第134回「上品に、笑顔で、美しく」

【質問】
 お父さんが、悩みごとを悩むときは頭の中で抽象的に考えるのではなく、紙とペンを持って具体的に考える、と教えてくださいます。
 質問も抽象的に書くのではなく、具体的に書くと教えてくださいます。
 私はお父さんがそう教えて下さったのを、何度も、何度も聞きました。

 しかし、実際に質問ボックスの中に入っている質問には、ほぼ毎日の割合で、具体的ではない短文で抽象的な質問が入っています。
 例を挙げると、
◎作業で人とうまく関係をとれず、人を嫌な気持ちにさせてしまうのは、人の気持ちを汲めないからと考えてよいですか?
◎作業でリーダーさんを立てることができず、出過ぎてしまうのは我が強いからですか?
 というような2つの質問です。他にもいろいろあると思うのですが、今、思いついたのを書きました。こういうタイプの質問は、具体例などがなく、とても抽象的で、お父さんに悩みを放り出したようなものだと感じます。また、「そうではない」「大丈夫」と保障を求めているようにも感じてしまいます。
 
 また自分なりの答えで、
   ◎甘えが強いからそうなる。
   ◎もっと自分に厳しくする。
   ◎心持ちが間違っている。
   ◎心持ちを入れ替える。
 というような文がよくありますが、こんなふうに答えにしても、抽象的に短文でまとめるのも、どうなんだろうと思いました。
 「甘え」、「厳しく」、「心持ち」という言葉はとても抽象的で使いやすい言葉だと感じます。

 お父さんが、「みんなは互いに1つの素材でもあるから、恐れずにありのままをさらけ出そう」と教えて下さいました。
 悩みごとは具体的に考えること、質問は具体的に書くこと、と何度も教えられているのに、改善されないのは、どうしてですか?
 このことが普通になってしまうと、新しい子にもよくないのではないかと思いました。
 こんな風に感じてしまうのは、私が理屈っぽい人間すぎるからかもしれないです。
 全体的に批判的な文章になってしまい、よくない質問だけかもしれないです。

 

【答え】
お父さん:
 この質問、実はかなり的を得ているところがあるんです。良い質問だと思うんですよね。というのは、ふと考えてみると、抽象的な短い質問を出す人は、割と同じ人が、同じように繰り返し、繰り返し、質問を出してきています。
 で、これは何を物語っているかと言うと、具体的に考えないから、いつまでも解決しないということなんです。
 物事を考える時に、抽象的に考える癖がついているのです。
 また自分なりに答えを出すときにも、抽象的な答えを出す癖がついている。抽象的な答えをいくら見つけても、解決にはつながらないのです。
 この抽象的に問題を捉えて、抽象的に反省する癖が、なかなか直らないということなんですよね。
 抽象的に考える人は、考えが積み上がらない、ということなんです。

 この質問者が例を挙げているように、「作業で、人とうまく関係が取れず人を嫌な気持ちにさせてしまうのは、人の気持ちを汲めないからと考えていいですか」という抽象的な質問がときどきありますね。
 これこそまさに、出口のない疑問を考えている、というのが明らかにわかる質問なんです。
 「作業で人とうまく関係をとれず」という言葉があります。
 じゃあ作業で人とうまく関係を取れるということが現実にあるんですかということ。どのくらいあるんですかということ。作業で人とうまく関係を取れるということは、一体どういうことなんでしょうか。どういうことを指して、うまく関係をとった、とれなかった、と言ったら良いんでしょうか。
 作業でうまく人と関係を取れる事態というのは、どうなんでしょうね。
 ありそうで、無い。
 無さそうであることなんです。
 絵に描いた餅です。
 じゃあ聞きますが、作業のとき、人とうまく関係を取る必要がありますか。
 無いんです。作業中に人と関係をとる必要が無いんです。ただ、リーダーの言う通りに、動けば良いんです。必要なのは、リーダーの言う通りに動くことだけです。

 例えば、うまく関係を取れる、取れない、で考えてみましょう。
 作業が、肥料運びだったとします。
 バケツリレーで隣の人からバケツをもらい、次の人に渡す。
「はい、どうぞ。この肥料をお持ちくださいませ」
「ありがとうございます。あ、ありがとうございます」
 これがいい関係なんですかって話しです。どうなの?「はい」「はい」「はい」と連続的にひたすらバケツを渡していけばいいだけ。「ヤダ」みたいなね。そういう人いるかも知れないけどね。それは良くない。それはいい関係がとれないというよりも作業してないということですからね。
 普通は、はい、ほい、はい、ほい、とやるでしょ。
 だから作業でうまく人と関係を取れる状態とか、取れない状態というのは、ありそうでないんです。作業は作業ですから、いい関係も、悪い関係も、うまい関係も、悪い関係も無い、ということなんですよ。
 それなのにこういう質問が出るということは、この人は作業でうまく人と関係を取らなければならないと思い込んでいるんです。何を思って動いているのか、というと必要のない余計なことばかり考えている、ということでしょうね。

