第148回「アイデアが出ないこと」

【質問】
 アイデアが出ないこと

 アイデアが出ません。何かの会とかでチームに分かれて何かを作るとき、まったくアイデアが出ません。成長したら、出るようになるとかいうことでもないような気がします。アイデアを出して、何かを作るということが、苦しいことでしかないです。
 苦しんで、お父さんとか他の人みたいに何かが生み出せればいいですが、ただ苦しいというだけで、何も生み出せません。ものすごく価値の低い人間だと思えます。とにかく、イベントが苦しいという思いしかないです。嫌だ、やりたくないという思いに埋め尽くされます。
 何も生み出せないことを、どう思って、どうしたらいいですか。どれくらい罪なことだと思うべきですか。

・自分の答え
 アイデアが出せなくて、何かを出さなければいけなくて、何かを考え出すことが苦しみでしかなくて、ふさぎこんだり逃げるより、アイデアが出せなくてもいいことにして、自分にできることをするのに徹する。罪かもしれないが、罪だと思うとふさぎ込むか逃げるかしかないので、罪にあまり思わない。

 

【答え】
お父さん:
 これね、まあまあ良い質問ですよ。
 同じような苦しみ――苦しみというか、アイデアが出せないという悩みがある人、結構いると思いますよ。
 それはそうでしょう。アイデアなんか、誰にとっても、ちょっとやそっとで出せるものじゃないですよ。
 じゃあ聞きますけど、アーティストはどうやって自分の作品を生み出すかということを考えてみてください。
 アーティストはどうやって生み出すか。
 パターンがあるんですよ。アイデアを生み出すための決まりというか、手順が――。
 例えば。陶芸作家になる場合、過去の陶芸作品の名作を、ひとつずつ丹念に、再現するんです。同じものを作るんです。真似です。真似するんです。色も形もね。そっくりに作るんです。
 で、次々に、これができたら次の作品、これができたら次の、と。1つ作るのも大変ですよ。ものすごく難しいですよ。
 そうやって作っていって、だから真似して同じものを作ることも簡単じゃないですから、何年もかかるわけですよ。何年も何年もかかって。作るものは真似ですから、自分の作品とは言わない。売っちゃいけないんですよ、練習作ですよ。贋作なんですから。

 僕らはこないだ、書き初めをやりました。書道家がアーティストだとするなら、書道家になるために、書道をやるために、僕は何をしろと言ってます? ここでは顔真卿を真似ろと言ってるでしょう。真似る。自分の字を書くな、と。
「私はこういう字が書きたい。私はこういう字のアイデアを持ってます」
 そんなの、うるさいわい、そんなアイデアは屁のようなもので、顔真卿を真似をしろと言ってるでしょ。
 全てのアートは真似から始まるんですよ。全てのアイデアも真似から始まると言っても良いんじゃないかな、と僕は思いますよ。
 真似ですよ。究極の、極端、完全によその人の真似ができる人。誰の真似でも、いくらでもできるという人が、初めて自分のオリジナルのアイデアを出そうかなと言うくらいのもんでね。
 真似も何もしないのに、オリジナルで何か作り出せる、アイデアが出せるということは、ちょっと考えにくいですね。

 昔、日本ではまだイラストレーターなんていう職業が無かった頃、横尾忠則がイラストレーターの最初の頃の第一人者でした。横尾忠則はロートレックとかそういう人が描いた有名な作品を見て、何色使って、何色が全体の面積の何パーセントを占めているか、それを細かく区分けして、面積を計算して、青が56パーセント、赤が32パーセント、黄色が何パーセント、とパーセンテージを出して、同じ色の比率で自分の絵を描いてみたり、同じ色の配分で絵を描いたりしてます。
 色のバランス、重さ、それを真似して描いたり、計算して、色の配分、面積を真似したりして、良いポスターの練習をした。
 真似なんですよ。真似をしきる、っていうね。そういうプロセスを経て、いいものがどうやって生み出されているかを知ってから、そのあと初めてアイデアを出すんですよね。
 ということなのでね、ゼロから生み出そうといったって、いきなりいろんなアイデアは出ないと思いますね。
 で、こういうふうに、「アイデアが出ない、何かいいアイデア出さなきゃ」と言う人ほど、何かオリジナルでゼロから生み出そうと、考えて、考えて、何も出なくて苦しんで、ああ駄目だって自分で卑下しちゃうんですね。

