第143回「大きな声を出すこと」

【質問】
 私は毎回ではないのですが、大きな声を出そうとしたときに締め付けられるような思いになってしまったり、苦しくなってしまいます。それは、大きな声を出したら誰かを責めてしまっているようで、自分が相手を傷つけてしまうのではないか、と思ってしまうからでしょうか。

 

 
【答え】
お父さん:
 あのね、50メートル走を全力で走るってみんな意外と難しいんですよ。力を出し切ると、身体がバラバラになってしまうんじゃないか、という感じね。
 それと同じように、大きな声を出すと、なんかこう喉が壊れて、ワーッて大きな声で言うと喉仏がゴボって出てきたりね……それはないでしょうけどね。なんか嫌がるものなんです。
 

 で、実際に僕は、大卒、新卒で企業に入ったときに、いくつかの会社の合同の研修会みたいなのを受けたことがあります。
 まあまあ、昔、「地獄の特訓」みたいなのがあったり、いろんな研修がありますけど、営業マンとか、新しい新卒の男性社員を鍛えるための、何と言ったら良いのか、合宿みたいなのがあるんですよ。そこでいろんなことをさせられるんですね。
 その中にいくつかこういう要素があって、うちでも発声練習でやっていますけど、運動場の両端に向かい合って立って、お互いに大声で叫ぶというプログラムがあった。自分の自己紹介をするとか、大きな声で、怒鳴り合う、ということです。
 それで、見てみると、大きな声を出せる人は、10人中、2人くらいですね。もちろん僕は最初から出せましたけど、8人はむせちゃったり、大きな声にならなかったりで、声出せないです。それは、慣れてないからというのもあるでしょうけど、そもそも大声が出せないんです。今の若い人もかなりの人は、そうじゃないでしょうか。大声というのができないんですよ。
 男子高校生とかで、応援団ってあるでしょう。「フレー、フレー」みたいな。大学生でもいいですけど。ああいう応援団みたいな、大きな声をすぐに出せる人というのは、わりかし少ないんじゃないでしょうかね。
 

 これが、僕の産まれた大洗町に行くと、僕が子供のとき、大きな声を出せる人というのは、10中10人です。男も女もです。
 何でか。風が強いんです、海辺というのは。小さな声で喋ってると、声が風で流されて、わからないんです。だから、大きな声でしゃべる。
 それとか、例えば短い言葉、単語なんかは、短すぎると聞き取れないんです。だから、言葉を付け足すんですね。
 あの「蚊に刺された」って言うと、蚊という単語が短すぎて、何に刺されたか聞こえないでしょ。それで「蚊んめん畜生に刺された!」って言うんですね。
 そこに、食べ物出しっぱなしだと、「ハエめん畜生が飛んでるぞ!!」と言う。それで(ハエが飛んでるのか)ってわかる。「ハエが飛んでる」と言うと、「はえ? 何?」となってしまうからね。
 そういうふうに、言葉を付け足してでも、相手に伝わるように大声で話すんですよ。
 風で聞き取れないものだからみんな大きな声ですよ。大きな声出すの練習してるから、必要のないときでも、つい大きな声で喋っちゃうんですよね。
 で、風呂なんか、みんな銭湯行くんですよ。情報交換の場でもあるのでね。すごくうるさいです。人の声に負けじと大きな声でしゃべるので、ものすごい声でわんわん響いてね。僕はそういう中で育ったので、結構、地声が大きいほうなんですよね。
 

 高校卒業して東京へ行って、間もないときですけど、「こないだ山の手線に乗ってたら、小野瀬が隣の車両に乗ってたんだよ」と言われた。何でわかったかというと、「電車が走っているときでも、小野瀬の声が隣の車両から聞こえてきた」って言う。「はあ?」って。「俺、恥ずかしいから知り合いだと思われたくないから顔見られないようにしてた」っていうんですね。
 それからずっと時代が下って、僕に子供ができて、子供の幼稚園のPTAで知り合いができて、その中に農林水産省の役人がいたんですよ。お偉い、キャリア組ですけどね。
 僕は、取材は割と10時からとか、午後1時半からとか入れるので、朝の電車に乗って行かないんですけど、その日は何かで、朝どこかの取材が早い時間で入ってて、通勤時間帯に地下鉄の丸ノ内線に乗ったんです。そしたら目の前に、知り合いがいたんです。満員電車なのに。目の前の知り合いと――まあ女性だったんですけど――喋ってて、……まあ混んでる、朝の通勤電車で喋ってね。どこか、四谷、……赤坂見附か何かで降りたらば、あの、ゾロゾロって降りた中にそのキャリア組の男性が来て。

