第118回「好きな花①」

【質問】
好きな花について
 特定の花を見ると、なんとも言えず愛しい気持ちになるのですが、その感情はどこからくるのでしょうか?

 なのはなに来て、「アゼムシロ」という、田んぼに群れで咲く小さい白い野花を知り、大好きになりました。どこがどう好きだとは言えないのですが、見つけると、心臓がしーんとし、嬉しさと、物悲しさが混ざった、泣きたいような気持ちになります。この花と同じ世界に生きていられてよかった、と感じます。
 私はもともと動植物や自然の景色が好きですが、そういう感情が強く起こるという意味で、この花は特別な存在です。

 お父さんとお母さんは、そういうふうに感じる花などはありますか?
 また、そういう気持ちが湧いてくるのはなぜですか。
  

  

 
【答え】
お父さん:

 これを読んで、お父さんの場合には、すごく思い出すのが、なのはなファミリーを始めてからまだそんなに時間が経っていない頃に、みんなと一緒に岩見田で、散歩に出たときのことです。
 位田のほうまで歩いていって、田んぼの中からちょっと人家のあるほうに入ったところで、ふと、使われてない畑のなかで見つけたのが、ムスカリです。

 それを見たときにはね、もう、……最初はびっくりしてね、次に感動してね、なんかこう、本当はお城の中の奥深いところで一般の人が目に触れることのできない王女様が、下々のいる畑の中にいて、
「こんなところにいていいんですか、あなたは?」
 って言いたくなるくらいの、高貴な感じ。
 見てはいけないものを見てしまったような、ね。本当はこんなところで見つけちゃったらいけないんじゃないか、みたいな感じがしました。
 とんでもない高級な花が、たまたまそこにあるのを僕が間違って見つけちゃったというような、心臓がドキドキするくらいの感じでしたね。
 それでまたその色がいい。色が、鮮やかな紫色っていうかね。濃い青でしょ。
 考えてみると、濃い青の花っていうのは、わりに少ないような気がするんですよね。
 あの、バラなんかも、青いバラを作れたらという夢が永いことありました。青いバラは無いと言う。でも今はあるみたいです、少し青っぽいのがね。
 朝顔は青いですよ。
 だけど、割と少ないなかで、濃い青で、しかもスズランのような小さいベルみたいな小さな花をたくさんつけている。ムスカリって小さいベルみたいな花がいっぱいあるでしょう。その繊細な感じが素晴らしい。
 スズランも北海道で有名な花だけど、ちっちゃいベルみたいなのがつらつらつらと並んでる。ムスカリの場合は山形に、ツリー状に並んでいるわけですが、こういうのを見たらね、なんて繊細で、なんて奇麗で――細工がすごいですよね。もう、なんていうか、癒やされるし、いつまで見てても飽きないし、心奪われますよね。その造形、色の鮮やかさ、佇まいがいい。
 本当に恋してしまうくらいの気持ちでした。
 本当に、平常心ではいられない、ワクワクするような……。

 

お母さん:
 お父さんはそれからムスカリが大好きなんだもんね。1人ひとりにこんな思いがあったらすごい、いいよね。

 

お父さん:
 あの、その思いがどこから来るのかっていう質問だよね。
 僕は思わずいま「本当は高貴な王女様が」って言っちゃったけど、花を見て、擬人化しちゃってるんですよね。花の中に人格を見ちゃうんです、たぶんね。
 それで、切なくなっちゃう。
 花は花、って思ったら、なんでもない。花じゃないんだね。花のかたちをしている人、って感じちゃうんですよ。
 その、花が持ってる造形が繊細で、小さくて、繊細だと、「なんて繊細なひとなんだ」ってなってしまう。なんて繊細な花なんだ、じゃない。なんて繊細な人なんだ。なんて美しい人なんだ、なんて可愛らしい人なんだ、ってね。
 可愛らしくて美しくて本当にいたいけな存在を見たら胸がバクバクするでしょ。恋しちゃうんですよね。
 なんかこう……素晴らしいな、素晴らしい人だな、って思ってしまう。
 あの、考えてみると、僕は、小さい魚を見ても、小さい虫を見ても、やっぱり、人だと思っちゃうんですよね。感動する虫とか、感動するものを見たときにね。
 