 極端なこと言えば、この、なのはなファミリーの中だけで終るもの、お遊び、トライアル、ゲーム的なものなんかだったらね、何かの真似をしちゃって構わないわけですよ。外に売る作品を作るわけじゃないですからね。
 だから、わかりやすく言うなら、自分はアイデアが出せるという人は、いろんな真似の上手な人と言うこともできます。
 もっと言うと、いろんなものを見て、いろんなものを聞いて、自分の中にそれらをあとで使えるようにクリップして、いっぱい溜め込んでおく。溜め込んである。だから、いざというときにそのアイデアの中から出して、それをデフォルメして、今ここで使えるのはこれ、っていう、そういうクリップがいっぱい頭の中に入ってる。そんなふうにしておけばいいということです。
 で、自分が見た、例えば絵柄でも図柄でもいいけど、過去の記憶にあるやつをそっくりに描こうと思っても、そっくりにならないですからね。いくらそっくりに描こうと思ったって、まるで自分のオリジナルにしかならないのでね。何の問題もないと言うかね。

 それと、真面目な人は、ちゃんとやろうとするんですよ。ちゃんとやろうとしすぎたら、つまんないんですよね。
 この人に、幼稚園の年長さんの塗り絵をやってみて、と言ってクレヨン出したらね、きっちり塗るでしょうね。きっちり塗る。塗り絵をきっちり描いて、意味があるか。ほとんど意味がないんですよ。絵の価値としては、ほとんど意味がない。

 もう20年か30年くらい前、有名なアーティストが、年賀ハガキだかの描き方をやってるのを見たことがあります。
 それはもう、いかに汚い年賀ハガキを描くか、という講座そのものでしたね。「赤鉛筆を使いましょう」。チャチャチャ。で、手でゴシゴシってやりましょう、みたいなね。汚え、っていうね。
 考えてご覧。年賀ハガキ見て、「あけましておめでとうございます」という奇麗に印刷された葉書がたくさんある中で、赤鉛筆でグシャグシャっていうの見たら、何これ、手描き感たっぷり……。そうなるわな。なるよね。
 どんなに奇麗に印刷して、奇麗に判子をペタペタ押したって、それは面白くない。みんな同じでね。そこに、汚えなこれ、汚いけど味があるな、っていうことになる。
 それで良いんですよ。それで。
 きちんとやろうとしない。
 きちんとやろうとしない。アイデアもきちんと出そうとしない。

 で、こういう人は前にも言ったけど、ユーモアが大事、ユーモアのセンスが大事なんですね。
 だから何ていうか、まあ、真ん真ん中の大正解で、どんとすごい作品を作るとか、どすごいアイデアを作るというよりかは、ちょっと外したユーモアの線で、お笑いの線で行くとかね。ちょっと外した、何とかの線で行くとか、考える。
 ちょっとそういう遊び心で攻めるというようなことで行くと、肩の力が抜けて、いいアイデアが出せるんじゃないかなと、そんなふうに思いますね。
 
