野区長とかね。
 それで、学長の次に僕が挨拶ですよ。入場者は1300人、中野サンプラザホール。
 その年は100周年記念事業があるってわかってたから、僕の周りのPTAの役員はみんな、急に、転勤が決まったとかで、誰もPTA会長をやる人がいなくなっちゃって、その前に別な役員をやってた僕が会長になったんですけどね。
 ああ、この記念イベントで挨拶するのが嫌で、みんなPTA会長をやりたくなかったんだな、と思いました。それで、僕がなっちゃったんですけど、あのときは緊張しましたね。
 そのとき僕、思ったんだよね、
(来場者のみんなは、小野瀬というこの僕に何かを期待してるわけでもないし、僕の挨拶を聞きたいわけじゃなくて、ただ、東大付属学校のPTA会長の挨拶を聞きたいだけだ)
 っていうふうにね。だから僕は、自分からちょっと離れて、まあ期待されるPTA会長の行動を取ればいいな、と。
 役だよね、言ってみたらね。「自分のパーソナリティを出そう」じゃなくて。
 みんなが納得するような、それを演じるだけだ、っていうふうに思ったら、そしたら気が楽になって、言えるわけですよね。
 

 僕の同じPTAの副会長だとか、書紀だとか会計だとかいるでしょう。まあほぼ女性なんです。男性も少しいましたけど。みんな、「心配で心配で、冷汗かいて見てた」って言う。普段、僕は役員会議でふざけてるんですよ。
「小野瀬さんは、あんな大舞台で挨拶できないんじゃないか」みたいな。それで失敗するんじゃないかと心配で「自分の息子を見守るように私、見てたのよ」って言うんだ、その人達がね。
 そんな感じだけど、まあそこそこできたんだけどね。
 

 要は、役をやるということがすごく大事で、役をやりながら、イコールそれが今度は次の自分のパーソナリティになっていく。というところがあるんですよ。
 で、多分、僕はもうなのはなファミリーを15年やってきて、4月から16年目になるんですよ。なのはなファミリーのお父さんと呼ばれてから15年。僕はずっと役作り――なのはなファミリーのお父さんの役作り――をしているので、多分、自分の個人的なキャラクターというのが、なのはなのお父さん風に変わってきていると思いますよね。
 元々の僕の本当のキャラクターとかっていうのもありますが、動くんです、揺れるんです、キャラクターというのはね。いろいろ役をやればやるほど、その役に近づいていく。そういうふうに思ってくださいよ。
 

 ところが、みんなは、普通の人は、「自分」というキャラクター、個性があって、「私はこんな人だから」って言ってるけど、それが何かのポジションにあって、何かの役をやっていると、その役のキャラクターになっていくんです。誰もそうだ。だから、みんなも、「なのはなファミリーの子供たち」というキャラクターを今、現にやってるんです。
 やってるんですけど、それを意識しないでやってる人と、意識してやってる人がいますね。こういうキャラクターになろうと思って生活している人は、どんどんそのキャラクターになっていくという側面がある、と僕は思いますね。
 例えば畑のリーダーでも、リーダーになった人は、リーダーになった瞬間のその人のキャラクターと、畑のリーダーで半年間経ったあとのその人のキャラクターとは、多分違ってるはずですよ。半年で。
 リーダーっぽくなってるはずです。誰かに見られたり、誰かに指揮したり、畑の野菜を作る責任を持って見たり、みんなに動いてもらったりしてるうちに、「私がこう頼んだらこんなふうに動いてもらう人になろう」っていうね。「私が、スタッフなり、お父さんなりお母さんなりに相談したら、それをちゃんと聞いてもらえる人になろう」という責任と、思い込みと、意志を持って動こうとしていると、そういうキャラクターになっていくんですよ。
 それが、誰かを見て動けばいいやと思ってる人は、誰かを見て動くキャラクターになっていく。そのままである、っていうね。
 

 役とか思い込みが、自分のキャラクターを少しずつ右にも左にも変化させていく。そういうことはあると考えると、この人は、そういうときほど良いチャンスだなと。やりにくいときほど、新しい自分のキャラクターを付け加えるチャンスだというふうに思う。
 これなんか特に、指示を出しにくいときに、バンと指示を出す。
『喉元で言葉が引っかかる、ストレートに言葉が出てこない』これなんか、中野サンプラザホールで1300人の聴衆を前に、東大学長のとなりで、普通なら言葉は出てきませんよ。「ウッ」ってなる。
 だけどそうじゃない。自分をやるんじゃなくて、PTA会長っぽく役を演じたら、みんなが納得するし喜んでくれるだろう。喜んでもらうために、緊張を見せない。堂々として。僕は小心者ですからね、そういうところで堂々としたくないけど、そういう自分はちょっと横に置いておいて。堂々と、大きな声で、ゆっくり喋って、というのを演じる。

 この人も演じたら良いんだよね、堂々とね。そういうときほど自分のキャラクターを広げていくチャンスというふうに思ったらいい。一種のゲームみたいに思ったら良いんじゃないでしょうかね。ゲームですよ、ゲーム。
 

 だから、それを喜んで、仮初にもリーダーをやらせてもらってるんですから、ゲームで、新しいキャラクターをやるチャンスと思ったら、ラッキーというものですよね。
 そうしてチャンスと思って、自分の、新しいキャラクターを広げていったら良いんじゃないでしょうか。

 

 

(2019年1月29日掲載)









