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第53回「痛みを知る」




*質問*

 足を痛めてから、走るのを休んで5日近くしたら、足の筋肉がかなり落ちた気がするのですが、なにかトレーニング法はありますか?
 教えていただけると嬉しいです。

 

 

*答え*

 そうですね。
 休んだら、筋肉は落ちますね。バレリーナは、1日休んだら自分が分かる、3日休んだら先生が分かる、1週間休んだら観客が分かるって言われるね。1日も休めない。そのぐらい変わるでしょうね。
 だいたい僕も1年くらいソフトバレー休むと、お腹は3センチくらい出ますね。ほんとにね。

 ちょっと休みすぎてるよね。

 ソフトバレーをね、毎週月曜日、なのはなファミリーではやってたんですね。いろんな事情があって今は休んでいて、勝央町の体育館の改築が完成したらやろうと思っています。
 この春、完成したようです。広くなったので今度はこっちで、やるような習慣にしていきたいと思います。練習試合ったって、やったり休んだり、たくさんのチームあるから、2時間やりっぱなしじゃなくて、4ゲームから6ゲームくらいですけど。ソフトバレーをちゃらちゃらやったくらいで……1週間に1回ですよ。それを休んだって変わらないだろうと思ったけど、どんどん身体がなまって、別人のようにお腹が出てしまいましたね。
 じゃあね、「鍛える方法はありませんか」という質問ですけど、足が痛くて休んでるわけで、それを、何とか衰えないようにしようというのは無理で、それは焦らない方が良いです。
 例えば上半身の筋力トレーニングだったらやってもいいと思います。だけど、やっぱり、痛めたところがいつまで経っても癒えてこない可能性があるので、足の鍛えるのは潔くやめて、駄目なら駄目で、それなりに走ろうと、思う気持ちがいいんじゃないでしょうかね。
 日本人の、こないだのスノーボードの選手で、ぜんぜん駄目だった人がね、去年の夏に膝を怪我してしまって、1か月くらい練習できなかった。練習は諦めた。それで大会には出たんだけど、怪我して、治ってすぐだから力入れずに、そこそこの滑りで少しずつ試合感を取り戻せばいいやって出た世界大会で、3位に入賞しちゃったんだね。
 要は、元気なときは雪を強く掻きすぎていて、それがブレーキになっていた。適当にぬるぬる滑っていたら、それが実は、そこそこのスピードが出た。速い。予選から決勝まで10回近く滑る。エッジ立ててた頃は、上位決勝戦になるころにはもう限界を超えていて、それでももっと責めようとして結局7位とか6位だったのが、ゆっくり、エッジ立てないで滑ってるから、上位決定戦の時も体力は余裕たっぷりで、スピードが落ちない。
 怪我をして、力を抜いて走っていたら、いままでよりずっといい成績になってしまった。
 そういうことがあるんですね。だから筋力を弱くしてしまって、あえて、弱い筋力で力を抜いて走ってみる。それでどうかと自分で試してみるのもね、この機会に、いいのかなと。
 これが陸上選手で、次の大会で優勝したら1千万円がかかってるとかじゃ、そういうわけにいかないだろうけど、みんなは素人なんだからそんなにシビアになる必要はありません。
 自分は弱いときはどれくらい弱るのか。強いときはどれくらい強いのか。自分の身体の前後右左、奥行きを確かめるようなつもりで生きていく。そういうのもいいんじゃないかと僕は思うんですよね。
 病気の時は病気になる。怪我をしたときは休む。強いときは頑張る。
 怪我とか病気とか痛みとか、弱さっていうのを、受け入れても良いんじゃないかなっていうね。足は弱くなるかもしれないけど心は深くなるなら、トータルで強くなるんだから、いいんじゃないかなと。
 今の僕なら、休んじゃいますね。若いときだったらなんとか挽回しようと思いますけど、それはあまり正解じゃないんじゃないか。そんな感じがしますね。そうだよね、お母さん。

 年の功でお父さんがそう思ったことを、若い子も同じように思って良いんだと思うよ。

 そうそう。今のうちからそういうふうに思ってね。自分の身体を知ろうという気持ちがいいんじゃないでしょうかね。自分を、どんな自分か知ってみたいって思う気持ちですよね。
 例えは悪いですけど、例えばね、酒を飲んで家に帰るときにね、終電車に乗った。ところが酔っぱらっていたので、寝過ごして終点まで言ってしまった。ポケットを探ったら、1000円札1枚しかない。もう終電なので、時間は午前1時半。帰りの電車もない。タクシーに乗るお金もない。
 そういうとき、なんとか帰ろうとしますか? 今夜どうなるんだろうと思うか。わくわくした気持になるか。
 僕はわくわくしてきますね。それが、大雪ががんがん降ってて、その辺で寝たら凍死するような夜。ますます楽しみですね。意気込んで夜中に徘徊してるとパトカーに止められるんですね。「なにしてるんですか」
 だいたい、この健全な国日本で、夜中に徘徊してはいけないらしいです。
 交番に行くと、「ここでは寝たらいかん。軒先ならいい」不親切ですよね。

 どうすんの?