「ああ、何だ乗ってたのか。何で声かけてくれなかったんだ」と言ったら、
「小野瀬さん、みんな黙ってた車内で、小野瀬さんの声だけが車内中に聞こえてたよ」って言うわけ。
「車内中が全部聞いてて、俺、恥ずかしいから、俺が答えなきゃならなくなったら大変なことになるから、俺向こう向いて見つからないようにしてたんだよ」
 って言われて、また同じこと言われた、と思ってね。そんな大きい声だった? と。
 これ直らない。直らないけど、良いんじゃないでしょうかね。
 

 で、その頃ですかね、その後ですかね、あるとき取材していてね、だいたいあらかた取材が終わって、言われたんですよ。
「あんた、得だね。得してるね」
 って言われて。何の話しだ、何を得してるんですかって言うと、
「あんたと喋って取材受けてるとね、あの……あんたが悪い人に見えないよ」
 って言うわけ。
「そんな喋り方してて、なまっててね、自分のこと知らないんでしょ」
 って。僕はもう、「標準語喋ってましたよ」と言うと、「十分なまってる、なまってるから悪い人に見えないよ」って言われてね。それで得してるのか、そうなのかって思いました。
 

 大きな声でも、ちょっと訛りがあっても、悪いことは無いんじゃないでしょうか。普段からはっきり喋ってると、気持ちがはっきりしてきますから、いざ怒鳴るというときも怒鳴れるようになってくる。
 怒鳴るって、あまり必要ないと思いますけどね。本当は怒鳴らないのが良いんですけどね、僕も未熟なので、時々大きな声しちゃいますけど。

 僕はね、割と子供の頃とか中学校くらいまでは、喧嘩はしても口喧嘩くらいで、相手を叩くというのが嫌で、できなかったんですよね。悪い気がしてね。それが、高校くらいからは人を殴れるようになってきました。だけど、本当に殴り合いしたら、これは骨折するのが当たり前くらいにお互いにダメージが大きくてね。殴り合いというのは大怪我するな、とわかったので、生半可じゃやっちゃいけないぞと思いました。
 で、一番最後に殴り合いの喧嘩したのは42歳の時ですね。いくつになっても僕は人生に慣れるということがないな、大人になることができないな、と思ったら、42歳を最後に殴り合いの喧嘩はしてないです。不思議なことにいつの間にか、少し大人になったかもしれないですね。もう20年以上もしていない。

 で、実際、人と喧嘩するときでもそうで、自分は大きな声しちゃいますけど、本当は大きな声とかする前に、気迫で、相手を圧倒するということが大事なんじゃないかな。人に向かって、相手を、威嚇するため、威圧するために大きい声を出すというのは、ほんとうに人間ができてきたら、あまり必要なくなる。
 

 ただし、山の向こうに人がいるとか、畑の向こうにいる人に話すとか、川の向こうにいる人に何かを伝えるというとき、大きな声を必要なときに出すというのは、これは必要かなというふうに思いますね。必要なことを伝える。そのとき、大きな声じゃないと聞こえない。ときに、ちゃんと大きな声を出せることが大事だよね。あるいは大きな物音がしてる機械の横で、相手になにか正確に伝えるために大きな声で話す。
 いつでも大声が出せる、というのがいい。必要な大きさで、コントロールしながら出す、それくらいのことができて良いんじゃないでしょうか。
 大きな声が出せないというのは、それはやっぱり気持ちが作れていないということで、情けないんじゃないでしょうか。なんか、全然、答えになってない、という気もしますけどね。

 

 

(2018年12月29日掲載)