 あとね、しばらくの間こういうスタンスで行けば良いんです。アイデアを出さなきゃいけないというとき、わざと外す、っていうね。わざと外すというスタンスですよ。
 もしも、TV番組でクイズ番組だったとすると、真面目に正解を出そうとするキャラクターのタレントが並んでいたとすると、多分テレビ局は、それじゃ成立しないから、野々村真みたいなのを用意するはずですよね。
 あれ何の番組だっけかな。ふしぎ発見、かな。ふしぎ発見で、野々村真という男がいるんですよ。それはとんでもない、必ずとんでもない答えを書くんですよね。ありえないだろうそれ、っていうね。
 だけどその人がいることで、真面目に答える人のつまんなさが解消される。とんでもない答えを書くからね。そういう人が必要なんですよ。
 だから、とんでもないアイデアを出す人に自分はなろうと思ったら、すごく気が楽ですよ。
 そういうふうに考えるべきなんじゃないかな。

 何かアイデアを出す機会無いかな、わざと、とんでもない、ありえないだろうということを言ってやろう、すると楽しみになってきますよ。
 良いアイデアを出そうと思うと逃げたくなるけど、皆を笑かすアイデアだけ出そう、みたいなことでいいんです。
 他のチームは真面目にやるだろうからうちのチームは笑かしてしまおう、そういうふうになるんですよ。そうやってブービー賞狙いにする。リラックスする。究極のところ人生はゲームですから。楽しんだもの勝ちですよ。
 ということでね、アイデアが出ないということでしたね。

 僕がこれだけ、この人に対して語れるなと思うのは、何を隠そう、僕はずっとね、産まれてから、16歳くらいまで、何のアイデアも出せない人でした。と思います。自分で振り返ってみてね。
 堅物で、真面目なのは良いんだけど何のアイデアも出ない。
 16まで、そんな苦しみがあったな、っていうことを思い出します。

 あのね、今だから言いますけどね。
 僕ねえ、集団生活って難しいなと思ったのは、小学校1年のときですよ。
 僕ね、幼稚園に行ったことないんですよ。それで、初めて学校というところに行った。しかも越境入学で、バスに乗って行ってるわけですよ。
 それで、一番最初の給食の時間ですね。カレーだったんですよ。
(カレーだ)と思って、(嬉しいな、カレー食べられるんだ)と思ってね。自分の前に並んだカレーを思わず食べた。
 ふと気がついたらみんな食べてないんですよ。
 なんで? そしたらみんな、待っていて。「いただきます」してから食べるんですね。
 小学校1年生の最初の給食で、僕は知らないものですから、はっと気がついて、(まずい)と思って。隣の人はこうやって嫌な顔して見てるしね。
 ポケット見たら、ハンカチを母親が入れてくれていた。そういうこともあるだろうと思ったんでしょうね。そのハンカチで、そっと匙を拭いて、置いて、知らん顔して、いただきますまで待っていた。
 恐ろしいな、誰にも聞いてなかったよ、と思って。
 それから、いただきますと言って食べたんですけどね。
 最初、みんなが食べてる中で1人だけ食べてるのを知った時の恐怖って、すごいですよ。自分だけ外れてる……卑しいわけじゃないんだけど……と思って。

 その後しばらく経って、また、アチャーと思ったわけです。何日か経って。
 今度はね。母親が、僕に何も言わないんですよね。
 もしかして、母親が僕のポケットから、ハンカチを出して、あっと気がついてね。それを考えたら……「ああ…」母親に、勘違いされたんじゃないか……わかるでしょ? なんか、僕がトイレで失敗でもしたのかなっていう勘違い。
 絶対、勘違いされたなって。母親は僕になんにも言わない訳ですからね。「何だったんだ、あのカレーは」って言わない。それは何日も経ってから、今更、僕から言い出しにくい。「あのハンカチについているのはカレーだったんだよ」って言えない。
 人生って難しいなと思いましたね。小学校1年生のときにね。
 だからそういうのとか、アイデアが出ないって、聞くと、すごくグサッと来るんですよね。そういえば僕の人生ってそういうことばっかりだった、みたいなね。

 

 

(2019年1月15日掲載)









第66回「自己否定について」
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第72回「小さいころからの恐怖心」
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第1回から第65回までの「お父さんにきいてみよう」は、
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