 全然、関係ない話ですけど、これはお母さんと一緒にカナダへ車で旅行したとき、道の途中で小熊を見つけたんです。小熊が1匹、道路脇の丘の中腹を1人で歩いてたんですけど、僕らが見てるってわかったとき、それまで普通にスタスタ歩いてたのが、
(お父さん、立ち上がり小熊の真似をする。一歩ずつ反動と揺れをつけて)
 何、揺れてるんだろうと思ったら、ズシーン……ズシーン……って何か大物の熊に見せてるんですよ。大物に見せて、1歩ごとに、ゆらゆらゆら、と身体を揺らしているんです。
 こいつー、大物のフリして子供のくせにって。親熊が近くにいたら殺されちゃうんですけど、「こいつー」って捕まえてやりたいような。

 

お母さん:
 可愛かったな。

 

お父さん:
 可愛い! 非常に可愛い。
 こっちを意識して、
「どうだ! ……来るんじゃないぞ。俺はすごいぞ」
 って、その一生懸命さが、可愛いじゃないですか。
 

 それと僕まったく同じだなと思ってるのは、ナナフシという虫がいるんですね。
 知ってる?
 なんと言ったらいいのか、辞書で見たらすぐ出てくるけど、ちょうど稲わらみたいな太さで、大きいのは20センチくらい。小さいのは7センチくらいだけど、そこに蚊みたいな細い足があって、木にとまってるんですよ。枯れ枝みたく見えるんですよ。
 その、ナナフシが熊と同じように、ふるふるって揺れるんですよ。
 これは大きく立派に見せるんじゃなくて、枯れ枝に見せようと思っている。風が吹いたら枯れ枝は揺れるじゃない。歩くときも、ひゅるひゅるひゅる……ひゅるひゅるひゅる……揺れながら歩いてる。それも熊と一緒だなと思ったけど。
 人間みたく思っちゃうんだよね。策略を巡らせて。見つからないように。「見つけてるよ、お前を!」って思うんだけど。
 コラッて捕まえようとすると、すたすたすたって逃げるんですけどね。歩くんですけど、見つかったかどうか微妙なときはまだ、揺れてるんですよ。
 そういうの見ると、こいつ――ナナフシは愛しくないですよ、あんまり愛しくないですけどね――擬人化して見ちゃって、その擬人化した虫なりなんなりが、本当に可愛い場合、美しい場合ね、やっぱりもう……心臓を射止められたくらい恋してしまうことがありますよね。
 

 あるいは恋しなくても、ちっちゃい魚に、なんていうかこう、尊敬の念を持ってしまう。その魚のプライドが見えたときにね。
 まだ言ってなかったっけかな、僕ね、高校生くらいのとき、何かしょんぼりして山の中に1人で入ったんですね。その頃、山の中によく1人で行っていたなと思うんですけど。
 本当に自信をなくして寂しい感じだったんですね。
 で、小さいこのくらいの(1メーター弱の)川幅の小川が流れてて。水深何センチかの。下が砂でね。
 その川辺に沿って歩いて、見るともなく見たら、ハゼみたいな種類の、地面に止まっている魚がいてね。小さい、5センチ、3センチくらいの小さい魚がいてね。
 で、見たら、こいつ、愚鈍な感じですぐ捕れるだろうなと思って、手を近づけても全然逃げなくてね。砂ごと、スッと捕った。
 捕られたら暴れるかなと思ったら暴れない。手の中で、こっちを見てるわけ。キョロっとして。「なんなんだよ」っていう感じで僕を見るんです。
 これがこう、すごいなあ、と思ってね。勇気があるなと思ってね。僕を怖がらない。
 捕られても、信じてると言うか。
 自分が殺されるなんて思ってない。
 こっちをジロッと見てる。目と目が合うんですよ。すごいなと思ってね。
 

 それで、しばらくそうやって見ていて、この魚プライドが高いし、勇気があるなと思ったんだけど、ただ病気なだけかもしれない。それでちょっと意地悪したくなって、ちょっと手を緩めて、ジョボジョボって指の隙間から水を出してしまいました。それでもジッとしてたらただ弱っているだけですよね。じょろじょろって水を少なくして、なくなったら途端に、「ふざけんなこの野郎!」っていう感じでバタバタ暴れだしてね。びっくりして元の川にすぐ帰してやりました。
 その魚、川の中に入ったら逃げるかなと思ったらすぐ足下にいて、「酷い目に遭った」っていう感じで、まだいるんですよ。そこにね。
 すごいなあと思ってね。
 こうでなきゃいけないな、立派だなと思ってね。
 何で自分はそんな自信なくして自尊心なくして、こんな3センチの魚からしたら何十倍、何百倍どころか、こんな大きい身体して、何を自信ないとか、何バカなこと考えてたんだろうと思ってね。
 この魚の自尊心を、僕も見習わなければいけないなって、思ったんですね。
 すごいなと思ってね。
 あの、そういうことってやっぱりあるんですよね。
 