第66回「自己否定について」
第67回「友達が欲しい人、そうでない人」
第68回「未来を信じる」
第69回「山を登ると」
第70回「リーダーをすると苦しくさせる」
第71回「自分から人を好きになる」
第72回「小さいころからの恐怖心」
第73回「お姉さんのような存在を」
第74回「作業に対して気持ちの落差が激しい」
第75回「大きな希望を持つとき①」
第76回「大きな希望を持つとき②」
第77回「夢について・集中力について」
第78回「やるべきことをできていなくて苦しい」
第79回「やるべきことをできていなくて苦しい②」
第80回「真面目さは何のために」
第81回「高いプライドをつくるには」
第82回「番外編:そうだ、お母さんにきいてみよう!」
第83回「相談、確認が多いことについて」
第84回「自信を持つ」
第85回「間の良さ、間の悪さ」
第86回「過去を美化してしまう」
第87回「統合力を高めるには」
第88回「見張られているような不安」
第89回「どうして人間だけに気持ちが必要なのか」
第90回「休日になるとやる気がなくなってしまう」
第91回「低気圧」
第92回「どうして動物を飼うの?」
第93回「自分を褒める話をするには」
第94回「眠れない」
第95回「ふいに恥ずかしくなる」
第96回「躾について」
第97回「壁をなくしてオープンになるには」
第98回「自分がオーラのある人になるには」
第99回「私のストレスは何?」
第100回「社会性を身につける」
第101回「依存を切り離す期間は? その後はどう変わる?」
第102回「依存を切り離すことについて②」
第103回「会話が理解できない・生きる意味」
第104回「何者にもなれないのでは、という不安」
第105回「一緒に長時間いられない」
第106回「人の気持ちを汲めない」
第107回「リーダーとしてちゃんと動くには」
第108回「仕事への情熱と、興味があること」
第109回「日々の習慣を持つ」
第110回「自分のアスペルガー的な要素について」
第111回「外見について」
第112回「芸術、情緒、愛情 心の深さ」
第113回「なぜ風俗業は禁止にされないのか」
第114回「生き難さを抱えていなかったら、どんな将来の夢を」
第115回「健全な家庭なら自我は育つのか」
第116回「自我を育てる」
第117回「説明が理解できない」
第118回「好きな花①」
第119回「好きな花②」
第120回「血を連想させる単語を聞くと」
第121回「社会性と、基本的な姿勢」
第122回「深い関係をとって生きる」
第123回「ノルマ感、義務感が強い」
第124回「野菜の収穫基準がわからなくなる」
第125回「自分を楽しませること、幸せに過ごさせることが難しい」
第126回「向上心を持てないこと」
第127回「アーティスティックな心」
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第129回「個人プレイからチームプレイへ」
第130回「すべてのことを高いレベルでやりたい」
第131回「なぜ、痩せているほうが良いと思われるのですか?」
第132回「予定が変わると、気持ちがもやもやする」
第133回「楽観主義者と悲観主義者の境界線」
第134回「上品に、笑顔で、美しく」
第135回「続『上品に、笑顔で、美しく』」
第136回「嘘をつけない」
第137回「お父さんが怖い 前編」
第138回「お父さんが怖い 後編」
第139回「見事やで」
第140回「頼まれごとが不安・時間に遅れる①」
第141回「頼まれごとが不安・時間に遅れる②」
第142回「頼まれごとが不安・時間に遅れる③」
第143回「大きな声を出すこと」
第144回「時間の使い方」
第145回「お腹がすく」
第146回「本を読む時、第三者の視点になってしまう」
第147回「罰ゲームの答えとユーモア」
第148回「アイデアが出ないこと」
第149回「気持ちと身体の助走」
第150回「花や動物を可愛いと思えない」
第151回「美味しいセロリ」
第152回「尊敬している人といると、あがってしまう」
第153回「考え事がやめられない」
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第155回「寝汗をかかなくなった」
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第157回「楽器を練習したい、本を読みたい」
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第164回「自尊心」
第165回「自分の身体のサイズ感をとらえるのが苦手」
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第168回「野菜の調子が悪いと、自己否定してしまう」
第169回「好きな気持ちと、誤解をされることへの不安について」
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第175回「テンション」
第176回「目を見ること、見られること」
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第180回「時間の使い方と焦りの気持ち」
第181回「自分に疑心暗鬼になって、不安に陥ってしまうのはなぜ」
第182回「有志の募集に手を挙げづらい」
第183回「緻密に」
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第185回「体型に対するこだわり」
第186回「気持ちの切り替えが、うまくできない」
第187回「米ぬかぼかし作り」
第188回「評価すること」
第189回「堂々とした人に怯えてしまう ①」
第190回「堂々とした人に怯えてしまう ②」
第191回「耳が良くないこと」
第192回「限界」
第193回「物を簡単に捨てることができてしまう」
第194回「整理整頓、片付けができない」
第195回「次のミーティングは、いつですか?」
第196回「整理が過ぎるのは症状ですか」
第197回「人をもっと理解したいということについて」
第198回「体育の授業が怖くて、さぼっていたことについて」
第199回「完璧が怖い」
第200回「やるべきことに追われてしまいがちな気持ちについて」
第201回「正面から受け取りすぎることについて」
第202回「手持ち無沙汰にさせることが怖い」
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第204回「魚の食べ方について」
第205回「ステージで間違いがあったときは」
第206回「作業で焦ってしまう」
第207回「調理されて食べられる魚はかわいそう?」
第208回「頑張ろうとすることに疲れた」
第209回「自己愛性パーソナリティ」
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第211回「期待について その②」
第212回「アウトプットで生きる」
第213回「キャパシティを大きくしたい」
第214回「コミュニケーション」
第215回「秋が寂しい」
第216回「我欲と、自分を大切にすることの違い」
第217回「声を前に出して歌うには」
第218回「できる気がしない、と感じてしまう」
第219回「苦手なことをしている時間を苦痛に感じてしまう」
第220回「握力について」
第221回「喜び合うための全力」

第1回から第65回までの「お父さんにきいてみよう」は、
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