第135回「続『上品に、笑顔で、美しく』」

 

お父さん:

 前回の質問の、続きです。

 何か問題があるときは、抽象的にしておかないで、具体的にしたほうがいい、というふうに答えました。
 それで、僕も改めて思いましたけど、抽象的な質問をして、自分で抽象的な答えを出す人というのは、いつも問題を抽象的にしているんですよね。
 だからいつまでも解決ができない、ということなんだろうと思います。具体論にすればいいものを、精神論にしちゃってるということなんですね。
 紙と鉛筆を持って、箇条書きにして、自分の抱えていることや問題を、箇条書きで分解して書く、ということがすごく大事なのです。
 それが、解決する一番の道。これは、どんな問題でもそうですね。それをやらないと、抽象的なまま悩んでしまう。抽象的なまま考えていると、何の解決もできないんです。

 例えば畑で野菜作りを進めるのでも、同じなんですね。
 抽象的な発想をしてしまう人は、こんな質問を出してきます。
「私が担当する野菜は、いつもうまく育たないんですが、私の心構えが悪いんでしょうか」
 みたいなことを言う。そして自分の答えとして持ってくるのが、
「もっとしっかり頑張る」
 これでは、いつまでも良い作物を作れるようにならないんですよ。
 何の問題なのかを、具体的にしないといけません。

 この前は、野菜の根が何かにかじられてしまう、という問題が起きました。
 虫か、あるいはほかの小動物か。
 畑には萱鼠という種類の、ごくごく小さな野菜をかじるネズミがいることがあります。
 それだろう、ということで、一度は、畝の中にトンネルが作れないように、根がはってない部分の畝を崩し、自由に移動できないようにして被害がなくなったことがあります。
 今回も同様の方法をとりましたが、一向に被害が減っていかない。
 あんまり畝を掘り返したら、作物にダメージがいく。
 そこで、新手のユニークな方法を考えたわけです。もうすぐイノシシ猟、鹿猟を始めますが、その時に使う電気ショック槍を使って、畑の中にいる害獣を追い払うというものです。
 畑に水をまいて電気が流れやすくしておく。そこへ電気槍を刺して通電する――。
 結果はみんな知ってますよね。被害はほとんどなくなりました。
 これがもし、「ケジメをつけて作業をしっかりする」みたいなことばかり言ってたら、さっぱり被害は減らせないですね。
 
 問題を具体的にする、悩みを具体的にする、というのはやっぱり訓練だと思います。慣れてくると、上手に具体的にできるようになっていきます。問題解決が上手な人、というのは、まず問題を具体的にすることが上手なんですね。
 
 
 僕は以前、いろんな上場企業の経営者にインタビューして記事にしていたことがあるんですけど、あるときから、スポーツ選手出身とか、運動部出身とか、体育会系出身の人は、腕のいい経営者になる確率が高い、ということを思うようになりました。
 それは何でだろうかなと言うと、やっぱり運動競技を通じて、問題を具体的にして解決する練習をしてきたからかな、と思ったんです。
 運動競技をやっていると、ただ力任せに戦っていても勝てません。具体的に作戦を練らないと、あるいは具体的により効率的な練習メニューを組んでいかないと、試合に勝てないんですよね。
 例えばみんながしているソフトバレーや硬式バレーでもそうですけど、なのはなファミリーのほとんどはバレー未経験者ですが、それでも社会人チームに勝てるのは、みんなの作戦がいいからということが大きいと思います。
 