 花は言葉をしゃべらないかもしれないけど、やっぱり何かこう、生命があるというかね。美しい花だったら美しい生命があって、プライドも、多分あるんじゃないかみたいに、感じちゃう。
 なんかその、言葉にならない、人間の日本語にならないような、凛とした、正しさ、規律というものを持って、初めてそこに根っこを生やして、咲いて、命をたもって、花を咲かせている、っていうことを思うとね、やっぱり胸が締め付けられるくらい、すごいなっていう感情に捉えられますよね。
 で、それが、たまたま咲いていれば出会うことができる。咲く時期が過ぎてしまったら、無くなっちゃう。
 まあ、消えはしないんだけどね。根っこは残ってまた来年、咲かせるんですけど、この限られた時間の中を精一杯、奇麗に咲いていると思うとね、何かこう、命というのは無限じゃない、そういうなかで限られた命を精一杯に生きているということ、そういうことが思われて、胸を打たれますよね。

 じゃあ全部の花がそうか、全部の魚がそうかというとそうでもないし、軽蔑したくなるような魚もいますしね。軽蔑したくなるような花は思いつきませんけど、本当に心惹かれる花があるんじゃないでしょうか。
 で、それは人それぞれで、ちょっとずつ違うかもしれないなって、思いますね。
 お母さん、どんな花が好き。お母さんはそういう、心ときめかせる花ってなんですかね。

 

お母さん:
 いやいや、その時々によって、気持ちによって違って、それオンリーということ無いんだよね。前に話しした、やっぱりブルーの花だけど矢車草を河原で見つけたとき、やっぱり宝物を見つけたみたいだったでしょ。
 で、ササユリも、山の中で、笹だと思って、ユリでしょ。奇麗な。
 なんだっけ、リンドウもね、花屋さんで売ってるリンドウは太くて節々に花がついてるけど、本当に野のリンドウってね、茎が枝みたいに細くって、すっごい可愛らしいの。これもブルーで。
 草むらの、ススキがいっぱいのところの中で、「私を見つけて」みたいな。
 オミナエシやらキキョウやら、揃ってじゃなくて、一輪、二輪、スッて咲いてるのが、すごく、今お父さんが言ったみたいに、自分だけが見つけた宝物みたいなのが、心に残るよね。
 みんなも意識して、こういう気持ちを育てていったらいいのかなと思って。
 好きな花を見つけるというか、作るの、いいよね。花だけじゃなくてもね。

 

次回へ続きます。  (2018年9月21日掲載)