 いろいろドラマあるんですよ。試しに終電に乗ってみて下さい。お金持たずに。終点まで行ってください。ドラマがあるんです。
 例えが悪いね。
 マラソン大会近い。怪我して練習できない。困った。どうすんだよ。と、困るという意味では似てる。この困った感じを楽しむ。自分、どうなっちゃうのかなあ、みたいなね。
 ほんとに、馬鹿にしてるんじゃなくてね、ほんとうにね。
 あ、僕ね、思い出しました。僕の息子がね、小学校5年生のときにね、ピザーラの配達……免許取って1か月のオートバイの配達の高校生に全速力で衝突されたんですね。自転車に乗っていて。何メートルか飛ばされて、頭から地面に落ちた。左腕骨折の頭蓋骨骨折。救急車が来たときは、鼻から大量の出血で頭のまわりの1メートルくらいに血だまりができている。もう呼吸もない心臓も止まっている。
 ただ、消防署がそこから50メートル先だった。電話してすぐに救急隊員が来て、蘇生を試みてくれた。大変な事故に遭っちゃったんですね。
 で、僕が電話で一報を受けた。
「息子さんが事故にあったので、救急車で搬送します。病院にいく準備をして待っていてください」
 様子がおかしいので僕は聞いてみた。
「大きい事故ですか? 小さい事故ですか?」
「いやあ、分かりません」
 小さい事故って言わないんだね。これは大きな怪我だなと思いました。それからすぐに、警察の人から電話が来た。
「家族の1人は現場に来てください。現場検証に立ち会っていただきたい」
 これでね、ああ、もうだめなのかなあと思いました。
 現場検証に立ち会えって言うのは、よほど大きな事故しか、家族が立ち会うなんてやらないんですよね。
 それでね、僕はもう半分はあきらめて、現場に行ったんですね。
 そしたら救急車がまだそこにいた。
「まだ病院に行ってなかったんですか?」
 と聞いたら、
「頭がやられているので、女子医大の、頭を開くことの出来る先生がいなかったらだめだから、女子医大になんとか受け入れてもらうまで動かない。一度は断られたけど、どうしてもと言って頼んでる。まもなく出発できると思う。お父さんが来たんだったら、現場検証はもう良いから救急車に乗ってください」
 と言われた。子供は救急車に乗っていた。顔とか頭とか血を拭いたあとが生々しく残っていて、意識がない。腕は服の上からでも折れているとわかった。
 僕は初めて救急車に乗りました。ベッドの横に座りました。救急車のベッドって左右にスウィングするんだよね。救急車が左に曲がると、向こう側にベッドがスィングして行く。スィングしきった瞬間に、子供が死んじゃうんじゃないかと思って、ベッドの端をギュッて握っていた。
 目の前にいる救急隊員と向かい合わせで座った格好だった。その救急隊員に聞いた。
「大丈夫ですよね。助かりますよね」
 その救急隊員、正直なんだよね。
「覚悟してください。覚悟しておいたほうがいいと思います」
 ええっ、そこまではっきり言うか、と思ったけど、その救急隊員が蘇生してるんだよね。心臓はいま動いているけど、もうだめでしょうと。かなり大きな事故だったんですよ。
 治療室に運び込まれて、廊下で待っていると、救急車も帰らずに待っている。
「なんで帰らないんですか?」と聞いたら、
「ここで処置できないって言われたら、次の病院に送らなければならない。頭の怪我で、時間を争うからここで完全に処置ができるって言うまで動きません」と。
 これは、本当にいかれちゃうのかなあと思うくらい心配しました。そのくらい大きな事故で、3日間ぐらいは意識が戻らないんですよね。1週間くらい経った頃には少し話ができるようになって、そのころになってやっと命は助かったっていう感じでした。後遺症は残るでしょうと言われました。

 結局、頭蓋骨を骨折していて、頭蓋骨全体が割れている状態。脳内の頭蓋骨下にも出血してて、血がたまっているのがMRIでもはっきり見えた。開頭して出血した血をとるか、それとも出血が止まるなら、自然に引くのを待つ手もある、ということで様子を見ていて、開頭手術はしなかった。
 最初は集中治療室で面会も限定的だったのが、それから一般病棟に移った。
 ところが、口を開けば、頭が痛い、頭が痛いってうめく。脳浮腫と言って脳が腫れてて、脳圧が上がって、頭痛くてしょうがないわけだ。
 「お父さん頭痛い頭痛い」って言うから、僕も困った。助けることができない。代わってやることもできない。
 それで僕は言った。
「お前なあ、人生でこれくらい痛い思いするのは、もう二度と無いから、今だけ味わえるこの痛さを、充分、味わっておけ。もう二度と経験できないぞ」
「えーっ、子供を励ますときに、親ってそんなこと言うの!?」
 子供はちょっと不満げというか、あきれてましたね。
「ものすごい痛いんだろ? いま痛みを味わっとけ」って言っちゃいましたね。
 だって、下手な慰めをいったってこっちも辛いしね。いっぱい痛みを味わっとけって。
 子供が「そんな慰め方ってあんのかなあ」って、言ってましたけど、自分の子供にもそれくらい言ってるのでみんなにも同じことを言いたいです。自分でもそう思いますよね。せっかく怪我したなら、痛みを含めてその大変さをとことん舐め尽くすくらいの気持ちでいようよ。
 その子供は、その後、回復して後遺症も残りませんでした。奇跡的といっていいくらいの回復だったかもしれません。そういえば僕も自転車でトラックに衝突して頭蓋骨骨折の大怪我を高校生の時にしています。親子して頭蓋骨骨折をやってしまいましたね。
 この種の怪我で、自分くらいこの痛みを知ってる人間はこの世にいないって言えるくらい、痛みをちゃんと身につけて、帰ってくる。ね。そういう感じでいいんじゃないですかね。痛みから、逃げようとしない。無理に、回復しようとしない。舐め尽くして知り尽くして、回復するならしろと――。
 向こうから、なんだこいつ、痛めつけ甲斐がないなって、痛みが去っていってくれる。そんな感じがしますね。

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