 そういう意味ですごく印象的なことがあるんですね、経営者にどういう人が向いているのか、ということで。
 日本航空という会社があります。航空業界も今はずいぶん変わりました。
 “フラッグ・キャリア”という言葉があります。フラッグというのは旗です。キャリアというのは運送会社、航空会社みたいなものをキャリアと言うんですけど。国旗を背負った会社。どの国にも一社ずつフラッグ・キャリアというのがあったんですよ。
 日本を代表する航空会社は、日本航空でした。超一流企業ですね。
 この日本航空の社長は、以前は文系の総合職しかなれなかったと思います。
 これは国家公務員の総合職上級合格者的な意味合いですね。
 そうやって、総合職のエリートを養成していったわけです。
 だから、日本航空の歴代社長は東大法学部卒など、文系出身者ばかりでした。
 以前は、管理職のエリートから見ると、技術職というのは1枚も2枚も下に見られていた、というのが実際のところだったと思います。
 ところがそうやって超エリートが舵を切っていた日本航空が事実上の倒産となって、国がテコ入れして再建してからはガラリと経営トップの経歴も変わりました。

 今の日航の赤坂社長は技術総合職として入社して整備畑を歩いた人で、その前の植木社長はパイロット出身の社長でした。その前の大西社長も整備畑出身です。経営の立て直しを実現したのは京セラを創業した稲森和夫さんですが、稲森さんが、抽象的なことばかり考える文系出身の総合職だけを経営トップに据えるのはおかしいよ、ということで社風をガラリと変えたのかもしれませんね。
 以前なら、技術畑の出身の人が社長になるなんて考えられなかったです。
 稲森さんも京セラをたった1代で町工場から日本を代表する大企業に育てた人ですから、実際に現場で鍛えられてきた人は、問題解決能力は高いと思っていたんじゃないでしょうか。

 で、やっぱり現場職ですけど、現場の職人は、問題を明らかにして、根拠をもって考えながら問題を具体的に潰していくということを、日常的にやっています。そういう手順でやらなかったら仕事にならないですから。
 それが、現場を知らない人が、抽象的に経営の足し算、引き算、あるいは人事の足し算引き算を抽象的に考えても、必ずしもうまくいかないのでしょうね。
 机上の計算で会社を動かしても、そうそう黒字は出ない。会社全体として効率の良い経営には必ずしも結びつかない、そういうことは明らかなんですよね。
 
 
 言ってみれば、個人の人生も、個人の家庭も、ある種、小型の会社みたいなものです。
 収入があって支出があって、家計が赤字になったり黒字になったりする。
 家庭も会社と同じように、いろんな所にお金をかけて、いろんな投資もする訳ですよね。まあ小さいものと言ったら家電製品や、パソコンを買うのも投資と言って良いかもしれません。車を買うのも投資だしね。家もそうですよね。それで、自分の、生涯の収支を合わせてくっていう経営ですよね。
 
 だから、それが失敗すれば、破産する人もいるわけです。個人の、自己破産ね。倒産みたいなのって自己破産と言うでしょ。自己破産したら、借金を返せないという借金地獄に陥った人でも、自己破産で借金は全部免除となってリセットできるわけですから、会社の倒産と一緒ですよね。そうやって自分の経営というか人生の経営も、会社の経営に非常によく似ている。
 それぞれの人生には必ず、と言うかいろんな問題が起きるのが普通です。あるいは課題ができて、その課題をどうやったら乗り越えていけるのか、良いふうに解決できるのか、みたいなことで生きているわけです。

 今なら、なのはなファミリーには中学生も、高校生もいますけど、中学生だったら高校受験はどこを受けるか、という課題があるわけです。
 高校生なら、進路をどう考えて、どこの大学を受験するか。そこを踏まえて、そのためにどれくらいの成績をとらなければならないか、合格する見通しがあるのかないのか、ということで対策を考えていく。
 で、まあうまくいく、うまくいかないというのもあるでしょう。勉強も、うまくいく、うまくいかないがあります。それで自分の目標を少しずつクリアしながら、壁を乗り越えながら、途中で出てきた問題を具体的に潰しながらやっていく。
 ところがその受験も、抽象的に捉えて、抽象的に考えて、抽象的な答えを自分に出して、抽象的に済ますとなると、何の解決もしていきません。また同じ問題にぶち当たる。その問題もまた抽象化しちゃうと、また同じことの繰り返しでね、何の進歩もない。
 だから具体的にするんですよ。問題を具体的に。
 