第66回「自己否定について」
第67回「友達が欲しい人、そうでない人」
第68回「未来を信じる」
第69回「山を登ると」
第70回「リーダーをすると苦しくさせる」
第71回「自分から人を好きになる」
第72回「小さいころからの恐怖心」
第73回「お姉さんのような存在を」
第74回「作業に対して気持ちの落差が激しい」
第75回「大きな希望を持つとき①」
第76回「大きな希望を持つとき②」
第77回「夢について・集中力について」
第78回「やるべきことをできていなくて苦しい」
第79回「やるべきことをできていなくて苦しい②」
第80回「真面目さは何のために」
第81回「高いプライドをつくるには」
第82回「番外編:そうだ、お母さんにきいてみよう!」
第83回「相談、確認が多いことについて」
第84回「自信を持つ」
第85回「間の良さ、間の悪さ」
第86回「過去を美化してしまう」
第87回「統合力を高めるには」
第88回「見張られているような不安」
第89回「どうして人間だけに気持ちが必要なのか」
第90回「休日になるとやる気がなくなってしまう」
第91回「低気圧」
第92回「どうして動物を飼うの?」
第93回「自分を褒める話をするには」
第94回「眠れない」
第95回「ふいに恥ずかしくなる」
第96回「躾について」
第97回「壁をなくしてオープンになるには」
第98回「自分がオーラのある人になるには」
第99回「私のストレスは何?」
第100回「社会性を身につける」
第101回「依存を切り離す期間は? その後はどう変わる?」
第102回「依存を切り離すことについて②」
第103回「会話が理解できない・生きる意味」
第104回「何者にもなれないのでは、という不安」
第105回「一緒に長時間いられない」
第106回「人の気持ちを汲めない」
第107回「リーダーとしてちゃんと動くには」
第108回「仕事への情熱と、興味があること」
第109回「日々の習慣を持つ」
第110回「自分のアスペルガー的な要素について」
第111回「外見について」
第112回「芸術、情緒、愛情 心の深さ」
第113回「なぜ風俗業は禁止にされないのか」
第114回「生き難さを抱えていなかったら、どんな将来の夢を」
第115回「健全な家庭なら自我は育つのか」
第116回「自我を育てる」
第117回「説明が理解できない」
第118回「好きな花①」
第119回「好きな花②」
第120回「血を連想させる単語を聞くと」
第121回「社会性と、基本的な姿勢」
第122回「深い関係をとって生きる」
第123回「ノルマ感、義務感が強い」
第124回「野菜の収穫基準がわからなくなる」
第125回「自分を楽しませること、幸せに過ごさせることが難しい」
第126回「向上心を持てないこと」
第127回「アーティスティックな心」
第128回「野性味を取り戻す」
第129回「個人プレイからチームプレイへ」
第130回「すべてのことを高いレベルでやりたい」
第131回「なぜ、痩せているほうが良いと思われるのですか?」
第132回「予定が変わると、気持ちがもやもやする」
第133回「楽観主義者と悲観主義者の境界線」
第134回「上品に、笑顔で、美しく」
第135回「続『上品に、笑顔で、美しく』」
第136回「嘘をつけない」
第137回「お父さんが怖い 前編」
第138回「お父さんが怖い 後編」
第139回「見事やで」
第140回「頼まれごとが不安・時間に遅れる①」
第141回「頼まれごとが不安・時間に遅れる②」
第142回「頼まれごとが不安・時間に遅れる③」
第143回「大きな声を出すこと」
第144回「時間の使い方」
第145回「お腹がすく」
第146回「本を読む時、第三者の視点になってしまう」
第147回「罰ゲームの答えとユーモア」
第148回「アイデアが出ないこと」
第149回「気持ちと身体の助走」
第150回「花や動物を可愛いと思えない」
第151回「美味しいセロリ」
第152回「尊敬している人といると、あがってしまう」
第153回「考え事がやめられない」
第154回「認めてもらいたい気持ち」
第155回「寝汗をかかなくなった」
第156回「時間の不安について」
第157回「楽器を練習したい、本を読みたい」
第158回「疲れを認めたくない」
第159回「アトピーと蕁麻疹」
第160回「はっきりした人になりたい」
第161回「会話と、興味の深さについて」
第162回「思春期の不安定」
第163回「潔癖症について」
第164回「自尊心」
第165回「自分の身体のサイズ感をとらえるのが苦手」
第166回「兄弟を心配する気持ち」
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第168回「野菜の調子が悪いと、自己否定してしまう」
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第175回「テンション」
第176回「目を見ること、見られること」
第177回「よいお母さんになる10か条」
第178回「音楽と我欲①」
第179回「音楽と我欲②」
第180回「時間の使い方と焦りの気持ち」
第181回「自分に疑心暗鬼になって、不安に陥ってしまうのはなぜ」
第182回「有志の募集に手を挙げづらい」
第183回「緻密に」
第184回「いつも怖い」
第185回「体型に対するこだわり」
第186回「気持ちの切り替えが、うまくできない」
第187回「米ぬかぼかし作り」
第188回「評価すること」
第189回「堂々とした人に怯えてしまう ①」
第190回「堂々とした人に怯えてしまう ②」
第191回「耳が良くないこと」
第192回「限界」
第193回「物を簡単に捨てることができてしまう」
第194回「整理整頓、片付けができない」
第195回「次のミーティングは、いつですか?」
第196回「整理が過ぎるのは症状ですか」
第197回「人をもっと理解したいということについて」
第198回「体育の授業が怖くて、さぼっていたことについて」
第199回「完璧が怖い」
第200回「やるべきことに追われてしまいがちな気持ちについて」
第201回「正面から受け取りすぎることについて」
第202回「手持ち無沙汰にさせることが怖い」
第203回「生き物が好きで触りたくなる気持ちについて」
第204回「魚の食べ方について」
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第207回「調理されて食べられる魚はかわいそう?」
第208回「頑張ろうとすることに疲れた」
第209回「自己愛性パーソナリティ」
第210回「期待について その①」
第211回「期待について その②」
第212回「アウトプットで生きる」
第213回「キャパシティを大きくしたい」
第214回「コミュニケーション」
第215回「秋が寂しい」
第216回「我欲と、自分を大切にすることの違い」
第217回「声を前に出して歌うには」
第218回「できる気がしない、と感じてしまう」
第219回「苦手なことをしている時間を苦痛に感じてしまう」

第1回から第65回までの「お父さんにきいてみよう」は、
こちらからご覧いただけます!
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