第95回「ふいに恥ずかしくなる」

【質問】
 特になにか、失敗したわけでもないのに、自分の存在をふいに恥ずかしく思ってしまうのは摂食障害の症状ですか?
 

 

 

お父さん:
 金子みすゞの詩に、『わたしと小鳥と鈴と』という詩があります。
 小鳥は空を飛べるけど私のように地べたを走れない。鈴は奇麗な音を出せるけど私のように歌を知っていない。

 みんな違ってみんないい。
 これ不思議だと思いませんか。

 “僕はトロンボーン吹けないけれど、えつこは吹ける”じゃない。
 「わたしと小鳥と鈴」なんですね。
 何が言いたいか。私と、小鳥と、鈴、を同列に置いてる。

 鹿と猪ならなんとなくわかる。
 小鳥は大分小さい。まだ理解できるけど、鈴になった途端、なんで鈴なの? と思いませんか。
 透徹した公平心。
 このテーブルも自分と同じに見る。
 みんな違ってみんないい。
 公平に、いろんなありとあらゆるものを慈しむ気持ちで見たとたんに、なんか、「じゃあ自分は何なんだ」っていう気持ちになりませんか。
 僕はいつの間にかこの煙突より偉いと思ってる。テーブルより1万倍も偉い、と思ってしまっているんです。
 このテーブルのように、僕の背中にたくさん物を載せられるか。いえ、載せられません。なのに、僕はこのテーブルより偉いと思っている。
 テーブルにいきなり物を載せても、怒って、捨ててしまえ、と言い出すこともないです。

 あのね、なんていうか、自分ていつそんなに偉くなったんだろう。
 ほんとに透徹した気持ちで周囲を見渡すと、恥ずかしくなってくるんです。
 思い込みをなくして、自分て何なんだ、と思ったらとても思い上がっている存在だということに気付くんですよね。
 ほんとに自分は恥ずかしくも何を勘違いして、偉そうに、わがもの顔で生きて、いろんなモノを使い倒してゴミのように捨てたりしてたんだろう。そういう風にはっと気が付くと、おこがましい、偉そうな自分の態度、自分の考え方に、恥ずかしくなってしまう。そういうことは、あるんじゃないかな。言葉にならなくても、ふとそう感じてしまうことがある。
 それこそ自分と同列の人間同士で見ても、僕なんか、みんなからしたらなのはなのお父さんお母さんで、こういう立場ですから、みんなに偉そうなこと言って教えなければいけない。指示をしなければならない。時には怒ったり、嘆いたりしている。
 ほんとは、どのくらいみんなと僕は違うんだ? と思ったら、何も違わないんじゃないか、という気もしてくるんです。
 気が付くと、なんていうか、恥ずかしさっていうと、ちょっと違うかもしれませんけど、強烈な「自分はこれで良いのか」という自分に対する疑問とか、ほんとにお前はそれで良いのかと自省する気持ち、自分の姿勢を自問自答するような気持ち、ほんとにそんな気持ちに襲われるんですよ。

 なのはなファミリーをやる前まで、物書きをしてました。
 物書きってすごいんですよ。その頃は週刊誌かなり売れてた時代です。僕がアンカーやっていた雑誌で毎週70万部は売れていました。美容院や、病院の待合室に置かれたりしていますから、平均すると週刊誌1冊は7回読まれる、と言われていました。70万部の7回で、490万人から読まれることになります。そこに自分の考え方や意見を、毎週書いているわけです。
 これはこうだと決めつけると、それが490万人の知るところとなる。
 ですから、例えば何か悪い事をした人がいて事件になったとすると、強烈に「俺が断罪してやる」という思いがないと書けない。俺が正義を書いてやる、正しいことを知らせるんだ、という強い思いで書きます。
 ところがそれと同時に、まったく正反対な、自分はここまで書いて良いんだろうか、という強烈な思いが出てくるんです。
 でも、そんな中途半端な気持ちだったら、それは面白い記事は書けない。

 書きすぎてしまうことがある。いくら正義心だったとしても、行き過ぎたら間違える。
 誰かを断罪したとして、断罪した人のその後の人生がどうなるのか、それを考えたら恐ろしいです。
 僕はその思いがずっとありました。

 僕がアンカーを始めたばかりのとき、東京の西部で連続幼児殺人事件が起きました。
 一時は、新聞も、テレビも、連日、朝から晩までその報道でもちきりでした。
 週刊誌は、1週間に1度の発行です。テレビよりも長持ちする濃いめの内容でないと、記事として持ちません。
 僕がやっていた雑誌でも、取材班を組んで大掛かりに取材をして、僕がアンカーとしてその記事をまとめました。
 幼女の連続誘拐殺人が良いわけないです。どこからどう考えても悪いことです。何でやったのか。被害者と加害者の気持ちを深く考えた時、ただ殺人鬼として片付けたら、何かを間違えてしまうのではないか、と思いました。
 そういう思いがあって、それまでの報道にあった「殺人鬼」という視点とは、違う観点で書きました。その記事が、東京新聞の雑誌書評欄で取り上げられ、たくさんの報道がなされているけれども、僕の書いた記事が秀逸である、と褒められた。それが僕のアンカーとして書き始めた1か月後のことで、それから僕もアンカーとしてやれるのかな、という気持ちになりました。
 ヒトって、一生懸命に生きると、かなり強い影響力があります。
 みんなも。なんか動くときリーダーやると、凄い影響力があるんです。
 
 たとえば硬式バレーボールをうちでみんな懸命に練習したけれど、リーダーがきちんとリーダーシップを発揮して、練習プランを組み、コーチもしながら、しっかり練習してくれています。
 時には「こんなふうに強く打って!」ときつく言うこともあるでしょう。
 そうやってリーダーシップをとっている人は、その一方で、「私は偉そうに、もっとこうしてよ、とみんなに言っているけれど、私にそんなこと言う権利があるのか」というふうに、強い調子で言えば言った分だけ、心の反動で自分の気持ちや言動を、再検証しています。どんなリーダーでも、自分はあれでよかったのか、と振り返っている。
 そういうとき、ふとした恥ずかしさが生まれることが、誰にでもあると思います。
 何の権利があって言ってるのか。
 本当は平等だ。それをちゃんと生かせていないんじゃないか。自分はどうなんだ、という自分に対する問いかけです。
 そういう思いをしてこそ、いいリーダーになれると思います。
 そういう人こそ、よりよいリーダーシップを発揮できる。
 ちゃんとやろうとすればする人ほど、ものすごく人に対する影響力が出るし、強い影響力の人ほど、あとでひっそり、本当に自分はこれで良いのか。そういう思いにとらわれてます。

 

 

(2018年7月3日掲載)









第66回「自己否定について」
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第72回「小さいころからの恐怖心」
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第76回「大きな希望を持つとき②」
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第89回「どうして人間だけに気持ちが必要なのか」
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第1回から第65回までの「お父さんにきいてみよう」は、
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