 上手に問題を捉えられた人は、課題を分析する。
 問題を細かく箇条書きにするのも上手でしょうね。
 で、うまく問題を箇条書きにできちゃったら、半分は解決したようなものですよ。それに対して具体的な答えを与えていけば良いだけですから。
 だから具体的に考える癖の付いてる人は、ここの中でもどんどん成長します。
 抽象的な質問をしてくる人は、なかなか変化が無い。

 で、変な話ですけど実は質問ボックスに入っている質問は、全部を声に出して読んでいません。
 どうしてかと言うと、ここに質問を入れるときには、「自分の名前は必ず書いてください」としています。で、誰が書いているか基本的にわかるんですけど、その名前は読み上げてません。
 それと、「こういう人がいて、私は困っています」というのは抽象的に書くだけでなくて、その下に実名が書いてあることが多いんです。「この人です」って。実名が書いてあります。
 でも、それは、実名が書いてあっても読み上げていません。
 何でか。何て言うかな、みんなに、この人は知っておいてもらったほうが良いだろうというのは実名を出すことがたまにありますよ。だけど、ほとんどの場合、その実名を出すことが意味のないことだったり、ちょっと非難めいた感じになって、それは行き過ぎてるかなと思えば、言わないんです。
 ただ、「これは読まなくていいです」と書いてあっても、質問者は僕に知らせるために、具体的に書いている。「あ、この人のこと言ってるのか」ってわかると、実際には読み上げなくても、僕としてはすごく答えやすいんです。その人を前提にしゃべることができるのでね。
 「私は、この人とこの人とこの人に、ちょっと困っています」みたいなね。困った内容が書いてある。実名が書いてあると、ああそうだよね、だったり、いや勘違いがあるんじゃないかな、というのがはっきりわかりますから、答えも正確になります。
 そうして具体的に名前まで書いてくれる人は、解決していきますよね、どんどん、どんどん。

 日記でもそうです。
 何か、「私は、ある人に……」って書いて、「ある人」としか書かない人。誰のことだろうって、こっちは首を捻っちゃうわけです。日記だから書けばいいんです。具体的にね。具体的に書いてある人は、なるほどねってわかって、こちらもそれなりの対策の打ちようがあるし、理解もできる。
 どんだけ具体的にするかというのは、すごく大事なことです。名前も具体的にする。
 すごく大事なことだと思いますよ。
 そうやって、問題を具体的にして名前まで具体的にしている人は、やっぱり解決していくスピードが速いし、成長していくスピードが速いです。

 今、畑のリーダーさんなんかが、みんな頑張ってくれて、それぞれ良い野菜を作ってくれていますけど、過去に、今のようなシステムになる前なんかも、個別の野菜を小分けにして担当していたことがあるんですよ。4つとか3つとかにしないで、トウモロコシとか、ナスとかキュウリとかってね。個別の担当制にしていたこともあるんです。
 で、そのときなんかは本当にはっきりしちゃうんですけど、問題を具体的にしない人、根拠を持って考えない人が担当した野菜は、食べられなくなるんです。育たない。それが、もう考えられないようなレベルで、種まきから初歩的な失敗を重ねて、何回、蒔き直してもまったく成功しない。そういう人もいましたね。
 まあまあ、……今は、グループで複数の畑を見る仕組みになっていますから、リーダーがしっかりしていれば、ある程度みんなで協力しながらできるので、ほとんど、完全失敗ということはなくなりましたけどね。

 ともかく問題を具体化していく。抽象化しない。それは本当に大事なことです。

 

 

(2018年11月20日掲載)









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第72回「小さいころからの恐怖心」
第73回「お姉さんのような存在を」
第74回「作業に対して気持ちの落差が激しい」
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第221回「喜び合うための全力」

第1回から第65回までの「お父さんにきいてみよう」は、
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