第66回「自己否定について」
第67回「友達が欲しい人、そうでない人」
第68回「未来を信じる」
第69回「山を登ると」
第70回「リーダーをすると苦しくさせる」
第71回「自分から人を好きになる」
第72回「小さいころからの恐怖心」
第73回「お姉さんのような存在を」
第74回「作業に対して気持ちの落差が激しい」
第75回「大きな希望を持つとき①」
第76回「大きな希望を持つとき②」
第77回「夢について・集中力について」
第78回「やるべきことをできていなくて苦しい」
第79回「やるべきことをできていなくて苦しい②」
第80回「真面目さは何のために」
第81回「高いプライドをつくるには」
第82回「番外編:そうだ、お母さんにきいてみよう!」
第83回「相談、確認が多いことについて」
第84回「自信を持つ」
第85回「間の良さ、間の悪さ」
第86回「過去を美化してしまう」
第87回「統合力を高めるには」
第88回「見張られているような不安」
第89回「どうして人間だけに気持ちが必要なのか」
第90回「休日になるとやる気がなくなってしまう」
第91回「低気圧」
第92回「どうして動物を飼うの?」
第93回「自分を褒める話をするには」
第94回「眠れない」
第95回「ふいに恥ずかしくなる」
第96回「躾について」
第97回「壁をなくしてオープンになるには」
第98回「自分がオーラのある人になるには」
第99回「私のストレスは何?」
第100回「社会性を身につける」
第101回「依存を切り離す期間は? その後はどう変わる?」
第102回「依存を切り離すことについて②」
第103回「会話が理解できない・生きる意味」
第104回「何者にもなれないのでは、という不安」
第105回「一緒に長時間いられない」
第106回「人の気持ちを汲めない」
第107回「リーダーとしてちゃんと動くには」
第108回「仕事への情熱と、興味があること」
第109回「日々の習慣を持つ」
第110回「自分のアスペルガー的な要素について」
第111回「外見について」
第112回「芸術、情緒、愛情 心の深さ」
第113回「なぜ風俗業は禁止にされないのか」
第114回「生き難さを抱えていなかったら、どんな将来の夢を」
第115回「健全な家庭なら自我は育つのか」
第116回「自我を育てる」
第117回「説明が理解できない」
第118回「好きな花①」
第119回「好きな花②」
第120回「血を連想させる単語を聞くと」
第121回「社会性と、基本的な姿勢」
第122回「深い関係をとって生きる」
第123回「ノルマ感、義務感が強い」
第124回「野菜の収穫基準がわからなくなる」
第125回「自分を楽しませること、幸せに過ごさせることが難しい」
第126回「向上心を持てないこと」
第127回「アーティスティックな心」
第128回「野性味を取り戻す」
第129回「個人プレイからチームプレイへ」
第130回「すべてのことを高いレベルでやりたい」
第131回「なぜ、痩せているほうが良いと思われるのですか?」
第132回「予定が変わると、気持ちがもやもやする」
第133回「楽観主義者と悲観主義者の境界線」
第134回「上品に、笑顔で、美しく」
第135回「続『上品に、笑顔で、美しく』」
第136回「嘘をつけない」
第137回「お父さんが怖い 前編」
第138回「お父さんが怖い 後編」
第139回「見事やで」
第140回「頼まれごとが不安・時間に遅れる①」
第141回「頼まれごとが不安・時間に遅れる②」
第142回「頼まれごとが不安・時間に遅れる③」
第143回「大きな声を出すこと」
第144回「時間の使い方」
第145回「お腹がすく」
第146回「本を読む時、第三者の視点になってしまう」
第147回「罰ゲームの答えとユーモア」
第148回「アイデアが出ないこと」
第149回「気持ちと身体の助走」
第150回「花や動物を可愛いと思えない」
第151回「美味しいセロリ」
第152回「尊敬している人といると、あがってしまう」
第153回「考え事がやめられない」
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第155回「寝汗をかかなくなった」
第156回「時間の不安について」
第157回「楽器を練習したい、本を読みたい」
第158回「疲れを認めたくない」
第159回「アトピーと蕁麻疹」
第160回「はっきりした人になりたい」
第161回「会話と、興味の深さについて」
第162回「思春期の不安定」
第163回「潔癖症について」
第164回「自尊心」
第165回「自分の身体のサイズ感をとらえるのが苦手」
第166回「兄弟を心配する気持ち」
第167回「自分の声への違和感」
第168回「野菜の調子が悪いと、自己否定してしまう」
第169回「好きな気持ちと、誤解をされることへの不安について」
第170回「トイレが近いことについて」
第171回「競争意識について①」
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第175回「テンション」
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第180回「時間の使い方と焦りの気持ち」
第181回「自分に疑心暗鬼になって、不安に陥ってしまうのはなぜ」
第182回「有志の募集に手を挙げづらい」
第183回「緻密に」
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第185回「体型に対するこだわり」
第186回「気持ちの切り替えが、うまくできない」
第187回「米ぬかぼかし作り」
第188回「評価すること」
第189回「堂々とした人に怯えてしまう ①」
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第192回「限界」
第193回「物を簡単に捨てることができてしまう」
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第195回「次のミーティングは、いつですか?」
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第198回「体育の授業が怖くて、さぼっていたことについて」
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第200回「やるべきことに追われてしまいがちな気持ちについて」
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第207回「調理されて食べられる魚はかわいそう?」
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第210回「期待について その①」
第211回「期待について その②」
第212回「アウトプットで生きる」
第213回「キャパシティを大きくしたい」
第214回「コミュニケーション」
第215回「秋が寂しい」
第216回「我欲と、自分を大切にすることの違い」
第217回「声を前に出して歌うには」
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第219回「苦手なことをしている時間を苦痛に感じてしまう」
第220回「握力について」
第221回「喜び合うための全力」

第1回から第65回までの「お父さんにきいてみよう」は、
こちらからご覧いただけます!
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