 続けて、例に挙げた中に「人を嫌な気持ちにさせてしまうのは」とあります。
 人が嫌な気持ちになったのが、どうしてわかるんですかということ。被害感情でも持っているんじゃないですかということですよ。
 人が嫌な気持ちになろうがなるまいが、作業に関係がありますかという話。
 だいたい人は、99%、自分のことしか考えていません。だから、この人嫌だなと思う気持ちがあったとしても、1、2%ですよ。そんなことに何で拘らないといけないんですか。
 だいたい人を嫌な気持ちにさせるには、どうやったらすることができるんでしょうね。難しいですよ。嫌な気持ちにさせるの。おならをする、とか? おかしいって笑うよね。嫌な気持ちにならないでしょ。
 

お母さん:
 えっ。
 

お父さん:
 例が良くなかったね。今のは取り消します。
 それは自分が不愉快な顔をしてたら嫌な気持ちにさせてしまうかもしれませんけど、それほど人を嫌な気持ちにさせる場面ってあるんでしょうか。僕は人を嫌な気持ちにさせたかどうかなと考えることは1か月に1回か、1年に1回も、あるか無いかですよ。
 だいたいは、どう思ってくれても構いません、と思ってる。
 

 で、「人の気持ちを汲めないからと考えて良いでしょうか」人の気持ち汲まなくていいです。
 それよりもいつもニコニコして、人の気持ちに我、関せずで、ただひたすらニコニコしていてくださいよ。人の気持ちを汲めたか、汲めないか、ということでイライラして目を三角にしているより、人の気持ちを汲めなくていいですから、いつもニコニコしていてくださいよという、それだけなんですよ。
 

 だから今の3つ。
 別にうまい関係を取る必要はないのに、「作業で人とうまく関係を取らなければならない」という大きな思い込みがある。
 それから「人を嫌な気持ちにさせてはいけない」という持たなくてもいい思い込みがある。
 「人の気持を汲まなくてはならない」という思い込みがある。
 全部いらないものです。作業のときに必要がない考えです。
 言われたとおりにリーダーに従う。いつもニコニコしている。自分がいい気持ちになっていれば、それでオッケー。人の気持ちは汲まなくていいです。リーダーの指示に従うだけ。リーダーの気持ちを汲むことはないです。リーダーが口に出したことにただ従うだけ。
 こういう絵に描いた餅みたいな、人とうまく関係を取らなければならないという思い込みがある。そういう思い込みをする人は、色んな所で思い込みをしちゃう。
 「こうあらねばならない」「自分はこう改めなければならない」。そうできない自分はなんて駄目なんだ、といつも自分を責めてるんです。
 

 次のものもそうですよね。
「作業でリーダーさんを立てることができず」なんて、ありえないですよ。
 信じられないですよ。作業はリーダーの言うことに従う、と決まってるじゃないですか。なんでそれができないのか、という話しですよ。それを、ああでもないこうでもないと差し出がましく言うのは、我が強いからという話じゃないですよ、リーダーの言うことを聞くという気持ちになっていないから。あるいは誰の言うことを聞く気持ちにもなっていないから。我が強いもへったくれもない。
 摂食障害から治るというのもそうですよね。「治って良いことありますか? 治って私が幸せにならなかったらどう保証してくれるんですか」そういう屁理屈を言って治らなくて、どうするんですか、となりますよ。だけど結構そういうことを言うんだよね。
 病気からは治ったほうが良いに決まってるじゃない。
 リーダーさんの言うことを聞けばいい、に決まってるじゃない。
 決まったことをやりなさいよ、当たり前のことを当たり前にできるようになりましょう、ということなんですよ。
 

 そういうことは、質問でも疑問でもないんですよ。当たり前のことに疑問をつけてるだけ。
 だからこの質問者が、
「こんな同じような質問が出てくるのはおかしいんじゃないですか」
 と言うのは、とても正しいですよ。ほんとにおかしな話なんですよ。
 当たり前のことを当たり前に考えましょう、当たり前のことを当たり前にしましょう、余分な思い込みはやめましょう。誰からも要求されていない過大な、こうあらねばならないという……。
 ああ、一つ思い込むんだったら「いつも笑顔であらねばならない」と思い込んでくださいよ。
「いつも美しくあらねばならない」「いつも上品であらねばならない」と思い込んでくださいよ。
 3点セット。
 笑顔、美しく、上品に――。
 順番をかえて、語呂よく。
「上品に、笑顔で、美しく」
 あらねばならない、と思ったら、こういう疑問質問は全部飛んでいきますよね。
 そっちを最優先する。人とうまく関係を取れるかどうかの以前に、笑顔で、上品に、美しくあらねばならないと言ったら、解決しちゃうでしょ。関係も取れますよ、笑顔で。
 笑顔でいたら、笑顔が返ってくるね。ムッとしてたらムッとしてくる。
 上品に、笑顔で、美しく、あらねばならないと思い込んでくださいよ。
 そしたら、それが全部、答えです。
 上品でいること、笑顔でいること、美しくあること。

 

 

(2018年11月16日掲載)









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第1回から第65回までの「お父さんにきいてみよう」は、
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